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2021東京オリンピック・パラリンピック、開催の道を考える

2020年7月以降、オリンピック、パラリンピックに関わるさまざまな方のお話をうかがい、イベントや試合などを見てきました。そうする中で、大会が開催されれば、選手たちが世界に発するメッセージのインパクトは衝撃的に強いだろうと思うようになりました。

それは、次のような要因からです。

1)選手たちが、大会の舞台で競技するまでに非常に多くの苦労をしているので、試合への意気込みが違う。通常の大会とは比較にならないほどの気概が伝わる
2)観客数がおそらく限られる中で、今までの大会とは趣きが異なるものとなる。それがオリンピック・パラリンピック本来の素晴らしさを浮き彫りにする
3)見る側の思いが、メダル争いから一歩引き離される。勝敗よりも選手たちが競う姿そのものを見つめる大会となる

この記事は、東京オリンピック・パラリンピックの開催について考えていくものです。
→弊社サイトの関連記事「コロナ禍のオリパラを考える」もぜひお読みください。


間近に迫る東京オリンピック・パラリンピック


2020年春に延期された東京オリンピック・パラリンピックが、どんどん間近に迫ってきています。
オリンピックの聖火リレーは2021年3月25日にスタートする予定です。すでに2020年12月半ばに残り100日を切りました。
2021年1月1日になると、オリンピック開幕までは203日。
もうすぐそこに開幕が迫っています。

02目前まで迫っているオリンピック

コロナ禍での開催に否定的な意見も多いです。

日本国内の感染者数も冬場に入って増加傾向、イギリスで発見された変異種は感染力が今までよりも強いと言われています。ヨーロッパではロックダウンしている国もあります。

もうこの状況では、オリンピック・パラリンピックを開催することは不可能、打てる手はない、、、ということなのでしょうか。
なんとかして開催することはできないものでしょうか?


人は孤立しては生きられない

2020年春の緊急事態宣言の後、久しぶりに自宅以外の場所でランチを食べたとき、ものすごく感動しました。いつもは、当たり前のように食べていたランチですが、誰かが作ってくれた出来立てのご飯を、いつもと違う場所で食べることで、こんなに心満たされるものか、と驚きました。

同じような経験は、服を買いに行ったお店でも感じました。

Jリーグの試合を見に行き、選手たちが蹴るボールの美しい軌跡にも感動しました。

感染予防は大切です。そのための手立ては十分に尽くす必要がありますが、同時に、人は日々の生活の中で、さまざまな人と関わりを持ち、その中で様々なエネルギーを受け取って生きている。コロナ禍によって、そのことにも改めて気づかされました。

学校のさまざまな行事、職場での日々の雑談、お店でのやりとり、地域でのイベント、、、等々。2020年は失われてしまったことが多いです。その代償は大きなものでした。

学校生活の一生に一度だけの行事を体験する機会が失われ、職場で普通に伝えられてきたノウハウが失われ、たくさんのお店が静かに閉店していき、地域の行事がないままに季節感も失われました。

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新型コロナの感染を完全に防ごうとするならば、人と人は出会わないほうがよい。でも、それによって失われてしまうことも大きすぎる。

そう多くの人が思ったからこそ、2020年の11月以降、感染者の拡大が言われたときも、街に人出は多く、学校でも授業が行われ、リモートワークも使いつつ出勤も併用していく職場が多かったのではないかと思います。

オリンピック・パラリンピックが開催された時に、選手や関係者の中で感染者がゼロで終わることはないと思います。外国人選手がウイルスを運んできたり、日本で感染することもあり得るでしょう。でも、そういうリスクがあるから中止でよいのでしょうか。できる限りリスクを押さえて開催することはできないのでしょうか。


選手たちの発するエネルギー

オリンピックもパラリンピックも、世界中の人に感動や夢を与える特別な大会。
そして、そこに臨む選手たちは、ものすごいエネルギーを費やし、多大な犠牲を払って準備をしています。大会に出場し、競う時の思いの強さが大きいからこそ、特別な大会になるのです。

オリンピック・パラリンピックが開催される時にどんな運営をすることになるのか? それを考えるための取材を続けています。その中で、11月8日に東京・代々木第一体育館で行われた体操の国際大会を見る機会がありました。下の写真はチケット確認の前の検温ポイントです。

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この大会には、アメリカ、中国、ロシアから、各国で隔離生活を行って準備をしてきた選手たちが集まりました。オリンピック・パラリンピック開催に向けての試金石となる、非常に重要な大会でした。

競技会自体は、選手たちを2チームに分けて合計点を競う対抗戦。国別で競うわけでもなく、競技ごとの1位を選出するわけでもありませんでした。いわば、世界レベルの選手たちを振り分けて運動会の紅白対抗戦をするようなものです。
でも、この大会の演技がそれぞれ、非常に感動的なものでした。

大会前からの隔離生活など、特別な準備をしてきた選手たちの、競技にかける思いがひしひしと伝わってきたのです。
とくに内村航平選手の鉄棒、中国の選手の吊り輪、アメリカの選手のあん馬などは、会場の代々木第一体育館の空気を一変させるような気迫に満ちていて、驚かされました。
それを見守る観客も、選手たちの思いを受け止めて、選手の国籍に関係なく拍手を送る、会場はそういう特別な雰囲気に満ちていました。

いろいろな国から人が集まり、一つの競技を共に行う。そのこと自体が素晴らしいのでしょう。そう強く思わされました。
メダルとか順位・勝敗とかとは全然違う部分で、スポーツの良さを感じる、すごくよい大会でした。


