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4人目のレンガ職人の話

久しぶりのnoteです。

これは以前勤めていた会社で上司から言われたことです。
道を歩いているとレンガを積んでいる職人に出会いました。

「何をしているのですか?」と尋ねると

「見ればわかるでしょ。レンガを積んでいるのです」と答えました。

少し歩くと別の職人がまたレンガを積んでいました

「何をしているのですか?」と尋ねると

「壁を作っているのです」と答えました。

もう少し歩くとさらにもう一人レンガを積んでいる職人がいました。

「何をしているのですか?」と尋ねるとその職人は誇らしげに顔を上げて
「よく聞いてくれました。私は王様のお城を作っているんです」


と答えました。


その上司は3人の職人のうち3人目の職人の様な仕事の仕方をし、自分たちが発注する人もそういう職人に仕事を依頼する様にしろと教えてくれました。

いい話だなあってずっと肝に命じて私も「王様のお城」を作るという視点を持つようにしてきたつもりです。


実はつい最近現場である職人がちょっと歪んでブロックを積んでしまったことがあったのです。私は現場から帰ったあとだったので、出先から帰ったお客様がブロックが歪んでる(家と平行でない)ことに気づかれて、私にご連絡をくださる、というあってはいけない失敗がありました。
測って見ると1.2mの間に2cmもづれています!
現地で家と平行に積んでください! って確認した直後の出来事でした。
あまりのありえない出来事に翌朝職人がくるより早く現場に行って 待っていて直してもらう様に指示したけれど、色々言い訳をして一番下から積み直してくれません。
監督が来て指示して一応「わかった」と答えましたが、目を話すと一番下は歪んだままにしてそこから上だけ直そうとしました。

構造上は大した問題でもないし、上に塗り壁をすればわからなくなるかもしれません。でも、お客さんが見て嫌だと言っているのにあまりにも低レベルの話で。恥ずかしくなりました。

実はその現場は二人の職人がペアでずっと仕事をしていたのですが、もう片方の職人が体調を壊して2日間休み、ちょうどその日にやった仕事が歪んでしまい、翌日ももう一人は来られなくて。その日の出来事でした。

結局監督とお客さんが監視する中やっとまともに(家と平行に)ブロック1段目から積み終わったのですが。どうしても後味が悪く。。

その夜お客様から「休んでいた職人さんが入れない日は作業を取りやめてもらえませんか」と言われてしまいました。
見ていると丁寧さが全く違うと素人の方にもわかってしまうくらいなのです。

そして休みが明け、丁寧な職人さんが復活しました。彼は最初にお客さんの前で、お客さんが気にされそうなところを全部チェックしてくれました。
もちろん問題はなかったのですが。

人が見ていないと手を抜こうとする職人と、一番気になるところからチェックする職人。それは仕事に対する姿勢の大きな違いで、経験や技術を超えたものだし、ひいてはそれが技術にも影響するのだと思いました。

この二人の職人を今日はずっと見ていて冒頭のレンガを積む3人の職人の話を20年ぶりくらいに思い出しました。

歪んで積んで、手を抜いて直そうとした職人は「レンガを積んでいる」としか見ていない人。
一番問題になりそうなところからチェックして職場復帰したもう一人の職人は「お城を作っている」と言うレンガ職人に当たるのだと思います。


そして…… 私はどう思って仕事をしているのだろうか。と我が身を振り返って見ました。私は王様と王様の家族の「過ごす時間」「暮らし」の一部を作っている。できるものは門だったり、庭だったりしますが大事なのはその「場所」そのものではなく、そこでどんな時間が流れるかを考えてデザインすることなのだと思うのです。

上に書いたお客様の現場はだいぶ骨格ができて来ました。
再び、窓のところから眺め、外に出て眺めをお客様と一緒にしながら、そこに置くかもしれない家具や遊具をイメージしながら、埋め込む照明の位置などを最終決定していきました。

ビニールプールで騒ぐ子供達の声、水しぶき、

ビール片手にそれを眺めるご夫婦。
ご主人が得意のパスタを作ってダイニングの掃き出し窓からでてくる様子。
水遊びもそこそこにカルボナーラに食らいつく元気な子供達。

そんな様子がまるでバーチャルリアリティの様に一瞬その場所に浮かび上がりました。

「お城を作る」3人目のレンガ職人だけでは飽き足らず、4人目の職人になりたいし、今でもなっているのならもっと引き出しを増やしたいって思いました。

 一人の職人がしでかした失敗から、今回はいろんなことを考えたり、職人の本性をみるきっかけにもなり遠回りはしましたが、広く見つめ直すことができてよかったです。
とても温かく接してくださったお客様に感謝すると共に、今回新たになった自分のスタンスをもっと打ち出して行こうって決意を硬くしました。

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