言った本人は覚えてないやつ

昨日の「爪痕を残す」話。

実はこの、「爪痕を残す」フレーズは私が思いついたのではなく、昔の同僚が言っていたことである。この元同僚とは同僚でなくなってから何かの節目で必ず話をする仲になったという不思議な関係の一人で、母の話や転職の話ではかなり相談した相手である。

で、彼女と話していたとき、当時の彼女の赴任先に後任として私も知っている人が着任してしばらくしたのち、私がこの後任の人ちょっとお気楽な感じで苦手という話をしたところ、

○○さん(後任の人)は事業に対するコミットメントが薄い。最低限の事業管理はしているかもしれないけど、工夫とか改善とかそういうのない。私だったら自分が事業をやるときは何かしら爪痕を残してやりたいと思っている

と言われた。びっくりするほど的確な表現かつ、私も同じ考えだと思った。そしてすぐにこのフレーズは心のメモ帳にメモされた。はい、要するに私の昨日の発言は彼女のフレーズ丸パクリなのです(笑)

面白いのが、また別の機会にこの後任の人の話になったとき、私が

前に「爪痕残してやりたい」って言ってたじゃない?あれ私めっちゃ気に入って使わせてもらってるんだよね~

と言ったら、

え、そんなこと言ったっけ?覚えてない(笑)でも確かにしっくりするいい表現だね~

と。そうか、そんなもんなのか。でもこれって結構あるあるだと思う。

自分が何気なくなんとなく言った言葉が誰かの心にものすごく刺さり、大事にしてもらっていること。が、私は覚えてない。それこそまさに「そんなこと言ったっけ?」状態になる。でも相手は、私がどこでどんな場面でどんな表情でこのフレーズを言ったかをものすごく鮮明に覚えている。私はその場しか生きていないタイプなのだが、そんな私の言葉がたまに人に刺さっているらしい。

誰かが言った何気ない一言が自分にとって重要な意味を持ってるけど、言った本人は覚えてない。言霊的な考え方で言うなら、私が放った言霊を受け取った相手がいるのだ。そして私も誰かから言霊を受け取っている。

以前、職場にいたすごく大人しくて挙動不審なインターンの男の子もこんなことを言っていた。彼とはよくお昼ごはんが隣の席になることがあり、なんとなく話しかけて、彼の不思議な思考を紐解いていた。彼は大学を卒業してから就職せずにインターンを期間が終了後も続けていて、でも何をしたらよいか分からず、どうしたらよいかもわからずにその状態でいることに悩んでいたらしい(悩んでるようにはあまり見えなかったけど)。で、例のごとくお昼に隣の席でご飯を食べてるとき、たまたま私が何かを言ったらしい。そしてそのフレーズに感銘を受けて彼は頑張れそうと思ったそう。何か月後、私が長期出張から帰ってきたら見事に就職が決まりすでにインターンを終えていた。

この話を別の同僚から聞かされ、ビックリした。え、あの子に私そんなこと言ったっけ?しかもそれがきっかけで巣立って行ったの?と。彼とは連絡先を交換したりしてないから今どこで何をしてるのか知らないけど、でも今も覚えていてくれたら嬉しいなと思う。少なくともそのエピソードを聞いたから私は彼のことをしっかり覚えている。感謝している。

用意した言葉じゃない方が相手に届くのかも。きれいに洗練されたものではなく、何も考えないで自然と口から出てきた言葉の方が、ストレートにまっすぐに相手に届くのかもと思った。その場限りの言葉。でも確実に相手に届くことがある。

我ながら良いこと書いた(自画自賛)。思いもよらぬところで自分が、自分の言葉が誰かの役に立ってるって、今それを実感したら泣けてきた。ウルウルしながら、最後パソコンをカタカタ叩いてます。