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5時55分

いつも朝勤は家を出る時間を決めている。
眠たい目を擦りながら
100dBの目覚まし時計を叩いて起きて
準備して、急ぎ足で革靴に履き替えて、

プレイリストのシャッフルボタンを押して
1曲目がその日を彩る。


「らしくないなぁ」という
1行目の歌詞に心震わせられる。


自転車に乗りながら
以前の出張の話を考えていた。


まだ寒く空気が冷たかった頃
たった90分の為だけに
大阪オフィスに呼び出された。

店長副店長ばかりがいる中、
まだまだ未熟な自分が呼ばれていいのだろうか、という気持ちを片隅に
ただ仕事の話をしただけの時間だった。


その内容はこの今でもまだ尾を引く
コロナが出回った時の話。

街から人が消えて、お客様がいなくなって
店も何個も潰れて、顔が見えなくなって。

それでもお客様に会うために
サービスをするために
このたった1杯のコーヒーを届けるためだけに
私達は働いているのだ。

という動画で何人も泣いている人がいた。

もちろん自分のために。
楽しさのために。
喜びのために。


一種の自己満足かもしれない。
けれどそこには
確かに喜んでくれている人がいる。

ラーメン1杯分のお金を出してでも
ドリンクを買ってくれる人がいる。

コンビニのコーヒーより
ここのコーヒーを求めてくれている人がいてる。


1800店舗のたった1店舗だとしても
何万人といる中の1人のパートナーだとしても
大多数の中の1人だとしても


確かにその一員で、
そのお店の中のリーダーであるのだ。


お店の最前線に立つ
お客様の一番前に立つ
1人のリーダーであるのだ。

責任と重圧に
押し潰されそうになる時もある。

それでもこのコーヒーの付加価値の為に、
今日もカウンターに立つ。

まだこの仕事をやめられる気がしないです。

もうすぐエプロンが黒くなります。







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