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保健師を辞めてお笑いの世界に入った理由:裏面

私は元自治体保健師の放送作家です。
保健師として働いていた時に、習い事感覚でお笑いの作家の養成所に行ったら、お笑いが好きすぎて抜け出せなくなって脱サラして今に至ります。

保健師を辞めたのは、保健師の仕事が嫌いになったからではないので、せっかくなら自分が辿ってきた過去をナシにするのではなくて、むしろいつか、メディアの経験と医療福祉に携わってきた経験を活かして何かしたいと、そんなことを頭の片隅に置きながら活動してきました。

そして、出会いに恵まれた私はいま、映画制作のために、児童精神医療や福祉に関することを取材しています。

自分の経験を生かすことができて、日々新しい発見もたくさんある、充実した現場です。そんな中で、久しぶりに福祉の現場の人たちと話しをして、気づいてしまったことがありました。

それは私が 、"完全に保健師の仕事が好きだった" けど "辞めた" のではないと言うことです。

正確には、"保健師の仕事は嫌いじゃなかった" けど "職場にいるのが辛かった"
今振り返ると、そんな風に思います。



医療福祉の現場で私たちは、日々、様々な生きづらさを抱える人々と関わっていました。
相談者の困りごとに寄り添うためには、前提として、相手がどんな疾患や特性を持っているのかを見立てて、相手に合ったアプローチ、相手に伝わる伝え方を考えなければいけません。それは適切な関わり方を考えるために必要なことです。

だからみんな、「あの人ってこういう傾向あるよね」「こういうところが難しいよね」と日頃から人の特徴を見立てては、(仕事として)職場で話題に上げたりしていました。私もしていました。

今振り返ると、それが私にとっては、結構苦しい環境を作っていたように思います。

「あの人ってこういう傾向があるよね(困るよね)」
相談者に関して言う先輩の言葉を聞いて、私は静かに「自分にもそんな要素が無いわけではないよな…どう思われてるんだろう」と怯えていました。
「こういうところが難しいよね」
そんな見立てを聞いて、「自分は人のことをそんな風に評価できる人間なのだろうか」と自信を失っていました。

自分が他人を見立てて評価する、それが自分への見立てや評価として戻ってきて、首を絞めていたのです。周りの人がそんなにも人を見立てて評価する習慣のある人たちであることも(仕事だし関係は良好なのだけど)、気が休まらなくて怖くて。



一方、その時代のアフター5はと言えば…
私はお笑いの養成所に通っていました。

作家コースのはずなのに、新喜劇や漫才やコント、エピソードトークなどもやらされていました(笑)

同期の芸人との交流も結構あり、そこには、今までの人生では交わることのなかった、本当に理解不能な人たち(褒めてる)が大量にいました。

私は生まれてこのかたずっと遅刻しがちな人間で、公務員としては割とコンプレックスだったのですが、そこでは遅刻するのは全然私だけではなかったですし、なんなら授業によっては、「言い訳が面白ければOK」みたいなルールでした。

自分というキャラを立たせるために、みんな必死で人と違う、自分の変なところを探していました。(変なところが見つからないとむしろ困る!)時には仲間同士で絡む中で、自分の人と違うところ変なところが指摘されて、それが自分になることもありました。

多くの人にダメダメと思われがちなことであっても、面白くできればむしろいい!!!人のダメダメなところを面白くできることこそが腕!!そして、自分を表現しないこと、やりたいことをやりたいと表現しないことが、信じられないぐらい怒られた!!!「あとで職員室来なさい!」みたいなレベルで!笑

ダメダメなままの自分を面白く演出する方法を学び、自分のやりたいことを素直に表現し続けることが正義の世界。エピソードトークを無茶振りされるなんて日常で、すべるのも日常。でも仲間が拾ってくれたらすべらないし、何でも笑いになるなら、どんな失敗やコンプレックスも平気で話せてしまう。この失敗を晒すことが、むしろ何かのチャンスになるかもしれない。

そんな文化のこの場所が、私はどんどん好きになりました。元々お笑いが大好きだったけど、片足突っ込んでみて、また別の好きな理由が見つかった。



お笑いの世界から抜けられなくなったのには、他にもお笑い素敵すぎエピソードがあるのだけど、決断に至った要素の1つには、そんな2つの世界を同時に経験していた対比もあったのかなと、先日改めて思い返されたのでした。

同じ"人と違うこと" "ダメダメなこと" を見立てて評価しているのに、どうしてこんなにも違ったのか。

それは私がいつか作りたい、"メディアの経験と医療福祉の経験を活かした何か" に繋がるような淡い期待が、いまなんとなく、あるのです。

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