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いろんな狛犬大集合!

狛犬、好きですか?

まあ、嫌いな人はあんまりいないと思うけど、そんなに注目していない人が多いのではないでしょうか。
だってまあ、どの狛犬もだいたい一緒だしね…

そんなことありません!!(怒)


世の中には多種多様な狛犬がいます。
びっくりするような狛犬もいますし、一見普通の狛犬もよく観察すると個性があります。

この記事では私が出会った特徴的な狛犬を紹介します。
少しでも狛犬の魅力が伝われば嬉しいです。

ふつうの狛犬

変わった狛犬の前に、一番よくあるタイプを見てみましょう。

あーよく見るね

狛犬界隈(?)では、「昭和」「岡崎型」などと呼ばれています。
愛知県岡崎市発祥で昭和期に量産されて全国の神社に設置されたことから、このように呼ばれています。
非常に洗練された良いデザインなのですが、たくさんあって見飽きてしまうので、あまりありがたがられていません。

それでは、次から変わり種を見ていきましょう。

陶器の狛犬

つやっつやだね

これは備前焼の狛犬です。
石と違って表面がツヤツヤで、毛並みの良い犬のようですね。

つかまってるね…

こちらは檻に入れられてしまっています。
陶器だから割れないように保護されているのでしょうけど、なんかかわいそうですね。

さて、続いて

!?

!?

なんですか、これは…

だれ…

左側はこんな顔。
何と言っていいかわかりませんが、やばい見た目をしています。
こちらは信楽焼でできています。


陶器は曲面の表現が豊かなのが特徴ですね。
滑らかで優雅な肉付きや、うねうねと曲がりくねった毛並みなど、土の造形ならではの味わいがあります。

青銅の狛犬

銅像っぽい

金属の狛犬もわりと珍しいです。
由緒ある有名な神社にはあることがありますが、そこらへんの神社で金属製の狛犬を見かけることはほとんどありません。

勝手な推測ですが、かつては金属製の狛犬は今よりも多くあったけれど、昭和のある時期になくなってしまった、もしくは石の狛犬に置き換えられたのではないかと思っています。

なぜ金属製の狛犬が減ってしまったのか…その理由はのちほど。

左右の狛犬

清水寺の狛犬と観光客

これは、清水寺の狛犬です。
どこが普通と違うかわかるでしょうか?
よく見ると、左右両方の狛犬が口を開けています。

普通、狛犬は向かって右が口を開け、左が口を閉じた、"阿吽"になっていますよね。
この清水寺の狛犬は左右とも口を開いた"阿阿"なのです。

狛犬の原型は、中国の獅子像と言われています。
中国の獅子は、左右とも口を開けた"阿阿"型で、左右対称の姿をしています。
これが日本に伝来して、どういう経緯か、左右非対称の"阿吽"に変化したようです。

ちなみに、狛犬狛犬と言っていますが、実は左側の口を閉じている方が狛犬で、右の口を開けているのは狛犬ではなく、獅子です。
よく見ると左の狛犬には角が生えていて、右の獅子には角がありません。
と言っても、すべての神社の狛犬が正確にそうなっているわけではなく、両方角がなかったり割と曖昧です。
今度、近所の神社に狛犬がいたら左右を見比べてみてください。

おまけで、私が上海で見つけた獅子像を貼っておきます。
中国の獅子も愛嬌があって良いですね。

中国の獅子
獅子と中国のおばちゃん


強そうな狛犬

っょぃ

見るからに強そうな狛犬です。
私は、この手の狛犬を見ると、「昭和12年頃に出来たものかな?」と予想します。

台座の裏を覗くと…

昭和14年にできたらしい

この時期に何があったかと言うと、戦争です。
昭和12年から日中戦争、昭和14年から第二次世界大戦が始まります。
この狛犬は、その戦禍の最中に作られたものです。
国民の士気を高め、神の力で国を護る目的で奉納されたのでしょう。大きめの神社や護国神社にはこの時期に作られた狛犬がいることがあります。
この時期に作られた狛犬は、非常に険しい顔つきをしているので、見ればすぐにそれと分かります。

顔つきの印象として、江戸時代は朗らか、明治はひょうきん、大正はおしゃれ、戦時下は険しい、戦後は実直、というようなイメージがあり、雰囲気でなんとなく作られた時代を察することができます。

さて、戦争関連でもう一つ紹介します。

見た目は普通の狛犬

彫像ではなく塑像ですが、見た目はわりと普通の狛犬です。
気になったのは台座の銘板です。

この狛犬ができた経緯が刻まれています

大東亜の戦局熾烈を極め邦家安危の岐るる際報国赤誠巳み難く昭和十九年十月金銅狛犬一對供出せるも今爾講和記念として有志相謀りて彫塑成り茲に再威容を仰いで景仰奉賽の誠を致せるを慶ぶ
昭和廿七年四月再建

現代語にするとこんな感じでしょうか。
教養がないので間違っていたらすみません。

大東亜戦争の戦局が熾烈を極め、国家存亡の危機に際し、愛国精神を抑えがたく、昭和19年10月に金銅の狛犬1対を国に差し出したが、この度の講和記念として有志が協力して彫塑像がここに再び威容を仰ぎ、徳を敬い参拝する真心を尽くせることをめでたく思う。
昭和27年4月再建

昭和19年、もともとここにあった金銅の狛犬を国に差し出した旨が書かれています。
今ある塑像の狛犬ができたのは昭和27年のようです。

金属類回収令という勅令が昭和18年に出されており、これに従って金属製の狛犬も供出されたということでしょう。

金属類回収令(きんぞくるいかいしゅうれい、昭和18年8月12日勅令第667号)は日中戦争から太平洋戦争にかけて戦局の激化と物資(武器生産に必要な金属資源)の不足を補うため、官民所有の金属類回収を行う目的で制定された日本の勅令。

Wikipedia

そうして、この神社には狛犬がなくなってしまいましたが、昭和27年のサンフランシスコ講和条約締結を記念して、塑像の狛犬を改めて作ったようです。

想像ですが、恐らく似たようなことは日本各地であったのではないかと思います。
これが、金属製の狛犬が少ない理由でした。

隆々

さて最後にこちらの狛犬。

普通の狛犬っぽい

見た感じ普通の狛犬ですね。
どこが変わっているでしょうか。

暗くて見にくいですが、足の間をよく見てください。

足の間をよく見ると…

わぉ、ご立派



さて、いかがだったでしょうか。
狛犬も様々な個性があることが分かって頂けたでしょうか。
今回ご紹介したのは私がたまたま見つけたものだけですので、狛犬を追い求めて全国を渡り歩いている狛犬ハンター(?)の人はもっと面白い狛犬を知っているかもしれません。
ネットで探すと色々な面白い狛犬が見つかりますよ。

でも狛犬の一番の楽しみ方は、身近にある神社の狛犬をよく観察してみることだと思います。
これはいつ頃どんな人がどんな思いで作ったものか、想像を巡らすと、狛犬の造形にもなんだか人々の思いが現れているような気がしてきます。

みなさんも狛犬を見かけたら、ちょっといつもより注意深く観察してみてください。
何か面白い発見があるかもしれません。
それでは。

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