自転車発電の備忘録 - 準備編
9年目の「3.11」。普段使っているエネルギーのこと考える機会にしようということで、自転車発電を作りました。私自身、実際に作るのは3度目なのですが、作るたびに「あれーこれどうすんだっけ」と毎回いろいろ忘れるので、忘備録として書いておきます。
1. 先輩方の取り組み
まず、すでに多くの方が自転車発電についてウェブで紹介されているので、リンクを張っておきます。
鈴木靖文 氏(ひのでやエコライフ研究所)のウェブサイト
超老舗。自転車発電の原理から整流回路やオルタネーター周りの配線についてもとても詳しく載っています。自転車発電を自作したいという方は、まずこのサイトを精読されることをお薦めします。私自身、このサイトのおかげで作れるようになりました。感謝&リスペクト。
・後輪が浮くタイプの自転車ならなんでも使用可(自転車に細工不要)
・オルタネーターの励磁電流にはダイナモを使用
有限会社マインド
こちらも老舗。スタンドをつかい、かつオルタネーターの台を傾斜させることで、小径車でも発電可能にしています。
・自転車を固定するスタンドを利用
・励磁電流にはダイナモを使用
mabofarm
写真が多くてわかりやすいです。ミシンを動かすアイディアが素敵。
・自転車を固定するスタンドを利用
・励磁電流にはダイナモとバッテリーを併用
・自転車に細工が必要(ダイナモの取り付け)
2. めんどくさがりやの私のこだわり
私のこだわりはこうです:
・自転車側に細工したくない
自転車が変わっても大丈夫なようにしたいのと、自転車側に細工をするのが単純に面倒だからです。同じ理由でスタンドも作りたくありません。なるべくシンプルにいきたいのです。
・バッテリーは使いたくない
私は家電などを日常的に動かすためではなく、イベントやライブでの「パフォーマンス」として自転車発電をつくります。安定した電力供給が目的なのではなく、「どうやったら電気ができるのか」「自分は何ワットまで発電できるのか」みたいなことを体験してほしいのです。なのでバッテリーは不要なだけでなく、存在感抜群のバッテリーが鎮座していると「なんだ結局バッテリーで動かしてるんじゃん」という事になりかねないので嫌なのです。イメージの問題です。あ、あといちいち重たいバッテリーを運ぶのが大変ということもあります。
・ダイナモを使いたくない
紹介した先行事例を含め、ほとんどの先行事例では自転車でダイナモを同時に回し、ブリッジコンデンサーで直流に直してオルタネーターに送り、励磁電流を得ています。私も以前はこの方法でやってうまくいったのですが、正直、めんどくさい!適当なダイナモがぱっと手に入らないし、買うと微妙に高いし、ダイナモの当たる角度とか金具で調整しなくてはいけないし、回路も少し複雑になります。あとダイナモを常に回すことになるため、オルタネーターだけの場合より漕ぐ時に重くなるのです。これもマイナスポイント。なのでダイナモはボツとしたい。
3. 乾電池でお手軽に励磁電流を得る作戦
ということで、根っからのめんどくさがり屋としては、とにかくシンプルにいきたいのです。そこに立ちはだかる
問題:ダイナモもバッテリーも使わずにオルタネーターの励起電流を得るにはどうするか。
なんですが、思いつきで
答え:乾電池を使えばいいじゃん
しかし、ネットで調べたところ、12Vのオルタネーターの励磁に必要な電圧は12V。12Vのバッテリーから励磁電流を供給することが前提だからでしょう。しかし、、、うーん12Vを得るには1.5Vの乾電池だと8本も必要だぞ...。なんかバッテリー使わないのに足元が乾電池だらけになるのもいやだなぁ。
ということで、ダメ元で9V乾電池をオルタネーターに接続!試したところ、なんとすんなり起動!
