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魚好きの天国。鹿児島県日置市の暮らしを体験する旅

揚げたてのさつま揚げ、目がキラキラした鮮魚、ぷりぷりの月日貝、スーパーで買える鳥刺し、甘くて焼酎に合う醤油。初めて訪れた鹿児島県の日置は、ローカルなおいしいものであふれていた。

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今回は鹿児島の中でも、鹿児島市の左隣の日置市に丸2日滞在した。

なぜ日置市かというと、全国のローカルテレビ局と地元の人たちが主役になって立ち上げる「セカンドふるさとプロジェクト」で、観光と移住のあいだを探るような旅のプランを作るためだ。セカンドふるさととは、その名の通り住んでいる場所以外に心の拠りどころになるふるさとを持ってみようという提案だ。

観光地をまわる旅ではなく、その土地に住む人々の生活を体験するような旅。私が大好きな旅のかたち。しかも今回は鹿児島のテレビ局・南日本放送さんがコーディネーターとして入ってくださり、地元の方々とお話する機会を作ってくださった。ローカルを旅しながら、地域で生活する人たちに話を聞けるなんて、ラッキーな仕事をいただいたものだ。

そう言えば私の祖母は鹿児島出身だったなと思い出し、電話をしてみると「日置市の下の南さつま市で生まれ育ったよ」と返ってきた。祖母のふるさとに行くことになるとは思いもよらず、ご縁を感じた。

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10月の初旬、よく晴れた日に鹿児島空港に降り立った。隣の席に座っているのは、日用品愛好家の渡辺平日さんと、noteのディレクターの平野くん。今回の旅は二手に分かれていて、食いしん坊の私は日置の食を冒険し地元の人と語らい、平日さん&平野くんチームは日置で街歩き&ローカルスポットの発掘をした。このnoteは旅で味わった「うまいもの編」、旅で出会った「すてきなひと編」の二本立てでお送りする。

いざ日置へ

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空港からバスで1時間走ると中心街の鹿児島中央駅に着いた。そこからローカル線でわさわさとした緑の山道を20分走ると日置の街に到着。鹿児島市内へのアクセスも良いことから、通勤している人も多いそう。山も海も目と鼻の先で、街にも近いとは住みやすいに違いない。

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丸二日間、日置に滞在した中で印象に残っているのは冒頭でも書いたおいしいものの数々だ。歩けば歩いただけ、おいしいものに巡りあった。観光客向けに体裁が整えられた「おいしいもの」ではなく、地元の人が日頃から食べまくっている土着のうまいもんに出会えたのがとてもよかった。

一日2000人が押し寄せる直売所「江口蓬莱館」

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なかでも一番印象に残っているのは、漁協が運営する産直所「江口蓬莱館」。江口漁港で獲れた鮮魚が手頃な価格で手に入るだけでなく、地元の生産者が育てた野菜、お菓子やお土産類も買える。そして鮮魚がその場で味わえる食堂も併設されている。天国かもしれない。

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おいしいもの好きの鹿児島人から愛され、遠くから車を走らせて訪れる人も多い。週末は食堂に行列ができ、来場者は多い日で2000人を超えることもあるのだとか。この立地で一日2000人来るって、かなりすごいことだと思う

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ちなみにこの蓬莱とは、中国の神仙思想で説かれる想像上の仙境で、江口蓬莱館までにたどり着く道の岩壁がそれを想像させることから名付けられたそう。確かに迫力ある岸壁。

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閑話休題。ほら見てください、鮮度保持のために首を折った生のサバまで売ってるんですよ。無類の魚好きとしてはたまらない光景。ポピュラーな魚からまるごとの太刀魚も売っている。

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お宝袋コーナーには、血鯛やアジなどが2kg入って733円。安すぎ……!近所にあったら間違いなく通いまくる。
訪れた日は週に1度のお魚1割引デーで、オープンしてすぐに魚コーナーには大勢の人が。常連らしきおじちゃんが魚を指差して魚売り場のお兄さんに頷き、無言で注文を通していた(たぶん、いつものように捌いてって意味なんだろう)。毎日豊洲市場で買い物してるレベルの鮮度だと思う。なんとうらやましいこと……。

