見出し画像

夢から覚めて

フロアに流れていた、誰が歌っているかも分からない音楽が止まって、幕が開く。期待に燃え上がるフロアと、スポットライトに照らされる蒼山さん。
普段のライブなら、「ああ、やっと始まる」って思えるけど、今回はそうじゃなかった。
ああ、始まってしまうんだな。解散の二文字が、足音高く近づいてくるのが自分でもわかった。
哀愁漂う「インストゥルメンタル」のイントロと、今にも消えてしまいそうな声が聞こえてきて、ねごとのライブツアー千秋楽、「お口ぽかーん!LAST TOUR~」@Zepp Divercity Tokyoは幕を明けた。

***

ねごとに出会ったのは本当に最近のことだった。
およそ一年前、『夜の街』という作品を投稿した時、Twitterで「ねごとのカロンかと思いました」という感想を頂いて。
初めて聞いた時から、その世界に圧倒されて、思ったことは「あ、このバンド、好きだな」ってだけだった。

ねごとの解散がリツイートで回ってきたのは、その2ヶ月後のこと。
つい最近聞き始めたばかりなのに、という寂しさ。最後のライブツアーが行われること、そしてベストアルバムが発売されること。ねごとを見つけてから2ヶ月、まだその姿を目に焼き付ける機会はあると思うと、すこし嬉しい気持ちにもなった。
この機会しか無いんだなと思って、ライブツアーのWeb先行に応募して、当選したときの高まりは、今でも忘れられない。

***

結成から12年間、歩んできた道のりが、歩んできた世界が詰め込まれたような、そんな世界だった。
ステージの上には、なにか別の宇宙が存在しているみたいで、彼女たちはどこか違う世界からやってきた妖精のようで、ずっと目を奪われていた。
蒼山さんが手をふったり、ステージを舞うたびにきらきらと輝く星屑が溢れる幻覚が見えたし、藤咲さん、澤村さんのノリノリなパフォーマンスは、見ているこっちまで楽しくなった。沙田さん、普通の演奏のときはおとなしいなと思っていたのですが、前に出てきたときのギターソロの迫力たるや。

本当に今日で終わりかと疑うほど、笑顔で、楽しくて、開演前聞こえてきた解散の足音は気づいたらどこか遠くで。それでも、閉幕の時間は、近づいてくる。

「ねごとをみつけてくれてありがとう」
そう言った、蒼山さんの姿が、忘れられない。

おそらく、再結成をすることはなくて、これから公の場で、4人を見ることはもうない。それでも、手元に音楽は残っていて、何度聞いても変わらないその音源が、4人の姿をいつも思い出させてくれるんだろうと、ふと、感じる。
たとえ夢から覚めても、頭と心の片隅に、4人の面影を見る。

回すミラーボール
やまないビート
わたしたちだけのミュージック

あなたを忘れないで
飛びたい

この記事が参加している募集

お読みいただきありがとうございました。頂いたサポートは人生経験を豊かにするために使いたいです。