2021年限定の、今までにない大会

東京オリンピック・パラリンピックが開催された時に、各国から集った選手たち競技する姿は、世界に非常に大きなメッセージを発することになるはずです。
それは、私が目撃した体操の国際大会よりも、さらに大きなものになることでしょう。
そしてそのメッセージは、多くの人たちに感動や勇気を与えるものになり、救われる人もたくさんいるはずです。

これまでの大会と比べると、競技のレベルは落ちるかもしれません。
ですが、もともとオリンピック・パラリンピックは、各国から集まって競技を行うことに大きな意義があるはず。
むしろ、大会の本質が浮かび上がるものになるのではないか、と思います。
たとえ、観客の数が制限されていたとしても、外国人観客の入国は不可となったとしても、さらに言えば無観客で行われたとしても、いろいろな国から集まった選手たちが競う姿は、これまでにないようなインパクトを与えるはずです。

実際に、観客席に広く間隔をとった会場でも素晴らしい熱戦を見る機会もありました。

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東京オリンピック・パラリンピックが中止になった場合には、2022年2月に開幕する冬季北京オリンピック・パラリンピックが待っています。中国は国を挙げて大会開催を実現することでしょう。新型コロナウイルスが始まった国が、それを封じ込めたことを内外にアピールするまたとない機会となるからです。
いつかどこかの国が、コロナを克服するオリンピック・パラリンピックを実現して、歴史に名を刻むのです。
そして、その大会はこれまで書いてきたような理由で、非常に感銘を与える歴史的なものになるはずです。


日本の現場と、世界の選手の準備

感染者が増えている、だからオリンピック・パラリンピックは中止! 
そういう意見が多いのもわかります。

ですが、2020年7月以降日本の現場にいる方たちや、さまざまな現場を訪ねる中で、感染症対策が様々に検討され、対策が工夫されつづけていることを感じてきました。自治体担当者、アテンド担当者、会場運営者、交通機関等々、様々な方たちによってです。
会場ごとに、より伝わりやすく安全で安心な運営ができるように考えつづけられているのです。

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そして現在も、世界中で準備している選手たちがいます。
鉄棒に種目を絞ると言われている体操の内村航平選手、男子柔道66kg級で死闘を制して代表に内定した安倍一二三選手、東京オリンピックで引退を表明しているボルダリングの野口啓代選手、リオ五輪に出場できなかったものの見事に復権を果たしたバドミントンの桃田賢斗選手、、、。

有名なところでは、こういった選手たちが注目されていますが、取材途中で知った中では、こんな選手たちがいます。

◎ブータンの女子アーチェリー:カルマ選手
人口78万人のブータンでは伝統的に弓矢が盛んです。ブータンのアーチェリーの選手はこれまでも、単に成績だけではなく出場権を得る「ワイルドカード」の扱いで五輪出場を果たしてきましたが、今回初めて純粋に成績でオリンピック出場を決めたのが女子のカルマ選手。大会が開催されれば、箱根で事前キャンプの予定です。

◎超絶の世界:ブラインドサッカー
ブラインドサッカーを見たことがありますか? 視界がない中で行うサッカーはテクニックもすごいですが、体のぶつかり合いが激しい! とんでもなくバチバチぶつかって衝撃的です。サッカーを知っている人にこそ見てほしいです。

◎リトアニアのゴールボール代表
事前キャンプ地となっている平塚市でその存在を知りましたが、2016年リオパラリンピックでは優勝しています。Facebookを見ると、現在も高いテンションを保って練習をしつづけていることがわかります。

もちろん、ここで紹介したのはごくごく、ほんの一部で、世界中のアスリートが東京を目指して準備をしているのです。


どんな準備が進んでいるのか? 多くの人が知るべき

この記事を読んでくださった皆さん、「IF」ってご存知ですか?
英語の「もし?」ではないですよ。エクセル関数でもありません。
「IF」は国際競技連盟のこと。サッカーの国際連盟FIFAや、国際水泳連盟FINAのような団体です。

今、オリンピック・パラリンピックの開催については、いろんな資料が公開されていて、それを読めばコロナ対策がどのように検討されているかよくわかります。
しかし、その情報がなかなか行き届いていません。マスコミも細かくは報じていません。

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このnoteの記事で、「IF」のような言葉とその意味を書いていってみようと思います。その中で少しでもオリンピック・パラリンピックのコロナ対策について触れられればと思います。

ちなみに「IF」は、競技ごとの代表決定やルールに対する権限があるので、選手のPCR検査を試合前のいつ行うか? といったことの決定には、「IF」との調整が不可欠です。
オリンピック・パラリンピックを安全・安心に開催するにあたって、各国のオリンピック委員会、選手団、事前キャンプを行う自治体、組織委員会、日本政府、「IF」の連携は欠かせません。

オリンピックの開催について、考えるためには、そういった情報をより多くの人が知るべきだと思います。ぜひ、今後の記事にご注目ください。

弊社・情報センター出版局について

弊社は『旅の指さし会話帳』シリーズを刊行しつづけてきた出版社です。この会話帳シリーズは、日本語と外国語を指さすだけで会話できるという旅行会話帳。1998年のシリーズ立ち上げ以来、刊行のジャンルは、旅に止まらず、食、生活、恋愛、ビジネスなどに広がり、NintendoDSのソフトやスマホアプリも販売してきました。
現在は、企業や自治体でご利用いただく外国人対応用の会話ツールも制作しています。この記事は、社内の担当者Hが執筆しています。
弊社のサイト内で、オリンピック・パラリンピックの実務に当たられる方向けの記事も掲載しております。ぜひこちらもご覧ください。
→コロナ禍のオリパラを考える

弊社では2020年春に、多くの協力者のご厚意を得て新型コロナウイルス対応の多言語会話ツールを作成し、無償で公開しています。

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→新型コロナウィルス対応 指さし会話
Point-and-Speak YUBISASHI for COVID-19


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