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母校へ

 休日の散歩にと、少し足を伸ばして母校まで歩いてみました。ここに来るのはいつ振りだろう、卒業式以来か、同期と飲み歩いて立ち寄ったあの夜か…いずれにしても本当に本当に久しぶりでした。

 今思えば、この大学を目指したのは高校の記念事業で来校された教授の講演を聴いてからというもの…浪人時代は朝から晩まで机にかじりついて勉強したし、あの時から一途な憧れを持っていたのを覚えています。
 一方で、熱狂的な愛校心を持つ学生が多いこの大学に入学してからというもの、そんな人の姿に引いてしまったのか、あるいは単なる天邪鬼なのか、自分自身の気持ちがドンドン離れていったようでした。卒業後一度も同窓会に参加することはなかったし、駅伝で後輩が頑張っている様子を他人事のように眺めたり、当初の憧れや愛慕を心の箱に仕舞い込んでしまったのかもしれません。

 でも、久しぶりに構内を歩いていると、講堂前で寝袋で夜を明かしたこと、この地を目指し百キロを歩き続けたこと、それを終えて仲間と泣いて喜んだこと、迷宮のような図書館の地下にこもった日々のこと…色んな記憶が一気に噴き出してきました。他人を横目で見ながら棚上げしてきた当時の気持ちが自分の中に返ってきたような、そんな感覚でした。そして、気がつくのが本当に遅いですが、他人がどうであれ僕は僕なりにこの大学が好きだったんだと。胸がただただ熱くなりました。

 次にここに来るのはいつになるのかは分からない、だけど置いてきたものをこの散歩で拾うことができたので、もう大丈夫。そんな気がしています。

2021年9月5日
高井康充

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