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光の柔らかさについて

以前このブログでも紹介した「建築のエッセンス」という本の中で建築家の齋藤 裕さんは光について次のように書いています。

光こそ建築の全てというと大上段に聞こえますが、そのぐらいに空間の存在を確かにするものだと考えています。プロポーションや仕上げの素材を生かすも殺すも、光のあり方次第。建築のエレメントを組み立てるというよりも、むしろ光と影を組み立てるというアプローチの方が、空間を捉える上で、より核心に近い考え方ができるように思います。(「建築のエッセンス」齋藤 裕 著より)

これはもちろん私の仕事、門と庭も建築の類するものなので、全く同じ意見です。

例えば門構えの場合、北側の道路に接している家の門構えは北側の光になるので、柔らかい光となり陰影や素材の凹凸などがふんわりと優しい表情になります。逆に南側の道路に接している家の門構えは明るいですが、全てがくっきりはっきり、影ができてキツイ印象になります。
白い壁などは夏には目に痛いくらいの印象なので、ワントーン落とした色にすると良いでしょう。北側を向いた門構えと南側を向いた門構えの光の違い、街を歩くとき気にかけて見てください。きっと感じることがあると思います。

また、多くの家が南側にお庭を広く取ろうと建物を北側に寄せて建てますが、実はこれも少し考えて見ると必ずしも南側の庭がいいとは限らないことに気づきます。南側の庭は太陽の光が高木に当たって、庭の床面にキツイ影ができます。木陰のコントラストがきつくなります。向かいの家の影も庭に落ちてきます。南の庭は明るくてよいとは限らないのです。夏場などはギラギラと眩しすぎる庭となり兼ねません。
さらに、南側に太陽が当たり、家から見ると木の裏側(光を浴びていない側)を見るようになるのは実は南庭の特徴なのです。勢いのある木をみたいなら、北側から見ると良いのです。

真北は無理でも多少でも東か西に触れた家で北側に庭を作った場合。確かに家に近い部分には影ができますが、それ以外は床や壁などにバウンドした光となり、柔らかい印象になるのです。北側のお庭では床や壁をできるだけ明るい白っぽい素材にすると反射光が明るく空間を包み込んでくれます。

ちょっと冒険かもしれませんが、必ずしも「南側に広い庭」を取ることだけが正解ではないことに気づくと、家のレイアウトの段階から様々な可能性が出てきます。

光について考えるときに光源からの直接光(太陽の光)ばかり見ていると文字通り、目が眩んで、見えなくなります。もうちょっと進んで、反射光について考えると、どんな色の壁をどの位置に、床はどんな色に……?と考えるようになると思います。

太陽の光が空間に与える印象を実感するには、できるだけたくさん写真を撮るのがいいと思います。写真を撮ると目で見たときには見えなかった「光と影」が映ります。光と影という視点で写真を見ているといろんなことが見えてくると思います。
こうやって光と影を意識して写真を撮り、撮りまくると、光と影が空間を作っているって感じがわかってきます。そしてそうなると、絵を描くことも上手くなって行きます。
私は趣味で写真を撮るのですが、10年ほど前から光と影を意識してファインダーを覗き、枚数を半端なく撮っていたら、それまで色を塗るとめちゃくちゃになっていた絵がだんだん人に見せられるようになってきました。

例えば次の犬の絵はポカポカよりももうちょっと強い日差しだとイメージしています。ササーッて光のラインが入っています。

次の小鳥の絵の時は自分ではあまり意識しなかったのですが、穏やかな春の日差しを感じると言われたことがあります。写真の技術でいう「光ボケ」を絵で表現しているのですが、穏やかな春の日に河原を散歩している小鳥さんって印象なのかなって思います。

日常で光を意識すること、光を意識して写真を撮ること、光を意識して絵を描くこと、これらが三つ巴で連鎖しあって、光に関する感度がアップしていくように思うのです。


光に関する感度が上がると、門と庭の設計もグレードアップすると信じています。

ちょっと今日は内容が広がり過ぎてしまいましたが、光の柔らかさについての駄文お許しを。

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