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村谷由香里
2017年9月3日 21:18
ぼんやりテレビを見ながら卒論用の論文を訳していたら、こつこつと部屋の窓を叩く音が聞こえた。 眼鏡をかけ直してそちらを見るとカラスがいる。カラスは虹色がかった綺麗な黒い羽を広げて、わたしの方を見て窓をつついている。「今日はカラスなのね」 わたしが窓を開けてやると、「今日はカラスだよ」と鸚鵡返しのように彼は言った。カラスのくせに。わたしは少し笑って、テーブルの上の論文を片付けた。 彼はわた