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一番冷える夜明け前

 毛布をかけていたにも関わらず、わたしは肌寒さで目覚めた。薄暗い機内、窓に目をやるとうっすらとガラスに霜が降りている。その霜の先には、今まさに深い群青色の闇の世界を黄金色の日光が切り開こうとしていた。
 新卒で就職し、それまで約7年間勤めた職場を辞める決意をしたのが3ヶ月前。それでも日ごとに決心が揺らいでしまったわたしは、退路を断つために思い切ってアフリカ行きの航空券を予約した。もうこれで後戻りはできないぞ、いよいよだぞ——。そんな思いで買った航空券の飛行機に、今、わたしは乗っている。本当に後戻りできないところまで来てしまったのだ。
 窓の外は美しいグラデーションが世界を包んでいた。暗闇の世界をゆっくりと光が支配していく。耳をすませば、何かの協奏曲が聞こえてきそうだった。昧爽は一番冷え込むという。自分の人生の新たなる幕開けを、わたしは旅のはじまり、この機内で迎えた気がした。

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