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島ひるごはん vol.9「瀬戸内国際芸術祭アーティスト フリオ・ゴヤさんの作品制作に密着」

取材中、撮影時のみマスクを外し飲食時には黙食を行って頂きました。

今回の島びとは、彫刻アーティストブリオ・ゴヤさんです。

前回2019年の瀬戸内国際芸術祭の作品のツリーハウス・sd11『自然の目「大地から」』は廃材を利用して制作されました。
潮風の強い三都半島で防風林として機能してきたイブキの大木を活かしたこの作品は今期も見学可能。雄大な景色と豊かな自然を眺望でき、いつ訪れても落ち着ける私のお気に入りの場所の一つです。

sd11自然の目「大地から」フリオ・ゴヤ作

瀬戸内国際芸術祭2022でもアーティストとして選出されたフリオさん。
作品制作の為1月末から小豆島に渡られた際には事前にPCR検査で陰性を確認されてから来島されました。

今回も屋外作品の為、作業も基本は屋外です。
温暖なイメージはあるものの、冬はやはり寒い小豆島。
特にフリオさんの作品が置かれる小豆島の三都半島の冬は冷たい風が強く吹き、日陰では凍えそうになるほど。
フリオさんの制作現場は南からの日差しが木々に遮られ、北風に晒される冬に作業するにはとても厳しい場所でした。
それでも、芸術祭開催期間となる春・夏・秋に作品を楽しみに訪れてくれる人々にほっとひと息付ける憩いの場を、というフリオさんの思いから日差しが強くなる季節には心地よい日陰となるこの場所に作品設置することになったのです。

寒空の下、サポーターと作品制作に取り組みゴヤさん

フリオさんのアトリエ兼住居は同じ三都半島にあります。
そこから車で数分の制作現場に朝8時には到着し、昼休憩を挟んで5時まで作業を行う、という規則正しいルーティーン。これは瀬戸内国際芸術祭作品制作時だけではなく、沖縄でも日曜日以外は守られているとのこと。
手足の指がしもやけになりながらも、黙々を作業を続けられる姿を訪問の旅に見ていましたが、短時間でも凍えそうになるほどでした。

鋭い感性や優れた発想力だけでなく、根気強さも持ち合わさなければ長年アーティストとして活動を続けるのは難しいのかもしれません。

お昼休憩も決まって12時からお住まいに戻ってとられているとのこと。
ある日、私もお邪魔させて頂くことが出来ました。

お住まいに隣接するアトリエに立ち寄られ、私には使い方が想像出来ない道具や部品の中から気になる道具の調子を確認されていました。

TANGOの文字が彫られたトンネルの壁。フリオさんの故郷アルゼンチンはタンゴ発祥の地。

遊び心のあるドット・アートが施されたトンネルを抜けると、いよいよフリオさんのご自宅です。

毎日欠かさないレモンを切るゴヤさん

余計なものはなく広々とした雰囲気の玄関から廊下を通り、台所にお邪魔しました。
いつも、前日の晩に多めに作った夕ご飯の残りに少し手を加えて手早く済ませるというフリオさんのこの日のお昼ごはんはこちら。

主食 ごはん

主菜 味の染みた肉じゃが(砂糖少なめ)。隠れてますが温め直しながら卵を一つ投入されていました。

副菜 ツナ入りにんじんしりしり。
にんじんしりしりは沖縄の家庭料理。沖縄に移住して30年余りのフリオさんらしい料理と言えるかもしれません。
この取材後から私のお気に入りになりました!

そしてちょっと意外だったのが、レモン白湯。
レモンの皮も召し上がるほどレモン好きなフリオさん。
実はレモン白湯は健康維持に加え美容効果も期待されると知り、これも私も真似して飲むようになりました。

「(食べてるところを)撮影されながらだと食べずらいな」と仰りながらも、撮影を許してくださる優しいフリオさん。

午後からも続く体力消耗間違いなしの屋外からの作業に備えて、ごはんもしっかりおかわりされていました!

食べ終わったらすぐに片付けをされるフリオさん。
使用する食器類は、空家だったこの家に残されていたものも活用されているそう。

食後のおやつは、ミネラルたっぷりの沖縄産黒糖。私も頂きました。

食事が終わると、やっといつもの笑顔を見せてくれたフリオさん。
正面から撮影されながら食事するのは確かに心地いいものではないですよね。
失礼しました。

この撮影から約3ヶ月。
新たに感染対策やデジタルパスポートが加わった瀬戸内国際芸術祭2022も4月14日からスタートしています。
撮影当時は作品や作品設置場所についての情報公開が制限されていたこともあり今回の記事の公開も遅れてしまいましたが、
sd48フリオ・ゴヤ作「舟物語」はすでに訪れる人々の憩いの場所となっています。

漁業者の高齢化などで使われなくなってしまった舟を譲り受け、廃材の丸太や流木も利用しアートとして蘇えらせたフリオさんの「舟物語」。

舟に元々備え付けれた5つの生簀(いけす)部分にはフリオさんの遊び心や地元の漁師達への思いが詰まった装飾が施されており、訪れる人々の目や心を楽しませてくれます。
この生簀の一つに、私が撮影した写真も使って頂いているのは私のちょっとした自慢です。

海での役割を終え、陸上でフリオさんというアーティストとの出会いの末に島内外の人々の心と身体の憩いの場所として生まれ変わった「舟物語」には翼が。
もしや次は空を狙っているのでしょうか?

これからも多くの人々にとって、のんびり休憩しながらフリオワールドに包まれて様々な空想をも楽しめる作品として愛されることでしょう。

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