【戯言】空を泳ぐ金魚

朝起きたら、
水槽の中に金魚がいなかった

散歩に出たのか
旅に出たのか

それとも、
はじめからいなかったのか

ふと空を見上げると
そこで気ままに泳いでいた

雲の間を　くゆら　くゆら

ぼくも、空を泳ぎたい
そう思って、窓から飛んだ

意外とあっさり泳げるものだ

「なんで、泳げたんだろう」
「泳ぎたいと思ったからでしょ」

金魚が、ぼくのとなりを泳いでいた

「きみは、なぜ空を泳いでるの？」
「泳ぎたかったから」

「普通は泳げないと思うけど」
「そっちの思い込みの方が強いからね」

「思えばなんでもできるの？」
「思わないことは、なにもできない」

「でも、うまくいかないこともあるよ」
「不安の方が強いから、そっちがうまくいく」

「あとは、タイミングがちがっただけ。
　今じゃなかった。それだけ」

「自由だね」
「もうすぐ、ほんとうの自由になる」

ぼくは、
ぼくかもしれないし
風かもしれない

「空は、泳ぐ場所だ」
「キミがそう思うなら、そうだね」

地球は、
水槽かもしれないし
水滴かもしれない