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ここで事前にアポをとっていた地元の漁師のお母さんたちが登場。鯛釣り漁師の奥さん久木留さん(左)と、旦那さんと月日貝を獲っている中間さん(右)にお話を聞くことができた

久木留さん「日常的に食べる魚料理と言えば、刺し身、唐揚げ、煮付けなどですね。秋が旬の秋太郎(バショーカジキ)は、昔はたくさん獲れました。秋太郎が大漁だと、浜は大騒ぎで活気がありましたね。秋太郎は内臓も食べられるんですよ。モツのように何度も茹でこぼして甘辛く煮るととてもおいしいです。心臓は醤油漬けにして焼くんです。秋の運動会に秋太郎のお刺身を持ってくる人もいるほど、地域の人にとっては特別なご馳走です

中間さん「月日貝は春と秋が旬で、生で食べたり、焼いたりして食べます。私たちはこれを食べて育っているから、ホタテよりも親しみがありますね。値段も10分の1くらいだし笑 でも今年はあまり獲れていなくて、規格外のサイズは来年のために海に戻しながら漁をしています」

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鮮やかな貝殻の色がきれいな月日貝は、見た目もさることながら味も抜群にいいらしい。大人気ユーチューバー・気まぐれクックも過去食べたなかで暫定一位のおいしさと豪語するほど。

こんなおいしいお話を聞いておいて、獲れたての海鮮を買わないわけには行きません。今回の宿の店主にお願いしキッチンを貸していただけることになったので、私がこの日の昼食係。
せっかくなので日置らしい魚はないかと探していると「スン」「ネゴ」の文字が目に飛び込む。魚の名前らしくない不思議な名前だ。

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売り場のお兄ちゃんに聞いてみると、スンは鯛のような白身魚で、ネゴはカンパチの小さいものを指すらしい。それらと首折れサバ、秋太郎、月日貝も購入。地元の野菜も一緒に買って帰ってさっそくお昼作りスタート。一年前から私の料理レッスンに参加している平野くんが心強いアシスタントについてくれて、30分で6品が完成した。

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お昼の献立
・ネゴ、スン、首折れサバ、秋太郎のお刺身
・きゅうりとしらすの和え物
・さつま揚げとなすの甘辛煮
・あら汁
・月日貝のソテー
・日置産の豆腐で作ったお豆腐の冷奴

お刺身は身がぷりっぷりで、海の街に来たなぁと思う。月日貝は、貝柱に噛みごたえがあり味わい深い。秋太郎はトロのようで、ごちそうに相応しい味だった。午後の予定もあるので我慢したが、本当はビールが飲みたかった。

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ビールと言えば、「揚げたてのつけ揚げ」も忘れられない。地元の方おすすめの「松元屋」では熱々のつけ揚げが食べられる。ふわっと柔らかい食感を想像していたら、予想以上に弾力がある噛みごたえ。口に入れた瞬間に広がる香ばしさ。噛めば噛むほど旨味が止まらない。聞けば、練り物のベースにはアジと豆腐しか使っていないというから驚き。

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江口蓬莱館の入り口にもつけ揚げの屋台が出ている。一番人気というサツマイモの千切り入りのつけ揚げ。甘塩っぱい味がたまらん。

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ドライブして、海を眺めて、温泉に入って、新鮮なお刺身と揚げたてのつけ揚げを食卓に並べて乾杯する。高級割烹やいい宿に行くのはもっと先でいい。今は、自分の住んでいる場所でないところで、暮らしてみるように滞在したい。慌ただしい日常から少し離れて、派手なことはせずのんびり過ごしたい。日置はまず食という観点から、それにふさわしい場所だと思った

後編では旅の入り口になってくれる日置の「ひと」のお話。お楽しみに!

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このnoteは、「セカンドふるさとプロジェクト」の体験レポートとして、主催者の依頼により執筆しました。 #PR

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