使用したオルタネーターはデンソー製のかなりの年代もの。あと三菱のオルタネーターも試したところ、こちらも9Vで難なく起動しました。試しに電圧を下げていったところ、6Vでも起動したので、意外と励磁のための電圧は大きくないようです。今回、ボックス型で場所を取らない9Vの電池を採用することにしました。
ただし、乾電池をオルタネーターと常時接続すると、一瞬で電池が切れます。とくに9Vの乾電池は容量が少ないので、常時接続、ダメ絶対。ということで、一工夫。押しボタンをかませることで、押している間だけ電流を流せるようにします。
これは作ってみたあとでわかったことですが、オルタネーターの励磁に必要な電流は1秒も流せば充分。なので押しボタンを適切に使えば電池の消耗も抑えられます。
4. 回路はこんな感じ
ということで、早速回路を組んでみました。基本は前述の鈴木靖文 氏(ひのでやエコライフ研究所)の「整流回路図(2010年版)」を参考にしつつ、励磁電流を乾電池にしたものをつくりました。
ポイント:
・押しボタンスイッチ
押しているときだけ電流が流れるタイプのものを使用します。私は秋月電子の「パネル取り付け用押しボタンスイッチ」を採用しました。
・電圧調整用のダイオードの効果
鈴木氏のページに詳しくのっていますが、ダイオードを3つかませて電圧を調整する仕組みを私も採用しました。というのも、オルタネーターで発生する電圧を測ってみたところ、14.6Vもあります。私の使用しているインバーターは許容入力電圧が最大14.5Vで、それを超えると強制的にシャットダウンする機構となっています。よってオルタネーター直つなぎだと電圧が高すぎるのです。これを、ダイオードを通すことで1Vほど降下させることができ、13.6Vくらいになりました。本来インバーターの入力電圧は12Vですからこれでもまだ高いのですが、一応安心です。
すこし細かい話をすると、オルタネーターは本来バッテリーの充電用に作られたものですから、バッテリーの出力電圧12Vよりも2Vほどたかく設計されているそうです。インバーターはあくまでバッテリーから供給される12Vを利用することが前提ですから、オルタネーターからインバーターに電流を送るときに電圧調整が必要となるのです。
・電球型LED
いやびっくりしたんですけどね、秋月電子の通販に「ナツメ球」というものがもはや存在しないんですよ!「豆電球」で検索しても出てきません。店舗にはまだあるのかもしれませんが、あれだけ工作につかった豆電球はもう絶滅したんですかね。
ということで、こちらの電球型LEDを確認用として使いました。対応電圧9〜12V程度とあるのですが、実際には14V台の電圧がかかるのでまずいかな、とおもったのですが...いまのところ大丈夫です。
※追記
とおもったら、こちらのLEDウェッジ球が14Vまで対応していました。ホルダーも買えるので、秋月電子で一式揃える方はこちらをおすすめします。
5. 完成!
総工費
中古のオルタネータ 0円 (近所の自動車整備工場で頂きました)
板 0円 (適当に家にあったもの)
プラスチックケース 0円 (適当に家にあったもの)
ケーブル 0円 (使わなくなった延長コードを再利用)
固定金具L字、ボルト、ビス 800円 (ホームセンター)
150Wのインバーター 2,000円 (Amazon)
電子部品一式 600円 (秋月電子のウェブストア)
送料 600円
合計 約4,000円
電子部品一覧
ダイオード(5A) 4個
コンデンサー(4,700μF) 1個
確認用LED電球とリードつきソケット (14V対応)
リードつきシガーソケット(メス)
圧着端子(丸型2つとファストン型1つ)
9Vアルカリ電池とリードつき電池ボックス
押しボタンスイッチ
細かい工程は省きます(鈴木氏のページを参考にしてください)。
以下、大事だとおもった点:
・押しボタンスイッチのあしらい
固定したければ適当なプラスチックケースをみつけて穴を開けて設置。固定の必要が無いならケーブルつきのスイッチにするという手も。また持ち運びの時に、ボタンが押されっぱなしにならないように、ボタンを覆うようにカバーしておくことも大事です。ペットボトルのキャップとかがちょうど良いです。
・ケーブル
オルタネーターからインバーターへの回路に使うケーブルは充分太いものにしましょう。
・ショートに気をつける
いちど私自身やってしまったのですが、オルタネーターのボディ全体がマイナス端子であることを忘れて、足場にしていた金物がプラスの端子に触れてしまっていたことがありました。それ以来、オルタネーター周りには一切回路部分が近づかないようにプラスチックの箱で覆うことにしています。
•ダイオードの発熱
上の写真をよく観ていただけるとわかるんですが、ダイオードを周囲から隔離するためにとかぶせておいたビニールが、熱で溶けています。写真をみて気付きました!危ない危ない。木片で改めてバッファをとりました。これで様子をみます。しかしダイオードってけっこう発熱するんですね。
・電池式にしてよかったこと
意図して設計したわけではないのですが良かったことは、発電をしていない状態でもボタンを押すと、このように確認用LED球とインバーターのランプが点灯します(インバーターの赤いランプは入力電圧が低すぎることを意味しています)。これで電池の残量確認とインバーターの通電確認ができますのでなかなか便利です。
さ、次回は実践編、実際に発電してみます!