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【戯言】不思議の国の時計と眼鏡

真夜中に目がさめた
ぼやけたボクの視線の先に
白いウサギが立っていた

「ねぇ、いま何時?」

寝ぼけたボクはウサギに言った
「時計は、キミが持っているでしょ」

「赤の女王が、みんなの時計を集めているの」
「それでキミのも?」
「ええ。だから、いま何時?」

ボクは目をこすって時計をさがす
「あれ?」

ボクの部屋には時計が3つ
壁掛け時計、目覚まし時計に置き時計

3つの時計は全部ちがった
ティースプーンに変わってた

これじゃあ、砂糖は計れても
肝心の時は計れない
あれ? 時計は時を計るのか?

カチコチ カチコチ
時は長さ? それとも重さ?

「あら、大変! お茶会に遅れちゃう」
白いウサギは大慌て
急いでボクの眼鏡を握る

「それは困るよ」
ボクはパジャマ姿でウサギを追った

眼鏡がないと境がぼんやり
色んなものにぶつかって
気がついたらテーブルの前

「ようこそ、お茶会へ」
シルクハットがお辞儀する

ボクはパジャマで席につく

陽気なお茶会
割れたクッキー隣の皿へ
ティーポットは宙を舞う

ボクはハットに訊いてみる
「赤の女王は、なんで時計を集めているの?」

ハットはカップをテーブルに置き
「彼女は、時を集めてるのです」
庭の薔薇にそう言った

「時を集める?」
「時計が刻んだ時間から、時を抽出するのです」

「時を集めて、どうするの?」
「永久が欲しいのでしょう」

「それは無限ループだよ」
「といいますと?」

「永久の時間、時を集め続けるわけでしょ」
「なるほど。それは、ごもっとも」

「では、時より大事なものとは、なにか?」
ハットの口がニヤリと笑う

「それは、時の使い方」
「無限も有限も同義! 私はサフランが大好きです」

ハットはボクに眼鏡を渡す
「よい旅を」

眼鏡をかけたボクが見たのは
見慣れた部屋の天井だった

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