【悩み】会社批判をする部下とその思考パターン(1on1 stories)

部下が会社批判をした時に、上司としてどのように振る舞うのかはその組織にとっても、部下にとっても今後を占う重要な局面であると言えます。安易に話を合わせてしまうと部下は増長してしまい組織のためにはならないし、部下の言うことに耳を傾けなければいずれその組織を去って行くでしょう。

ここでは部下をマネジメントしてきた中で直面してきた人材の課題を挙げています。しかし上司といっても人間であり部下の評価には主観的な目線が少なからず入ってしまいます。そのため、できるだけ起きた「事実・現象」を客観的に捉えることから始めていくことを心掛けて取り組みました。

そしてすべての部下が道を見つけて前進してくれることを目的として分析、対策を打っていきます。つまり教育を諦めるということはしないという前提において話を進めます。

会社批判する社員
この事例は技術・スキルに長けていて周囲から優秀だと褒められる中堅社員のケースです。

・もともと技術畑であったが半年前に営業系の部門にセールスエンジニアとして異動した
・最近では商品のクレーム対応に動くことも増えてきた
・ある時から突然会社批判するようになってきた

1.自己評価も話も大きい
聞くと今の自分の役割に不満だと言う。
「クレーム対応までしなければならないと思わなかった」
「客対応に追われて新規の営業ができない」
「うちの商品は欠陥だらけでこのままでは売れない」

ひとしきり聞いた後にそれでどうしたいのかと問うと、自分の希望を言うのではなく「今の話を聞いて方針は変えますか」と言ってきました。優秀なだけに不満の矛先も大きく、その言い方は強気で自信満々な物言いでした。
もともと自分に自信があり自己評価が非常に高い彼。営業部門に移った今は自分が元居た技術部門に対して、「仕事が遅い、俺がいないと話が進まない」と批判することもしばしばありました。
もちろんこの日聞いただけの意見で方針を変えることはないことを伝え現状で何か改善できることを探ろうと話を進めます。

2.こちらからの提案には乗らない
彼が主張してきたことの中には正しいと思えることもあり実行に移すべきことがありました。ただし、役割としては新たに担当者を任命しないといけないような内容で、その主張を発揮してもらう方法を考えました。

技術部門に不満があるのであればと部門を超えたプロジェクトを立ち上げ、リーダーを任せると伝えました。その上で「どんな成果を目指すのか。具体的に教えてほしい」と聞いたところ「それはいろいろ」と具体性のある実施方策が返ってきません。
目標も納期もなければプロジェクトにはなりません。「今すぐでなくていい、考える時間を与える」と言うと「時間がない。そもそも営業活動ができなくなりますよ」「プロジェクトメンバーが動いてくれるのかわかりません」とできない理由を並べてどんどん話が逸れていきます。機会を与えようとしても具体性のある答えを出さない。批判をするが現実的な対案は出てきませんでした。

時間の問題もプロジェクトメンバーの問題もこちらから支援すると対案を提案しても、どれにも首を縦に振りません。納得していないというより自分の主張と異なる話にはまるで耳を貸さないという態度でした。

3.本心を語らない
今回、面談の中で彼の中でネックになっているであろう点を解消し方向性を見出そうとしましたが、納得したような返答は得られませんでした。結局、「方針は変わらない、ただ君の主張は有益なものがあるから実行するよう指示を出す」というところで終わりました。
どうしてほしいのか?と聞いても、途端に言うことが曖昧になり「こうしてほしい」という明確な返答は返ってきません。本音を言ってくれるとどんなに楽でしょう。挙げ句「方針が変わらないのはわかりました。わたしがそれに納得しなければ会社を辞めるということです」と言い放ち、まるでこちらが脅迫されているように終わりました。
現時点では上司と部下、方針と部下の意見が異なっているので、行きつくところまで行けば、そうならざるを得ません。ただ、失うにはもったいない人材でもあるのです。

仮説と対策
現時点ではこちらから必要と思えることは支援するが、納得しなければ本人は辞めるという状態です。本心がどこにあるのか探りながら解決策を検討していかないといけません。本人のパーソナリティも考慮しながら仮説を立てて様子を見ていくことにします。

仮説:完璧主義者
今回の彼の主張は大きいことから小さいことまで多方面にわたりました。他の社員では感じない細かなほころびも許せない、という完璧主義からくる主張とも考えられます。ただし課題には優先順位があるので採用できる意見もあれば後回しにするものもある。それが彼にとっては許せないことのかもしれない。
対策:賛同者がいない課題の優先度は下がる。仕事は一人でするものではないことを伝えていく。

仮説:異動したい
業務管理が厳しい営業部門に来た反動が考えられます。これまでの技術部門は業務管理は無いようなもので、いい意味で各自が自由に好きなことをやれていました。もともとの自分の土俵から外れた業務内容であることに加えてガチガチの数字管理に抵抗を感じている可能性はあります。ただしこれが本心であれば問題は長期化することが想定されます。
対策:異動は無い。営業部門で伸ばして欲しい能力・スキルを伝え経験させ、成果が見えたら賞賛する。

仮説:プライドが高く処遇に不満
以前の技術部門では後輩もいたが現在の営業部門では最年少、最下職である。もともと自己評価が高く自分の現在の役職に不満があると考えるか。ただし会社の人事制度上できる評価はしている。
対策:現時点では無し。成果を出し、他者評価を高めることで結果はついてくる。

面談した後から徐々に業務報告を怠るようになったりルールを外れ始めるようになった。こういった行動が相手に与える印象について想像力がないのかと思うと残念に思う。いくら言葉で「わかった」と言っても、行動が伴っていなければそれはわかっていない状態といえる。
現時点ではこちらの提案を聞く耳を持っていないように見えるため、少し時間を置いて様子を見ていくこととします。

まとめ
・正しい行動は認めて、評価する
・会社方針の変更は一貫して否定し、時間をかけて理解してもらう
・話を聞き入れる姿勢になるまで待つ

結果的には、2週間ほど時間を置いて会社の上意下達を理解してもらったうえで、当人の査定テーマを一部変更し、やりたいことを一部認める、という形で話したところ、前向きに取り組むとの返事が返ってきた。今では以前のように課された課題を自発的にこなしていっている。

今回意識した人材マネジメント技法
・上司として一貫した姿勢で要求に対応する
・自尊心を満たすことで要求を聞きやすくする

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