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【福岡】大和証券グループpresents 佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 with 角野隼斗

■2024年5月21日(火) 開演 19:00 / 開場 18:00
福岡:福岡シンフォニーホール

Artist
佐渡裕(指揮)
角野隼斗(ピアノ)
新日本フィルハーモニー交響楽団

Program
チャイコフスキー:
ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
交響曲 第5番 ホ短調 作品64

アンコール曲目紹介
<ソリスト・アンコール>
 チャイコフスキー:「くるみ割り人形」より こんぺい糖の踊り
<オーケストラ・アンコール>
 チャイコフスキー:「弦楽セレナード」より ワルツ

はじめに

行って来ました、福岡シンフォニーホール!
ツアー初日のチケットの販売が早かったこともあり、遠方ながら購入しました。

この日聴きに行くために、ゴールデンウィークは休み返上で仕事漬け(とほほ……!)でしたが、悔いなしと思えるすごい演奏。

印象に残っているうちにこちらに書き残しておきます。
※ところどころ記憶があやふやな箇所がありますが、予めご了承下さいませ。

プレトーク

開演時間となり、ステージ横の扉が開いて、新日本フィルの皆さんの入場かと思いきや、指揮者の佐渡さんが一人で登場。
すごい拍手ではっきりとは聞き取れませんでしたが、今日はお越し下さり、ありがとうございますと言ったようなご挨拶をされたいたように思います。

「角野隼斗さん。最近は彼の年代はすごい方がたくさん。中でも彼は東大出身と言う異色の経歴で。ピアノは完璧に弾きこなす。僕とは……見た目は全然違いますね。あんまり食べないんでしょうね(笑)。
協奏曲、オケには普段いないピアノと、今回はバチバチにやり合います」

「僕は小さい頃からクラシックが好きで、最初はドイツ音楽、モーツァルトやベートーヴェンが好きだったんですが、だんだんロシア音楽が好きになりました。
ラフマニノフやチャイコフスキー……今回やる二曲は特に好きな曲です」

交響曲は五番に名曲が多い。ショスタコーヴィッチ、ベートーヴェン。運命の曲はすごいインパクトを残しましたね。
後世に与えた影響もものすごく、曲の構成の仕方は彼の作り方が後のスタンダードになっています。

また、ベートーヴェンは交響曲を九つ書きましたが、それが元で、後世、九つ交響曲を書くと死ぬと信じられていました。
マーラーは九つ目に作った曲に九番と付けずに、大地の歌と言う別の名前を付け、その後に九番を書きましたが、結局その後死んでしまいました。
バッハやモーツァルト、彼より昔の作曲家にはそんな呪いはなかったので、全然たくさん作曲してるんですけどね」

「チャイコフスキーの交響曲第五番は、落ち込んでいる時に聴くと元気が出る曲です。同じモチーフが繰り返し形を変えて出てくるところに注目すると、楽しめるのではと思います」

ピアノ協奏曲 第1番

新日本フィルの皆さんが入場を終えた後、コンマスの崔さんがピアノでAの音を鳴らし、各パートも音出し。
よくある風景でありながらも、この日はこの瞬間、ホールの空気が日常から分断され、非日常の別空間に変わったのだと肌感覚ではっきりと感じました。
皆さんの意気込みが伝わったのかもしれません。

その後、佐渡さんと角野さんが登場。
位置につくと、あまり間を置かずに佐渡さんが腕を振ります。
鳴り響く冒頭の一音目――めちゃくちゃ分厚い豊かな音色にびっくり!

事前に演奏する曲を配信音源で聴いてはいたのですが、生で聴いた音は想像の何倍も上を行くすごさで、これからツアーを聴きに行かれる方、皆さんたぶん驚くんじゃないかなと思います。

こうした感覚を文字に変換するのは非常に難しいのですが、佐渡さんは楽譜、曲そのものに宿っているエネルギーを余すことなく解き放っている、そんな印象を受けました。

あくまで一般人、素人の感想ですが、指揮者を水道の蛇口に例えると、佐渡さんの場合、最大放出量がすさまじく、見せ場では出来るだけ蛇口を締めずに、曲が持っているエネルギーをそのまま流している感じ。

そんなオケが発する音の奔流に、対するソリストの角野さんも負けてはいません。
あの細身のどこからそんなパワーが、と驚く迫力の音色。
過去伺ったコンチェルトの時より、弾き方にもどこか余裕のある感じで、もともとすごいのに、よりパワーアップされてる……!

