人生最大の後悔

人生最大の後悔ってなんですか?

たまにテレビやネットでこの問いかけを見ると
私は必ず思い出す事があります。

時は遡る事8年前、
当時10代だった私が友人と二人で初めて広島県を訪れたのは
まだ残暑が厳しい9月のことでした。

静かに広がる瀬戸内海、幻想的な宮島、自然と街並みが美しく調和する広島県を2泊3日かけて観光し、

旅の1番最後に訪れた場所
それが、原爆ドームと平和記念資料館でした。

小さい頃から世界遺産に興味があり
いつか絶対に行きたいと思っていた場所でした。

初めてこの目で見る原爆ドームは
思っていたよりずっと都会の中に突然現れて
私の心臓がドクンドクンと波打つのを感じました。

ここに、原子爆弾が落ちた。
たくさんの人が灼熱の中で亡くなった。
そんなことを漠然と考えながら見上げた原爆ドームは
今にも崩れ落ちそうで、でもよく見ると丁寧に補強されていて
後世に残したい、という人々の強い気持ちを感じました。

平和記念資料館は、
原爆の悲惨さ、凄まじさを
言葉無しに教えてくれる場所でした。
静寂に包まれる館内で、何度も胸が張り裂けそうになりました。

資料館を出たあともしばらく友人と二人、沈黙が続きました。
言葉が出ないって、こう言うことなんだと初めて感じた経験でした。

「悲しい」とか、「怖い」とか、
そんな一言では言い表せないような気持ちになりました。
二度とこのような悲惨な事が起こってはいけないのだと、改めて学ばせてくれた場所でした。

帰り際のことです。
一人のおじいさんから声をかけられました。

「今から戦争についての講話があって、あなた方のような若い方に、ぜひ聞いてもらいたい」

このように声をかけていただきました。

しかし、
予想以上にゆっくりと時間をかけて資料館を見た私は
このあと帰りの新幹線の時間が迫っており
時間がなくてごめんなさい、と断ってしまったのです。

それが後に
私の人生最大の後悔となりました。

大人になった今思えば
新幹線に乗り遅れてでも
その講話を聞くべきだった、と思うのです。

それほど価値のある講話だったはずなのに
私は断ってしまったのです。

当時まだ10代だった私は
新幹線の切符を払い戻しできると知らず、
切符に記載された時間は絶対に守らなければいけないと思っていました。
今のように便利なアプリもありませんでした。

あの時、切符の払い戻しを知っていれば...

おじいさんだって
きっと勇気を出して声をかけてくれたはず。
私たちに伝えたい事が沢山あったはず。
それなのに私は...

おじいさんに本当に申し訳ないことをしてしまいました。
このことは、今でも本当に後悔しています。
私の人生最大の後悔です。

あれから8年の月日が経ちました。
私にも守るべき家庭ができました。

私の夫は、広島県に行った事がないと言います。

気軽に行ける距離ではないのですが
いつか必ず、いや、近いうちに、
夫を原爆ドームや平和記念資料館に連れて行きたい。
今の私のひそかな願いです。

79年前の今日、広島で何が起こったのか
私はその全てを知ることはできないのかもしれません。
当事者にしか分からない事が沢山あるのかもしれません。

それでも伝えたい、あの場所について。
そして次こそは必ず、講話を聞きたい。

戦争や原爆の愚かさを伝えていく事こそが
平和な時代に生まれた私たちの使命であり、
一度でもあの場所を訪れたことがある者の使命のように感じます。



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