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グループホーム研修~バイスティックの7原則から学ぶ~

 あっという間に3月ですね。私の住んでいる地域は少しずつ暖かくなってきました。春が近づいています。
 先日、同じ地域でお世話になってるグループホームの代表の方から依頼があり、世話人さん向け研修を実施しました。世話人さんとはグループホームに入居する方の日常生活の支援をする方です。サービス提供の管理をするサービス管理責任者(以下、サビ管)さんから、

・どんな風に利用者さんと関わったら良いのかわからない時がある
・どこまで踏み込んだらいいのかわからない
・どこまで話を聞いていいのか悩む 等…

 など、世話人さんが日々の支援の中で対応に悩んでいるので、アドバイスが欲しい、サビ管としてその都度助言はしているけど、改めて支援の基本的な考え方を伝えてほしいとのご依頼でした。
 「支援の基本的な考え方」といってもいろいろありますが、私が支援する中で常に意識している「バイスティックの7原則」についてお話することにしました。

バイスティックの7原則について

 バイスティックの7原則とはアメリカの社会福祉学者のフェリックス・ポール・バイスティックが定義したもので、対人援助の行動規範です。福祉・教育・保育・医療など様々な領域で活用されており、人間関係が円滑になるとも言われています。少し簡単に説明します。

①個別化
 利用者をかけがえのない個人として捉えるという考え方。抱える困難は課題はどれだけ似たようなものがあっても同じ問題は存在しない。目の前にいる人は世界でたった一人の存在。
②意図的な感情表現
 自由に感情を表現できるように意図的に働きかけること。プラスの感情だけでなくマイナスの感情も自由に表現できるように。どのような感情表現も認めていく。
③統制された情緒関与
 支援者が自分の感情をきちんと自覚し、利用者の感情に引きずられないようにする。感情をコントロールして関わる。
④受容
 その人自身のあるがままに受け止める。個性や考えを否定するのではなく
「どうしてそのような思考になるのか」という要因を考える。育った環境や経験によって意見や考え方は異なることを受け入れ、尊重する。
⑤非審判的態度
 一方的に非難しない。利用者の考えや行動に対して善悪をつけるのではなく、あくまでサポート役であることを理解する。
⑥自己決定
 自分のことは自分で決める。自らの行動を決定するのは利用者自身であり、そのプロセスを支援する。
⑦秘密保持
 秘密は守る。個人情報・プライバシーは他者に漏らさない。

世話人さんからの色々な質問

 30分程、座学という形でお話をさせてもらった後、質疑応答の時間を取らせて頂きました。「福祉業界が初めてで学ぶことばかり。バイスティックの7原則は福祉だけでなく人間的な交わりという点でも勉強になった。」「耳がいたかった(笑)」など色々な感想や質問を頂きましたので、いくつか残しておきます。

(世話人さんの質問)
・意図的な感情表現の原則が難しいと思った。いろいろな感情を出される方が多く、感情表現をどこまで受け止めるべきか?利用者さんにも自由があるがスタッフにもあると思う。マイナスなことばかり言われると人なのでイラっとしてしまうこともあるのでどうしたらいいか?
 →スタッフだからといって無理して全てを受け止めないといけないわけではない。当然、支援者にも感情があるし、攻撃的なことを言われ、援助関係が成立しなくなる場合もある。話を聞く時間を決める等、枠組みをつくること利用者に対しても「こういうことを言われたら傷つく」などと説明するのもひとつ。ここは本当に難しいですよね、共感します。
(世話人さんの質問)
・人見知りが激しくで、あまりコミュニケーションをほとんどとらない方が食事が終わって部屋に戻られるので、何か他にできることはないのか?と思ってしまう。
 →「ご本人がどうしたいのか?」が大事。「あまり人と関わりたくない」のであればそのままの対応でいいのでは。ご本人にとってグループホームにて食事をとること、自分が安心できる空間(部屋)があることで満足しており、必要以上の人との関わりを持ちたくないのであればそのご本人の気持ちを尊重するのがいいのではないか。世話人として何かしてあげないとと思うかもしれないが、困った時に話しかけてきた時にしっかりと受け止めて対応していくことで信頼関係の構築になるのでは。
(サビ管さんからの質問)
・感情に呑み込まれてしまい、気付かずにたまっていくものがあっていきなりドンとくることがある。世話人さんも常に一人なので吐きだしの場が必要だと感じている。チャットワークで共有しているが、利用者に関する報告をするもの。何か対応策はあるか?
 →私は今の所属組織でスラックを使っており、必要な連絡以外の自分の気持(ちょっと聞いてください!というようお話)もスラックに流すようにしており、それに対して「お疲れ様」「大変でしたね」等のリアクションをもらえることで気持ちの整理・切り替えになっている。チャットワークがあるのであれば、通常の連絡チャンネルと別に何か気持ちを吐き出せるチャンネルをつくるのはどうか。組織の中で支援者一人一人の感情を大事に取り扱うことはとても大事なことですね。

まずは自己覚知が大事

 今回、グループホームの勉強会に呼んでもらったのは初めてでしたが、世話人の皆さんやサビ管・管理者さんと皆さん、色々と悩みながら支援をされていることが伝わってきました。私は普段、相談支援専門員としてグループホームに繋ぐ立場として、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
対人援助職のプロとして利用者さんと真摯に向き合うことが大事になってきますが、バイスティックの7原則を完璧に守られていないといけないわけではなく、この原則をベースに自分の対応を定期的に振り返り、自己覚知していくことが大事だと思います。今日のような勉強会の中で悩みを共有する中で新たな気づきが生まれたりもしますよね。

また引き続き、一緒に学んでいきたいと思いました。
ありがとうございました。



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