【短期集中連載第4回】落ちないための二回試験対策 検察② 供述の信用性ほか

 引き続き怒涛の各論ラッシュです。今回は供述の信用性以下を取り上げます。

1 書き方解説② 供述の信用性

 事実認定の際に誰かの供述を引用して認定した場合には,基本的に供述の信用性の検討作業が必要です。信用性検討については『検察終局処分起案の考え方』や『刑事事実認定ガイド』などに詳しい説明があり,全要素検討しなければならないのかと思いがちですが,講評を見ている限り,検察起案においてはポイントになる要素2~3点を中心に論じれば充分と考えられます。

 供述の信用性に関しては,以下のnote記事が参考になります。かなり詳細に説明が施されているので,こっち読んだ方がいいかもしれないです。

  検察起案の供述の信用性判断は,A供述や共犯者供述は事案によりますが,それ以外の被害者を含む第三者の供述は信用できる方向で書くことになります。事実認定に使っている以上は信用できるものじゃないと困るわけなので。結論ありきの検討になるため,説明しやすい材料を引っ張ってきてササっと構成し,さっさと次に流したい部分です。

⑴ 供述概要

 まずはどの供述を証拠として引用したのかを示します。事実認定で使った部分を再掲すれば基本的には足ります。同じことの繰り返しであるため,冗長になりすぎないよう,コンパクトに提示するようにしたいところ。

⑵ 信用性検討

 次に⑴で提示した供述の信用性を検討していきます。信用性の判断については,事実認定に使った部分のみ(=供述概要)を対象に信用できるかどうかを判断するパターンと,使っていない部分も含め供述全体が信用できるか(その人自体が信用できるかどうかというイメージ)判断するパターンがあるようですが,基本的には事実認定に誤りがないことが示されれば充分であるため,前者で行うのが無難であるように思います。

 信用性判断で頻繁に言及するであろう要素は❶他の客観的証拠との整合,❷知覚・記憶の条件,❸利害関係(虚偽供述の動機),❹供述内容・経過・態度です。めちゃくちゃ時間がない時には❹だけでも書いて形だけ整えるという戦略も考えられますが,基本的には❶❷のどちらかと❸は最低限書きたいというイメージです。裁判例では❹だけ挙げて信用できると端的に判示するものもありますが,起案としては❶~❸に関連するヒントが記録中に散りばめられていることが多いため,なるべく拾ってあげると不合格が遠のきます。

❶ 他の客観的証拠との整合

 最も多く使うであろう要素です。あまり難しく考えずに,他の捜査報告書や供述などと照らし合わせたときに矛盾なく説明できるかどうかを説明すれば足ります。

❷ 知覚・記憶の条件

 深夜の目撃供述であったり,捜査官が明るさの測定をした証拠があるなどすれば,視認条件に問題がなかったかを疑いましょう。
 主な着眼点は,時間帯,明るさ,供述者が意識的に見ていたかどうか,などです。
 検討する際には,事実→評価→結論という流れになるように意識すると良いです。深夜2時(事実)→暗くて見えにくい(評価)→しかし明るさは○○ルクス(事実)→〇m先の犯人の顔を見ることは十分可能(評価)→視認条件に問題はない(結論),など。刑法刑訴のあてはめみたいな感じですね。

❸ 利害関係(虚偽供述の動機)

 供述者と犯人の利害関係にも着目しましょう。ここはあまり長く書くというよりは一言さらっと触れて簡単に結論づけることが多い気がします。説明の際にはなるべく経験則に沿って理由付けをしてあげましょう。
(例)供述者はAの勤務先の上司であり,事件と無関係の第三者があえて虚偽の供述をすることは少ないため,虚偽供述のおそれもない。 

❹ 供述内容・経過・態度

 ここも基本的には一言触れておしまいという印象。
 もっとも,A供述が変遷している場合には,変遷後の供述につき,変遷理由が合理的であるかどうか,変遷後の供述が自然かつ合理的といえるかどうかは掘り下げて検討することになります。

