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古い友人たちについての分類的なメモ
思い出
人間と言うのはなんて罪深いのだろうと、真夏のアスファルトで干からびているミミズの死体群を見るたびに思う(今は真冬だが)。人間がこんな道を作らなければ、一体何匹のミミズが、こんなに苦しそうな死に方で死なずに済んだんだろう。他にどんな死に方をしているのかは知らないが。
ミミズとダンゴムシは幼い頃からの友人だ。別に人間の友達がいなかったわけではないが、幼稚園の登園時、ミミズかダンゴムシを捕まえてそれをお友達とすることで母と離れる気持ちを作るということをしていた時期があった。
他にもカタツムリやナメクジにもよく遊んでもらったと思う。カタツムリは家で飼っていた時期もある。模様のないプレーンな「かったん」と、後から来た筋入りの「しまちき」だ(多分しまきちだったが私が言えなくてしまちきになったのだと思われる)。この二匹は卵も産んで、大量の小さいカタツムリが産まれた。すべて「かったんこ」と呼ばれた。すぐに数は減っていってしまい、親も弱ってきたところで外に放した。ナメクジは幼馴染の家の玄関で塩をかけてみたこともある。芯みたいなのが残った。ごめんね。
広義の「虫」たちは、大きくなってから見てみれば、狭義の虫ではない生き物ばかりだった。いや、芋虫育てたりはしたけどね。でも自分の心のより根本的なところで影響を持っているのは彼らなのだ。このノートにはミミズとダンゴムシとナメクジ/カタツムリについての、分類的なところを中心としたメモを残しておきたい。(個人が自分のためにまとめたただのメモです。何かの参考にしないでください。責任は一切負いません)
みみず
環形動物門(Annelida)の中の貧毛類(Oligochaeta)に分類される(細かい分子系統解析の結果などは、大まかな把握や理解の妨げになることが多いので、むしろ古典的な分類をあえて使った方がいい場合もあると思っている)。環形動物の仲間はざっくり3つに分けられる。ゴカイの仲間(多毛類:Polychaeta)、ミミズの仲間(貧毛類:Oligochaeta)、ヒルの仲間(ヒル類:Hirudinea)(ラテン語でもヒルなんだ。偶然の一致らしい)である。貧毛類とヒル類をあわせた環帯類(Clitellata)という分類が最近は使われることが多いっぽい?どの仲間も体は蛆虫様(左右対称でどちらかというと細長い)をしていて、環状の体節が連なった形の体の作りをしている。ミミズが含まれる貧毛類はこの中で疣足が無く、剛毛が体から直接生えるのが特徴(剛毛は普通のミミズにもある)。
環形動物門
┌ヒル類(ヒルとか):
┌─┤ 体の両端の体節が大きく変形していて、一般に剛毛がない
─┤ └貧毛類(ミミズとか):
│ 疣足がなく、剛毛は体から直接生える
└──多毛類(ゴカイとか):
体節ごとに疣足がついていて、疣足から剛毛が生える
雌雄同体で、両方の生殖器を同時に使って交接する。知られているのは約3000種。陸産種・淡水産種だけでなく海水産種もある(日本に何種生息しているのかはよくわからなかった)。陸産種は基本的に土壌中を住処として、土を食べそのうちの有機物を消化して栄養とする(海産種には「体表から物質を摂取し、体内共生細菌の活動によって栄養を得る(1)」のもいるらしい)。日本で最もなじみ深いミミズの仲間は陸生で大型のフトミミズ科(Megascolecidae)に属するものらしい。見た限りではヒトツモンミミズ(Pheretima hilgndorfi)が代表的な種として挙げられていたが、多分ミミズと言えばこれ!みたいなのがあまりない(いろんな種がいろんなところで見られたり見分けが難しい?)ために単に「ミミズ」と呼ばれることが多いのではないかと思った。ゲノムの解析が進んでいるのはどちらかというとツリミミズ科(Lumbricidae)のミミズの方みたいに見える。こちらは堆肥作りや再生能力等の方面でよく利用されているぽい。
ヒトツモンミミズ(Pheretima hilgndorfi)
シマミミズ(Eisenia fetida)
ゲノムとかどれくらい調べられてんのかなと思ってNCBI見に行ったけど環帯類の中に多毛類のやつがいたりしてなんかよくわかんなくなったので書くのはやめておく。
だんごむし
節足動物門(Arthropoda)甲殻亜門(Crustacea)軟甲綱(Malacostaraca)等脚目(Isopoda)に分類される。節足動物の仲間はざっくり4つに分けられる。クモ、サソリ、ダニを含む仲間(鋏角類:Chelicerata)、エビ、ダンゴムシ、ミジンコ、カブトガニを含む仲間(甲殻類:Crustacea)、昆虫の仲間(六脚類:Hexapoda)、ムカデやヤスデを含む仲間(多足類:Myriapoda)である。軟甲綱はエビ、カニの仲間(十脚目:Decapoda)が代表的だが、その他の聞いたこともないようなエビっぽい生き物を含む分類群がたくさんあり、その中で等脚目(Isopoda)はフクロエビ上目(Peracarida)で最も種が多く、多様な生態を持つ生物を含んだ分類群となっている。陸上に進出した甲殻類の多くがここに含まれる。
節足動物門(節足動物で単系統群を形成する)
┌鋏角亜門 ├…… ┌コノハエビ亜綱 ┌厚エビ上目
─┤ ┌多足亜門 ├軟甲綱 ─┼真軟甲亜綱 ───┼本エビ上目
└─┤ ┌甲殻亜門 ─┼鰓脚綱 └トゲエビ亜綱 └フクロエビ上目 ─┐
