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あなたの知らない経絡の世界~大腸経の巻

前回は、手の太陰肺経の流注(経絡の流れ)について解説しました。

今回は肺経と”表裏関係”にある、手の陽明大腸経について解説していきます。

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なぜ流注を知る必要があるか?

前回の記事でも書きましたがこの話は何度書いてもいいと思うので今度は具体的な例を交えて話していきます。

大腸経は、示指からはじまり、前腕、上腕を通って顔面部まで巡っていることはなんとなくでもご存知だと思います。

そんな大腸経の中でもトップクラスに有名なツボと言えば『合谷』ですね。

ではこの『合谷』はどんな症状に効くのでしょう?主治をみてみましょう。

主治
すべての眼科疾患、高血圧や脳充血、耳鳴歯痛などの実証、神経系疾患(特にてんかん、小児のひきつけ、神経衰弱など)、化膿性疾患(疔や癤に多壮灸)、母指のリウマチには必須の穴である。脳貧血にも用いる。また、高熱、扁桃炎、咽頭痛などには、商陽穴、二間穴、三間穴とともに用いる。

『MR経穴』合谷のページより

歯痛や、母指の治療に使うというのは流注が通ることで説明できますよね。

では眼科疾患は?耳鳴は?

教科書的には大腸経は鼻の脇で終わるので、よくわからないと思いますが、教科書に掲載されていない経絡の流れを知ることで理解できるのです。

例えば、耳鳴については、大腸経の絡脈が耳を巡っていることで影響を与えることがわかります。(詳しくは後述)

なお、主治は書籍により書いてることはかなり様々で、合谷の主治の中にあった高血圧や脳充血なんて古典にはなかったでしょうから、経験的に後世に主治に追加されたものでしょう。

また、すべての主治が経絡理論を踏まえて書いているわけでないので、経絡の流注を完璧に理解すればすべての主治を説明できるわけではないですが、東洋医学を用いた治療のなんで?に答える1つのヒントになると思います。

この連載記事で、教科書の枠にとどまらない東洋医学の世界を少しでも知るきっかけになればいいなと思います。

大腸経

正確には、「手の陽明大腸経」と呼ばれます。

大腸経の流注

まず、経絡経穴の教科書に書かれている大腸経の流注をみていきましょう。

 手の陽明大腸経は、手の太陰肺経の脈気を受けて示指外側端【商陽】に起こり、示指外縁をめぐって、第1・第2中手骨間の手背側[合谷]に出て、長・短母指伸筋腱の間[陽渓]に入る。前腕後外側(長橈側手根伸筋と短機側手根伸筋との間)を上り、肘窩横紋外端[曲池]、上腕後外側、肩を上り、[大椎]に出る。[大椎]から大鎖骨上窩【欠盆】を下り、肺を絡い横隔膜を貫いて大腸【天枢】に属する。 
 
 大鎖骨上窩【欠盆】で分かれた支脈は、頸部を上り、頬を貫き、下歯に入り、かえり出て口をはさみ、人中【水溝】で左右交差し、鼻孔をはさんで、鼻翼外方【迎香】で足の陽明胃経につながる。

『新版 経絡経穴概論』
(一部経穴名挿入)原文は『霊枢』経脈第十

※【】で『類経』を参考に、ゆーのすけが経穴名を挿入し補足。

十四経発揮 経絡図 大腸経


手の陽明大腸経の流注(ゆーのすけ作成)


ポイント①:大腸経は、第7頸椎や鎖骨上窩もめぐる

まずは、他の経だけど、大腸経を通る経穴(=交会穴)を押さえましょう。

この交会穴は、機械的に(もしくは替え歌で)大腸経の経穴を覚えただけの人にはもしかして知られていない存在です。笑

「巨骨」と「天鼎」の流れの間に、「大椎」「欠盆」が入ります。

でも十四経発揮の図では省略されていますね(´;ω;`)

大椎(督脈)・・・第7頸椎棘突起下方の陥凹部
欠盆(胃経)・・・大鎖骨上窩(鎖骨上方の陥凹部)

「大椎」は、『類経』によると「六陽経は督脈の大椎で交わる」と書かれていて、大腸経はもちろん、胃経、三焦経、大腸経、胆経、小腸経、膀胱経が交わっているスペシャルな経穴になります。
よく風邪のときに大椎にお灸したりするのは、陽経全体の熱に影響を与えていると考えることができそうです。

「欠盆」は、本来は足の陽明胃経の経穴ですが、大腸経と共に後述の手の陽明の経別も入ります。そして、手の太陰経筋が2回出入りしますし、手の太陰経別が入ります(前回の肺経の記事参照)。
胃経の経穴でありながら、肺‐大腸経とも関係が深いです。

ポイント②:臍の外方2寸は、大腸経(大腸)の診所

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