水曜日の湯葉 #11
古いメモ帳を漁っていたらこんな文章が出てきた。何かの小説で使わなかった原稿の断片だろうから、ここで供養しておこう。
フレロビウム298はいわゆる安定の島に属する人工元素で、その質量数にもかかわらず半減期5億年ときわめて高い安定性を示すが、生成に膨大なエネルギーを必要とするため大量生産は困難である。
このため宇宙の新興文明は、工学的にまったく合理性のないフレロビウムの建築物を無駄に作り、それを無駄に破壊して技術力を誇示する傾向がある。惑星に残留したフレロビウムの濃度を測ることで、その文明でどれだけこうしたポトラッチ行為が流行したのかを見積もることができる。
「ポトラッチ」という言葉を覚えたので使いたかったのだろう。
2月9日 水
イオンモールで苺ショートを食べながら短編 WDM 最終改稿作業。すぐそばにあるエスカレーターの注意アナウンスが無限ループで聞こえてくるので、集中できずに文字起こしをする。
エスカレーターをご利用の方はハンドレールを持って足元の黄色い線をふまないように順序よくお乗りください。お年寄りやお子様連れの方は特にご注意ください。乗り降りの際はお足元にご注意ください。エスカレーターの下り口付近や乗り口付近には立ち止まらずにお進み下さい。上りの方は左側のエスカレーターをご利用下さい。（くりかえし）
いったん文字にすると不思議と耳に入らなくなり改稿を終える。「15時まで」と言われたものを15時13分に送ったので頑張った方だと思う。
早川書房から『SFが読みたい！2022年版』が送られてくる。去年出たSFのランキングとか作家の直近予定とか『バーナード嬢曰く。』出張版とかが載ってる。僕も毎年予定を書いているが、これを読んでると「僕はSF作家の中では勤勉なほうなのでは？」という気がしてくる。
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