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33年の時を超えて(前編)

1986年、タカラ(現:タカラトミー)が発売した女児向け玩具「むしばでなみだ ぽろりんちゃん」
歯医者さんをテーマにした人形遊びセットになっており、人形の歯を治療すると、涙を流すという、若干トリッキーな仕様の玩具だ。

それが33年経って、行き着くべきところに行き着いた瞬間に遭遇することができたので、ここに記しておきたい。

今回の年末年始で帰省する際、どうしても寄りたい場所があった。
それは、幼少の頃、何度か行ったことがある、母方の実家近くにある玩具店。

数年前に立ち寄った際、古いゲームソフトやLSIゲームがたくさん残っており、物凄く気にはなったものの、あまりウェルカムな雰囲気ではなかった(少なくとも、その時はそう感じた)ので、足早に退散した。

そのことを少し前に思い出し、改めて訪問し、商品の物色と併せ、地方にある、個人経営の玩具店が抱える現状を、業界に少なからず関わる者として、お聞きすることができないものかと考えていた。
調べてみたところ、その玩具店がwebサイトを開設しておられ、問い合わせ用のメールアドレスが明記されていることを知った。

ダメ元で自分の素性、そして年末年始にお邪魔させていただくことが可能か、確認のメールを送信した。
数日後、お返事をいただき、何度かのやり取りの末、大晦日の昼間にお伺いさせていただく段取りとなった。

結果的に、とても快く迎えていただき、この地域に伝わる伝説の取材に来訪された、水木しげる先生や荒俣宏先生の色紙、また、その伝説を下地に描かれ、アニメ化された「朝霧の巫女」の色紙などといった、貴重な品々も、ご主人に紹介いただきながら、見せていただいた。

奥様からもコーヒーを頂戴し、色々と貴重なお話を聞かせていただき、併せて、気になっていたゲームソフトや周辺機器も購入した。

その後、ご主人が大きな箱をふたつ抱えて持ってきた。
それが、先の「ぽろりんちゃん」だ。

ご主人曰く、

「箱や中身がすっかり日焼けしてしまい、売り物にならないんだけど、このまま捨ててしまうのは、あまりにも忍びないので、もし迷惑でなければ、持っていってくれないか?」

とのこと。

無論、未開封の新品だ。
とはいえ、箱の正面はすっかり色褪せてしまい、中身についても、白いプラスチック部分や、人形が着ている服が変色してしまっている。
確かに今、これを定価(4,500円)で買うという人はいないだろう。

そのとき、年末年始に妹夫婦が帰省してきて、1年ぶりに姪っ子に会うことが頭に浮かんだ。
姪っ子は2歳になったばかり。もし気に入ってくれたら、そのままプレゼントすればいいし、気に入らなければ、ネットオークションにでも出せばいい。

これも何かの巡り合わせなのだと思い、ご主人から「ぽろりんちゃん」2体を頂戴し、店を後にした。
(つづく)

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