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非営利法人と営利法人とは|非営利法人が全て悪ならあなたは学校にも病院にも行けない

「非営利法人=悪」「障害福祉事業者=悪」という誤解

筆者がnoteで言及していた一般社団法人Colabo問題だが、インターネット上では、Colaboが非営利型の一般社団法人だったことから、あたかも「非営利法人=悪」「障害福祉事業者=悪」との誤解が広がっている。

それなので、Colabo問題を言及する前に、今回はその誤解を解いていく。

①     営利法人・非営利法人とは?

営利法人はビジネスで得た利益を特定の構成員(社員や株主など)に分配することを目的とした法人のことだ。非営利法人とは、利益を構成員に分配することが禁止されていて法人だ。よくある誤解だが、「非営利」という名前から、利益を上げてはいけないと思っている方がいるが、分配できるかできないかの差だけで、利益は出してもいい。

②     非営利法人の種類

非営利法人には、NPO法人(特定非営利活動法人)、一般社団法人、一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人、社会福祉法人、学校法人、医療法人がある。それなので、非営利法人が全て疑わしく悪だと言い出せば、あなたは学校にも病院にも行けなくなってしまうのだ。
(営利法人と非営利法人の違い。非営利法人にはどんな種類がある?https://gooddo.jp/magazine/npo_ngo/11381/

③     一般社団法人Colaboは何法人?

一般社団法人には営利型と非営利型がある。
Colaboの場合、仁藤夢乃氏が寄付金控除(納税者が寄付をした際に、課税から免除されること)は受けられないと書いているので、非営利型の一般社団法人であろう。
(国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm

④     障害福祉に関する法律の歴史

障害福祉に関する法律は、2000年6月の社会福祉基礎構造改革までさかのぼる。
その後、2003年4月からはじまった支援費制度は、初めて、障害者自身がサービスを選択して、契約後にサービスを利用できる制度だった。それまでは、措置制度と言い、障害者は自分で利用したい事業所を選ぶことができず、市区町村が決めた事業所でサービスを受けるしかなかった。しかも、その利用料は、応益負担(収入に関係なく、使ったサービスの分だけお金がかかる)だった。つまり、年収の低い障害者は、必要な福祉サービスだとしても、金銭負担が大きく利用できなかったのだ。

2006年10月 障害者自立支援法が施行されるが、応益負担(収入に関係なく、使ったサービスの分だけお金がかかる)はそのままだった。また、「自立」という部分が強調され過ぎたため、経済的な自立が無理な障害者にとっては悪法だったのだ。

そして、障害者やその家族は、収入に関係なく必要なサービスを利用できるようにすべきだと、2008年10月31日に障害者自立支援法の廃止を求め、国を一斉に提訴した。
国が合意し、出来上がった法律が、2013年4月に制定された障害者総合支援法なのだ。

障害者総合支援法は何回か改正されているが、一番大きな点は、利用料が応能負担(収入に応じて負担金が決まる)となったことだろう。そのお陰で、お金のない障害者も必要な福祉サービスが負担なく受けられるようになったのだ。

それなので、一部の人たちが言っている「障害者総合福祉法の作成に関わった人物が疑わしいので、障害者総合支援法の枠内の事業所は疑わしい」というのは、陰謀論に過ぎない。

(国立障害者リハビリテーションセンターhttp://www.rehab.go.jp/ddis/system/supportact/comprehensive/#:~:text=%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E5%8F%8A%E3%81%B3%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E5%85%90,%E7%B7%8F%E5%90%88%E7%9A%84%E3%81%AB%E8%A1%8C%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

⑤     障害者総合支援法の枠内の福祉事業所とは?


障害者総合支援法の枠内で受けられるサービスには下図のような種類がある。

(図 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html


これらのサービス事業所はそれぞれ対象とする障害者、人員基準(その施設にどんな資格を持った人が何人必要か等)、設備基準(どれくらいの広さで、どんな設備が兼ね備えられているか)などが異なり、細かい規定がある。そして、サービスが実施されるのは市区町村だが、まずは東京都内であれば東京都の認可が必要となる事業だ。上記のような基準を満たした上でやっと開業することができる。

さらに認可を通って開業した後も、おおむね3年に1度、福祉課指導係による「実地指導」が入り、悪質な場合には「監査」が入る。そこで基準を満たしていないと、指定が取り消され、営業自体ができなくなる。

(厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9830&dataType=1&pageNo=1#:~:text=2)%20%E5%AE%9F%E5%9C%B0%E6%8C%87%E5%B0%8E-,%E2%91%A0%20%E6%8C%87%E5%AE%9A%E3%81%AE%E6%A8%A9%E9%99%90%E3%82%92%E6%8C%81%E3%81%A4%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E7%A6%8F%E7%A5%89%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9%E4%BA%8B%E6%A5%AD,%E3%82%92%E5%9B%B3%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

また、質の高い福祉サービスを事業者が提供するために「福祉サービス第三者評価」という制度もあり、公正・中立な第三者機関が専門的・客観的な立場から評価を行う仕組みも用意されている。自分たちのサービスが適切に提供されているかの証明のために、事業者側から第三者評価を申し込む場合も多い。

それなので、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」の枠内で事業をしているColaboと「障害者総合支援法」の枠内の福祉事業所では、基準から根拠とする法律まで、全く異なる。いっしょくたに語ることはできない。

(困難な問題を抱える女性への支援に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=504AC0100000052_20240401_504AC0000000066

⑥  収入の原資は何か?


障害者総合支援法の枠内の福祉事業所の主な収入は、国民保険連合会に請求する介護給付費・訓練給付費だ。非営利法人で収益を上げてもいいということは①でも書いているが、特にNPO法人などは国民保険連合会からの収入だけでは成り立たないので、他に事業をやっている事業所も多いし、寄付金をつのって維持している。

その一方、Colaboは東京都からの委託事業をしており、その原資は東京都や国からの補助金・助成金・寄付金である。

その点でも、障害者総合支援法の枠内の福祉事業所とは、異なる。

全てをいっしょくたにし、「悪」「善」と決めつける前に、きちんと基礎的な知識は知った上で冷静に議論をしていきたいものだ。そうでなければ、あなた自身がSNSでデマを拡散してしまうこととなるのだ。

その他の会計・法的な問題については、また次回、ご解説したい。
今回は混乱している、基本的な制度の解説のみにとどめる。

田口ゆう(あいである広場 編集長 https://ai-deal.jp/


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