原稿がはかどらなかった日
どうにも、原稿がはかどらない。
フリーランス3年目。
わたしは、仕事で新しい挑戦を始めたところだ。
これまで、SEO記事やセールスレターのライティングを業務として行なっていたが、新しく、ブランディングのためのビジネスプロフィールの原稿制作を始めることにした。
日頃、SNSで、何でもない毎日の中の出来事を切り取り発信している。
それは、私たちは、毎日、大なり小なり、何かしらのドラマを体験している、と思うからだ。
「現実は、小説よりも奇なり」
と言うが、奇妙な出来事でなくとも、心が動かされる情緒的なドラマが日常に転がっている。
ノンフィクションや、ドキュメンタリーには、嘘がない。
だからこそ、心が動かされる。
このドキュメンタリーを、ビジネスプロフィールに取り入れたなら、ただ、実績を並べるだけのプロフィールよりも、ずっとその人のことや、その人の事業に興味を持ってもらえるのではないだろうか。
そして、ドキュメンタリープロフィールの制作に挑戦してみることにした。
しかし、構成も何も、これまでの仕事と違い、正解がわからない。
手探り状態だから、なかなか原稿が進まない。
だから、わたしは、家を出ることにした。
ちょっとそこまで、自転車を飛ばし、近所のショッピングモールに入っている、コーヒーショップのチェーン店に、パソコンを抱えて出かけてみた。
パチパチパチ。
パチパチパチパチ。
キーボードを叩いては、考え、カフェオレをすする。
叩いては、考え、カフェオレをすする、を繰り返す。
だから、マスクを口に戻す暇がない。
書きたいことは、決まっているけれど、どんな表現で、どんな構成で書き進めたらいいのか、いいアイディアが浮かばない。
思ったほど原稿が進まず、そろそろ子供が帰宅する時間になり、タイムリミット。
また、自転車を走らせて、自宅へと向かう。
今日の仙台は、20度を回り、青空が眩しい秋晴れの天気。
ペダルを漕ぎ、顔いっぱいで心地よい空気を感じていると
「あ!」
と閃いた。
そうか、こんな書き出しにして、あの話をその後に挿入すればいいのか。
帰ったら、すぐに書こう。
ウキウキして、帰宅すると、玄関の扉の前にランドセルが置いてあり、先程届いた生協の箱の中から、おやつを物色した形跡があった。
しまった!間に合わなかった!
家の裏を見るが、姿が見えない。
お友達の家だろうか、と思いながら、玄関の鍵を開け家らの中に入ろうとして、置き手紙に気がついた。
まま、かえったよ。
こうえんにいってくるね。
ああ、お友達と約束があって、よかった。
生協でおやつが届いた日で、よかった。
娘が途方に暮れず、自分で考え行動できる子で、よかった。
そしてわたしは、急いで仕事部屋に戻り、先ほど思いついたアイディアを、パチパチパチパチと、勢いよく形にしていった。
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