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ウクライナ語文法シリーズその26:基数詞と名詞との組み合わせ

数詞の後ろに名詞を置いて、「~個の~」や「~人の~」などと表現したいとき、英語であれば、「1」の後には単数形、「2」以上の数詞の後には複数形を置けば良いだけです。なんと簡単なことでしょう。
ウクライナ語でも「2」以上の数詞の後には複数主格形を置けばよいだけ、であったならば、何と素晴らしかったことでしょう。残念ながらそんなうまい話はありません。


数詞を名詞と組み合わせるときは、前に付く数字が①「1」のとき、②「2」「3」「4」のとき、③「5」以上のとき、の3つのパターンがあります。 

①「1」

「1」については、有難いことに単純に単数形の名詞を置けばよいだけです。ただし、оди́н は性と数によって変化するのに注意しましょう。格変化形も形容詞のように一致させればよいだけです。

оди́н хло́пець – одного́ хло́пця, одному́ хло́пцеві
одна́ ді́вчина – одно́ї ді́вчини, одні́й ді́вчині

②「2」「3」「4」

「2」「3」「4」が前に付くとき、主格及び無生の対格の場合は、次に来る名詞は特有の形を取ります。
具体的には、複数主格と同じ形で、アクセントは単数属格と同じ位置に置かれる、という規則で作られます。

このため、特に中性名詞と女性名詞の場合は、単数属格と同じ形になります
以下の例では単数主格、単数属格、複数主格の形も示していますので、見比べてみてください。

два села́ 「2つの村」 
← 単数主格:село́ 単数属格:села́ 複数主格:се́ла

три мі́ста 「3つの街」 
← 単数主格:мі́сто 単数属格:мі́ста 複数主格:міста́

дві голови́ 「2つの頭」 
← 単数主格:голова́ 単数属格:голови́ 複数主格:го́лови

чоти́ри кни́жки 「4冊の本」 
← 単数主格:кни́жка 単数属格:кни́жки 複数主格:книжки́

なので、中性名詞と女性名詞に関しては、「2」「3」「4」の後は単数属格形になると単純化して覚えても構いません。

違いが現れやすいのは男性名詞の場合です。以下の例のとおり、単数属格ではなく複数主格の形で、アクセントのみ単数属格と同じ位置に来ていることが分かるかと思います。

два бра́ти 「2人の兄弟」 
← 単数主格:брат 単数属格:бра́та 複数主格:брати́

два ро́ки 「2年」 
← 単数主格:рік 単数属格:ро́ку 複数主格:ро́ки́

три дні 「3日」 
← 単数主格:день 単数属格:дня 複数主格:дні

чоти́ри буди́нки 「4つの建物」 
← 単数主格:буди́нок 単数属格:буди́нку 複数主格:буди́нки

男性名詞の例外として、名詞 чолові́к 「男、夫」と друг 「友人」、「~人」などを表す -нин がつく名詞が挙げられます。これらの名詞の場合は、「2」「3」「4」が前に付いたとき、単数属格形になります

два чолові́ка 「2人の男」
чоти́ри дру́га 「4人の友人」
два росія́нина 「2人のロシア人」
три кия́нина 「3人のキーウ人」 

なお、形と意味が似ていても -нин ではなく -ин がついている名詞は規則的な形となるので注意です

два грузи́ни 「2人のジョージア(グルジア)人」
три осети́ни 「3人のオセット人」

また、中性名詞のうち隠れた子音を持つものについても、「2」「3」「4」が前に付いたとき、単数属格形になります。

два і́мені 「2つの名前」
три теля́ти 「3頭の子牛」


非常にややこしいですね……特に男性名詞について、色々な名詞を並べて、それぞれ два を付けた形を作り、何度も声に出して読み上げてみてください。そうすればなんとなく感覚が身についてくるかもしれません。

主格(及び無生の対格)以外の格では、後ろに付く名詞は単純に複数の格変化形となります。
例として、два бра́ти の例を見ておきましょう。


なお、形容詞の前に2以上の数字が置かれるとき、形容詞は主格及び無生の対格で複数主格または複数属格形の形となります。
そのため、「2人の若い兄弟」は два молоді́ бра́ти  または два молоди́х бра́ти となります。それ以外の格では、形容詞は複数形の格変化形を取ります。:двом молоди́м брата́м など。

