海と生きた女

島に女がいた

波がくれば海に遊び
空が呼べば風と歌う

女にはこだわりがあった

人として
女として
食の作り手として

ある日
旅人が訪れる

この島では珍しくはない

彼女のつくるパンを求めて
本土から訪れた

彼は、パンの味に感嘆し
それ以上に

彼女の心が紡ぐ
言葉を味わう

その心に
自らを
歌を
感じ

その心に
自らの人生を重ねた

旅人は三日の後に
また旅に出ると言う

女は、この旅人と時を重ねる事はもう無いだろうと、、

翌朝、女は夢を見ていた

海に浮かぶ自分
波に漂う男

その声は、優しく歌う

触れる手の温もりは
あたる陽と
潮の香りで
心に言葉を刻んでいく

「あなたは、誰?」

「僕は君さ」


目覚めた女の頬には
一筋の涙が

朝の光は
その頬に虹をつくる





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