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孤高の木 イチョウ

我が家の近くにあるお寺の境内には大きなイチョウが植えてあります。

東京出身の私にとってイチョウは子供のころから見慣れた木で、都内の道端や車道沿いの並木など、どこでもよく見かける木でした。

そんな、自分にとってどこにでもいる木という存在のイチョウでしたが、大人になって植物のことを仕事にするようになって、イチョウは決してどこにでもいる木ではなかったことを知りました。

植物には、分類するためのグループ分けがあって、バラ科やキク科などの、「科」、その下の分類はヨモギ属やキジムシロ属などの「属」に別れています。

例えばヨモギはキク科のヨモギ属、ヘビイチゴはバラ科キジムシロ属といった具合です。

バラ科の植物だけで2500種以上、キク科の植物はなんと2万種以上あるそうです。

さて、イチョウは、イチョウ科イチョウ属。

イチョウ科の下にはイチョウ属しかなく、イチョウ属には「イチョウ」一種がいるのみです。

イチョウは1科1属1種。つまりイチョウに仲間はいないのです。

元々イチョウ科の植物はジュラ期に現れたと言われていて、その当時は現存のイチョウのほかにもたくさんのイチョウ科の植物が存在したそうなのですが、現存のイチョウ以外は氷河期に全て絶滅してしまったそうです。

イチョウはイチョウ科唯一の生き残り。そして日本と中国だけに現存する、「野生絶滅危惧種」です。

今日も、一種だけで長く地上にいて色々なことを見てきたイチョウは何を感じているのかなと、お寺のイチョウを見上げて思うのです。






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