絡み合って客席に届く音色の凄さに、もう圧倒されて、私はぽかんと口を開けながら、演奏のバイブスにただただ心を震わせておりました。
第一楽章の終わりに拍手しそうになったのは、ここだけの話。

第二楽章、繊細な演奏になってもパワーダウンはせず、音の輪郭がまろやかになる佐渡さんと新日本フィル、角野さんが紡ぐ音色に、ほうっと聴き惚れます。

この曲ではオケがすっと退いて、角野さんが一人になる、ソロ演奏の場面がたびたびあるのですが、そこでも音の豊かさが減衰したような印象はまったくなく、十本の指から紡がれる音の一つ一つが色鮮やか。特にこの楽章では特にそれが際立っていて、目の前に何やら映像まで見えて来ました。

森の中を散歩しているイメージ。
冒頭では美しい鳥の鳴き声が響く早朝の森、そこからリスが出て来たり、色んな動物に出逢う私。
ぱっと視界が開けた所は絶景で、景色の美しさに見惚れる場面も。

後半の盛り上がる所では、角野さんの繊細な音色が水飛沫の一粒一粒かの如き美しさで、スローモーションできらきらと輝く水飛沫に日の光が辺り、虹が出来たのを見たような、そんな感覚になりました。

ホール中にマイナスイオンが漂ってそうだと感じるような、空気感まで変える演奏が印象的でした。

第三楽章、クライマックスに向けてどんどん盛り上がる演奏。
膨れ上がるエネルギー、客席の熱気も合わさって、わくわくが止まらない。
ここまで来ると、冒頭で圧倒されていたオケの音色がすごく心地よくなって来て、音圧に全身の細胞が喜んでいる、と思いました。

クライマックスのピアノが低音から高音まで一気に弾く所、予習時に絶対ここは素敵だろうなぁと思っていましたが、生でバシッと決めた瞬間の格好良さと言ったら、もう……!

ダイナミクスが素晴らしい佐渡さん、新日本フィル、角野さんが生み出すサウンドとこの楽章の相性は抜群。

ジェットコースターのように、音楽の波に乗りながら、クライマックスへ一気に駆け抜けたこのひと時は最高に気持ち良かったです。

こんぺい糖の踊り

最後の一音が消え切らないうちに、地面から湧き上がって来るような大歓声と拍手がホールを包み込みました。
アンコールに角野さんが選曲したのはこんぺい糖の踊り。
作曲がコンチェルトと同じチャイコフスキー繋がりだから選んだのかも。

冷めない熱気の余韻を纏った、きらきらした音色から始まり、だんだんと彼のお人柄を表すかのような剽軽な音へ。
リズムを刻みつつ演奏する仕草はとても楽しそう。
中間部は、ラヴェルの水の戯れや先程演奏したコンチェルトの第二楽章を思わせるような、繊細かつ美しい音色で、ほうっと聴き惚れました。

交響曲 第5番

事前に配信音源で予習した時は冒頭に漂う雰囲気の暗さが好きになれず、取っ付きづらさを覚えたこの曲。
……でも、そこをもうちょっと我慢して聴き続けていたら、めちゃくちゃ格好良いんですよ!
サブスク全盛時代にあって、イントロが削られまくってる短い曲に日頃親しんでいる身としては、少々忍耐が必要ではありましたが、いぶし銀のように素敵な曲なのです。

そして、生と配信音源だとやはり印象は異なるもので、佐渡さんと新日本フィルの個性もあってか、第一楽章はあまり深刻になりすぎない、聴きやすい演奏で、すんなりと曲の世界に入っていけました。

落ち込んでいた主人公が希望の光を見つけて立ち上がり、勇ましく前進して行くようなイメージが浮かびます。

受けた印象を例えるなら、大河ドラマや戦記物、SF大作映画を見ている時のそれに近いでしょうか。
生み出される厚みのある音の響きがこれまで聴いたことのない迫力なので、もの凄い大きなホールで鑑賞しているような感覚になりました。
身体の細胞一つ一つがぐわんぐわん揺らされているような感じ。
音に詰まっているエネルギーがものすごいのです。

あと明確なイメージが浮かんだのは第四楽章。
冒頭では、主人公と周辺の人物が美しい夕焼けを見ながら黄昏ている感じ。
夕陽を見つめながら、肚を決めて最終決戦へ。

クライマックスはさながら、スターウォーズの4作目で、戦闘機でデス・スター破壊作戦に参加するルークのような気分になりました。
最後は見事に大団円へ!

終わるや否や、ブラボーの声が上がると共に、湧き上がるような拍手が。
本当に大作映画一本観たような満足感。
最高でした!

しかし、このハイカロリーなニ曲を、これから全国各地を巡って演奏して行くの、とんでもないなと改めて思います。
無事に皆さんが完走されるよう、お祈りしています。

「弦楽セレナード」より ワルツ

オケアンコール曲。こちらも作曲はチャイコフスキー。
クラシックもまだまだ素人なので、聴いている時は何の曲かわからなかったのですが、宮廷でみんなダンスを踊っているイメージが浮かんでいました。
後でタイトルを知って、意外と繋がりがあるものを連想していたのだなと、少し驚いてみたり。

ワルツ、と銘打たれている通り、聴いていると踊り出したくなるような、華やかで軽やかな曲で、生の音色には皆さんの熱気が乗っかってか、温かみを感じました。
短い曲でしたが、とてもほっこりした気分で帰途につけました。

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