⑶ 注意点

 供述が細切れで複数ある場合には,基本的にすべての供述につき何かしらの要素を根拠に信用できることを説明する必要があります。
 また,A供述が変遷している場合には,変遷前,変遷後それぞれ供述概要と信用性検討を別個に立てて検討します。
 同一人物の供述でも,犯人性に用いる部分と犯罪の成否等に用いる部分がある場合には,それぞれ犯人性のパート,犯罪の成否等のパートで別途信用性検討が必要です。両者にまたがる供述があれば片方で検討すれば大丈夫だと思います。
 また,『検察終局処分起案の考え方』ではA供述の信用性の部分でかなり長めに供述を引用していますが,実際の起案ではたくさん引用しても,長すぎると言われるだけなので,なるべくコンパクトにまとめて記載するようにした方が安全です。

2 書き方解説③ 間接事実の総合考慮

 間接事実の認定と供述の信用性判断(と直接証拠があればそれも)の検討が終わったら,認定した間接事実を総合して,Aが犯人であるという結論を導きます。
 ここでは『検察終局処分起案の考え方』にもあるように,Aが犯人でないと仮定した場合に,各間接事実で検討した反対仮説がすべて同時に起こり得る可能性がほとんどないということを指摘し,間接事実のみでもAが犯人である結論付けることができると説明すれば足ります。これに加えて,例えば間接事実を組み合わせることによって更に推認力が強まるような事情があればそれを指摘します。
 そのうえで,Aの自白があるのであれば,A供述を踏まえればいっそうAが犯人である,といって終了です。
 ここらへんも正直結論ありきであるため,自分なりに決まり文句を用意しておいて,さらっと書いて次に行くのが効率的ではないかと。

3 書き方解説④ 犯罪の成否等

 犯人性の検討が終われば次に犯罪の成否等に入っていきます。ここの論述の流れは司法試験刑法とほぼ同じといっていいと思います。書くこと自体はそこまで難しくないのだと思いますが,犯人性起案で時間をかけすぎるとしんどくなります。

⑴ 基本スタイル

 基本的な論述の枠組みとしては,
・検討すべき要件を示す
・要件の意義(定義)を示す
・要件に関連する事実を認定する
・事実を評価して要件にあてはめる
これを要件や要素ごとに行うことになります。重要そう(事実が多そう)な要件については上記のように段階を踏んで検討することになりますが,証拠上明らかに認められるものなど,あまり厚くならないことが見込まれる要件については,定義→事実認定→評価の流れを端的に示せば足りるとのお達しです。

⑵ 検討順序

 検討の流れとしては,客観的構成要件→共犯→主観的構成要件→違法性阻却事由など→罪数(一罪なら省略可)であり,刑法と大差ありません。
 共犯については,客観的構成要件の検討が終わってから,共謀(意思連絡+正犯意思)及び共謀に基づく実行のあてはめを行うべきとされているようであるので,この位置で検討するようにしてください。ハーフ起案で犯人性を問わずに犯罪の成否等のみを問う場合には,たいてい被疑者が複数いて共犯の成否の検討が不可欠になるため,一応検討手順を準備しておいた方がいい気がします。

⑶ その他の犯罪の成否

 ここでは公訴事実には取り上げなかったが,Aにつき成否が問題となる犯罪を取り上げて,それが成立しない理由について軽く検討します。いざとなったら書かなくても別にいいかな,という気はしますが。上位に行きたいのであればおそらく必須なのではないかと。

4 書き方解説⑤ 情状関係

 情状関係についてはそもそも起案要領の指示で検討から除外されるケースも多いですが,起案要領で書かなくていいと言われない限りは検討を忘れないようにしましょう。
 方向性としては,Aの量刑を決めるにあたって不利な事情と有利な事情を箇条書きで列挙し,それっぽい求刑意見を書けばひとまず十分ではないかと。視点としては,
【犯情】
・行為態様の悪質さ
・犯行の計画性
・発生した結果の程度
・犯行動機
【一般情状】
・前科
・反省
・監督者
などからピックアップすればよいのではないかと。 

5 まとめ

 以上が最低限頭に入れておきたい(と筆者が思っている)起案の枠組みです。これさえしっかり入れておけば刑事系科目はだいたい何とかなるんじゃないかと思います。第2回で説明した「② 科目ごとの起案のフォーマットやルールに沿わないもの」の検察における対策が上記です。
 次回は「③ 試験当日の処理スタイル(時間配分ミス・記録の検討不足や誤解・起案要領の逸脱等)に問題がある(本来の実力が発揮できていない)もの」への対応策について触れていきたいと思います(何をどこまでかくか決め切れていないですが…)。

(続)

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