└─┤ └…… ……┐ │
└六脚亜門(甲殻類から派生した説が有力らしい) 等脚目 ┼─┘
十脚目 ┤
…… ┘
ダンゴムシは等脚目(Isopoda)ワラジムシ亜目(Oniscidea)オカダンゴムシ科(Armadillidiidae)に含まれる。人家周辺でみられるダンゴムシはオカダンゴムシ(Armadillidium vulgare)で、他にも種類はあるっぽいが、ちょっとネットで調べただけだとオカダンゴムシ科の他のダンゴムシについての情報があまり見つからなかった。
オカダンゴムシ(Armadillidium vulgare)
オカダンゴムシは雌雄異体で、メスが体内の育房で卵(100個くらい)を育てる。孵化した幼虫は育房を食い破って出てくるらしい。成虫になるまで約一年で寿命は三年くらいらしい。土壌に生息する。雑食性で植物(遺体に限らない)も動物遺体も食べる。カルシウム補給のためコンクリートを食べることが知られるが、紙もいけるらしい。また、性転換が起こることが知られている。生きた動物もお腹が空けば食べるのだろうか。あと一匹が何度も卵を産めるのかどうかはよくわからなかった。
かたつむり/なめくじ
軟体動物門(Mollusca)腹足綱(Gastropoda)有肺類(Pulmonata)に分類される。軟体動物門の仲間は体節や骨格を持たず、石灰質の貝殻を持つものが多く、体は頭部・内臓塊、筋肉質の足からなる。二枚貝綱(Bivalvia)やツノガイの仲間(屈足綱:Scaphopoda)等に並んで巻貝(カタツムリ)やウミウシの仲間(腹足綱:Gastropoda)、イカやタコの仲間(頭足綱:Cephalopoda)等多様な群を含む。カタツムリを含む腹足綱の中での分類は、貝殻重視だった旧分類の見直しがまだ進行中らしいので触れない。Wikipediaの英語版の記事ではPulmonataを旧分類として、2010年にJörgerらが提唱したPanpulmonataが採用されているみたいで、NCBIでもPulmonataだとヒットしない。
├……
├二枚貝綱
軟体動物門 ─┼腹足綱(巻貝とか) ──┼…… ├……
├腕足綱 └…… ─┼……
├…… └有肺類(陸生の巻貝の仲間)
軟体動物の一般的な特徴として、外套膜と呼ばれる膜(石灰質もここから分泌する。イカの体を覆う食べるところやホタテのヒモ)が内臓塊か背面全体を覆う。外套膜と身体の間の隙間は外套腔と呼ばれ、腎臓や生殖器官の開口部があり、さらに鰓が配置されている。カタツムリが含まれる有肺類(Pulmonata)では外套腔内に通常ある器官が退化していて、外套腔が肺になる。
カタツムリは有肺類(Pulmonata)のうち丸い殻のあるものの総称で、殻のないものをナメクジと総称する。基本的には雌雄同体で他家受精だが自家受精も可能らしい。移動能力が低いので種分化しやすく、各地にいろんな種がいるが、日本で広く見られるというカタツムリは数種しかないようだ。ナメクジは外来種のチャコウラナメクジが一番目につきやすいが、在来種もちゃんといるらしい。でもあまり研究がすすんでいないようだ((11)←面白い記事だった )。
ウスカワマイマイ(Acusta sieboldtiana)
オナジマイマイ(Bradybaena similaris)(外来種)
チャコウラナメクジ(Ambigolimax valentianus)(侵略的外来種)
くたびれてきた。カタツムリに関してもうちょっと何か書いてある本があればよかったのだが。もういいや。
……いかがでしたか?何かのお役に立てたら幸いです!
主に参考にした記事や書籍
1) 白山義久編「バイオディバーシティ・シリーズ5 無脊椎動物の多様性と系統」(2008年第七版)裳華房
2) Wikipediaの「環形動物門」~「ヒトツモンミミズ」周辺の項( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%9F%E3%82%BA )
3) NCBIのTaxonomy Browser ( https://www.ncbi.nlm.nih.gov/datasets/taxonomy/tree/?taxon=506672 )
4) 日本産ミミズ大図鑑( https://japanese-mimizu.jimdofree.com/)
5) Arumugaperumal, Arun, et al. "Draft Genome Sequence of the Earthworm Eudrilus eugeniae." Current Genomics 23.2 (2022): 118.
6) 石川良輔編「バイオディバーシティ・シリーズ6 節足動物の多様性と系統」裳華房
7) Wikipediaの「節足動物」~「オカダンゴムシ」周辺の項
8) ダスキンの「ダンゴムシの一生(卵から成虫になるまで)と、予防・駆除をする方法」( https://www.duskin.jp/terminix/column/detail/00039/ )
9) Wikipediaの「軟体動物門」~「カタツムリ」周辺の項
10) 団まりな著「動物の系統と個体発生」東京大学出版会
11) 珍獣図鑑(2):身近なのに謎だらけ! ナメクジの研究は不人気ゆえに面白い!? ( https://hotozero.com/knowledge/animals_002/ )
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