また、前回触れたように、ти́сяча 「1000」や мільйо́н 「100万」などは名詞としての性質が強いため、「2000」「3000」「4000」や「200万」「300万」「400万」などを表すときはこの規則に従った形を取ります。

дві/три/чоти́ри ти́сячи 「2000/3000/4000」
два/три/чоти́ри мільйо́ни 「200万/300万/400万」

③「5」以上

最後に、「5」以上の数詞が前に付くときのパターンです。こちらは慣れるのは大変なのですが、説明は簡単です。後ろに付く名詞は複数属格形となります。形容詞が付く場合も複数属格形です。

п’ять браті́в 「5人の兄弟」
де́сять ро́кі́в 「10年」
трина́дцять днів 「13日」
сто буди́нків 「100の建物」
три́дцять сіл 「30の村々」
со́рок міст 「40の街」
ві́сім голі́в 「8つの頭」
п’ятсо́т книжо́к 「500冊の本」 

「2」「3」「4」のときと同様、主格と無生の対格以外の格変化形では、格に応じた複数形を取ります:десяти́ брата́м, ста міста́м, п’ятидесятьома́ книжка́ми… 

もちろん ти́сяча や мільйо́н などにもこの規則は適用されます。「1万」や「1億」といった数は英語などと同様に「10千」、「100百万」などとして表されますので、これらの数詞が複数属格で現れているのはよく目にするでしょう。

де́сять/трина́дцять/со́рок/сто/п’ятсо́т ти́сяч 「1万/1万3000/4万/10万/50万」
де́сять/трина́дцять/со́рок/сто/п’ятсо́т мільйо́нів 「1000万/1300万/4000万/1億/5億」

④一の位が「1」または「2」「3」「4」のとき

この回の最初の方で、数字と名詞との組み合わせのパターンは3つといいましたが、すみません。まだ覚えておかなければならない規則があります。

名詞の形が①~③のどのパターンになるかは、数字の一の位に依存する、というものです。

③は便宜上「5以上」としましたが、実は、どれだけ大きな数字でも、一の位が оди́н だったら後に続く名詞はパターン①と同じく単数形、一の位が два/дві か три か чоти́ри だったら後に続く名詞はパターン②と同じく複数主格形(アクセントは単数属格)となります。

три́дцять оди́н студе́нт 「31人の学生」
со́рок три префекту́ри 「43県」
Йому́ сто ти́сяч шістдеся́т оди́н рік. 「彼は10万61歳だ」

慣れるまでは、というより個人的にはある程度慣れたあとでもなんだか気持ちが悪く、よく間違えそうになるのですが、数字が出てくるときは一番小さい位がどの数字か、という点を常々意識しておくしかありません。

⑤「0」

続けてすみません。もうひとつだけ頭に入れておきましょう。
使い所が限られてくるため忘れてしまいやすいのですが、なぜか、нуль 「0」と組み合わせるとき、名詞は複数属格となります。

нуль гра́дусів Це́льсія 「摂氏0度」

理由は調べたことはないのですが、нуль が ти́сяча などと同じく数詞というより名詞としての性質を有していることに関係があるのではないかと思っています。

基本的な部分は以上になります。説明は比較的あっさりしていたかもしれませんが、使いこなすには慣れが必要です。
是非とも、男性名詞、中性名詞、女性名詞それぞれについて、いくつかの名詞をピックアップして、例えば оди́н брат, два бра́ти, три бра́ти, чоти́ри бра́ти, п’ять браті́в, … дев’ятна́дцять браті́в, два́дцять браті́в, два́дцять оди́н брат, два́дцять два бра́ти, … два́дцять п’ять браті́в, …というように、100くらいまで無心で数える練習をしてみてください。そうやって地道に慣れていくしかありません。

また、大部分の規則は網羅しましたが、一部の語ではこれらの規則に当てはまらなかったり、ロシア語の影響などで上記の規則と異なる形を取る場合もあったりすることを断っておきます。

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