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①2学期がはじまる

子どもが生まれる前に買った三行日記は、初日こそ書いたものの2日目を書こうとしたとき、息子は2歳になっていた。日記というものが苦手である。ところが、私が共同代表を務めているユブネが5周年を迎えるにあたり、3ヶ月間は日記を記さなければならない。どうしたものか。困ったぞ。

何か書く対象に制約や条件があったら書きやすいのだが、何でもいい、となると苦慮する。ならば自ら制約を設ければいい。5周年と聞けば「区切り」の印象が強いが、むしろ「始まり」と捉えるほうが前向きだ。何を隠そうユブネは設立から10年後の2028年に解散することを決めている。登記の時に10年は好きなことやって解散だ!と、共同経営者の山森彩さんと決めた。え?もうあと5年じゃないか。息子は5歳になっている。ベビーカーに乗って法務局に向かい、私の登記手続きを見守った0歳児は今日もYouTubeに夢中だ。ぐずぐずしている場合じゃない。早速ユブネの後半5年を始めよう。

昨年から県立御影高等学校の特色教育カリキュラム専門員、通称コーディネーターを担当している。毎週水曜の午後は職員室で勤務だ。職員室に席があるのだ。内線の呼び出しがあると「ヒガシ先生」と呼ばれることまである。しかも生徒が用事に来る扉の真ん前にあるため「○○先生いらっしゃいますか」と聞かれる度に、非常勤の私は電車で席をゆずらない若者のように顔を伏せるしかない。

今日は私の2学期がはじまる。特色教育カリキュラム専門員、通称コーディネーターとは兵庫県の会計年度任用職員で非常勤。水曜日以外はリモートワークで対応している。文科省の普通科改革事業のモデル校に選ばれている18校のうちの1校が御影高等学校である。令和6年度には総合人文コースを改め文理探究科が誕生。探究学習に注力したカリキュラムデザインを特徴としており、ソサエティ5.0に対応できる主体的で課題解決能力の高い人材を育成する。

私の担当は「CREATION」という特別講座。神戸市内の企業や事業者と連携したアクティブラーニング、ワークショップ、フィールドワークを採り入れた講座をコーディネーションしている。

例えば、廃屋再生集落に出向いてコンクリートを打ったり、酒蔵の課題を副社長から聞きデータリサーチしたり、丸太を板に製材したり、炭火焙煎珈琲の焙煎士に会ったり、校舎に建築物を付け加えたりする講座だ。毎回講師の方には無茶振りに応えて頂いていて感謝してもしきれない。

職員室で黙々とその「CREATION」の報告書を作った。佐賀の高校が視察に来ていた。佐賀のお菓子を頂いたが、銘柄が思い出せない。テニス部がボールを打つ音が聞こえてくる。生徒が進路相談に来ている。私の2学期がはじまる。