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2017年7月の記事一覧
【短編小説】錆色の虚構
せめてこれが、真っ赤な嘘ならば良かった。
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開演のブザーが鳴り、舞台袖から沙月が現れる。彼女は客席に向かって一礼、前口上を述べる。
「本日は誠華高校演劇部第二十五回公演『錆色の虚構』にお越し下さり、誠にありがとうございます。開演に先立ちまして、お客様にいくつかお願いがございます。会場内での許可のない撮影はご遠慮ください。携帯電話は音のならないよう、電源を切るかマナーモードに設定
【短編小説】コインランドリーで待ち合わせ
「俺コインランドリー好きなんだよね」
ぽつりと言ったタナベに、隣に座ったケシは眉間の皺を解かないまま、
「知ってます」
と面倒くさそうに応えた。
「コインランドリーの写真ばっかり撮ってた」
「それもこの前聞きました。物好きですね」
横並びに一列、ずらっと椅子が並んでいる。その真ん中あたりに、ケシとタナベは並んで座っていた。
「お前は好きなの」
「好きでも嫌いでもないですよ、こんな場所」
ケ