【小説】教育者としての威厳は、それでも落ちない。くすぐり我慢勝負:前編
春の息吹が校舎を包む朝、都立麗華高校の教室では古典の授業が始まろうとしていた。
彼女はその厳格さで知られ、一歩教室に足を踏み入れるだけで、いつものざわつきが静まり返る。
「静香先生!!!」
「..なんでしょう。」
先生と生徒とのコミュニケーションを計りながら授業は進行する
生徒達は静香の独特の威厳に深い尊敬を寄せていたが、同時に彼女の怒りを買うことには誰もが恐れを抱いていた。
しかし、その日の授業で
素行の悪さが目立つ生徒の「美咲」が
彼女の厳格なルールを無視し、最後列の席で堂々と居眠りをしていた。静香が授業を進める中、美咲の寝息だけが静かな教室に響き渡った。
「.......」
キリッと彼女の目が冷たく細められた。授業を一時中断し、深く息を吸い込んだ。彼女は冷静さを保ちつつも、内心では美咲の態度に対する失望を抱いていた。
生徒たちの前で、美咲の席へとゆっくりと歩み寄る。その威厳ある姿勢は、教室の空気を一瞬で変えた。
スタ、スタ、スタ、、、
その歩みは静かだが、生徒たちには重圧を感じさせるものだった。
「美咲さん…」と静香先生の声が静かに響いた時、教室内の空気は一変した。
「ん、?はい?」美咲がぼんやりと返事をした。
「授業中に居眠りは許されません。あなたの行動は他の生徒たちにも悪影響を及ぼします」
と静かに、強い声で注意した。
まるで、鉄のような厳しさが込められていた。
「はぁ?」
美咲は面倒くさそうに顔を上げ、反抗的な眼差しで静香先生を見つめた。
「だから何?つまんないものはつまんないんだよ。先生の授業に何か意味があるの?」
静香の眉が一瞬でしかめられ、彼女の目には厳しい光が宿った。
ヒソヒソヒソヒソ。
教室内が緊張に包まれる。他の生徒たちは静かにこのやり取りを見守り、静香と美咲の間の空気がピリピリと張り詰めていくのを感じた。
「静かにしなさい。」
静香は深呼吸をし、落ち着いた声で答える。
「美咲さん?学ぶことの意味を今は理解できなくても、いつかその価値を知る日が来ます。しかし、そのためにはまず、授業に真摯に向き合うことが必要です。」
周りの生徒たちは、静香先生と美咲の間で交わされるこの緊張したやり取りに、息をのんで見守っていた。
彼女の厳格さが、美咲の反抗心に直接ぶつかっていた。
「だからさぁ!!!」
美咲は立ち上がり、さらに挑発的になる。
「真摯に向き合っても、つまらないものはつまらないって言ってるの! 先生がどれだけ偉そうに言っても、私には関係ない。」
静香の目に、再び怒りの閃光が走る
しかし彼女はその感情を抑え、冷静になる。
「美咲さん、あなたのその態度が、将来あなた自身の足を引っ張ることになるとしても、それでも同じことを言えますか?」
「。。。」
美咲は言葉に詰まり、少し動揺した様子を見せるが、すぐに取り繕い、
「ふん!どうせ先生にはわかんないよ」と言い放った。
このやり取りがエスカレートし、ついに美咲に名案が浮かぶ
「あ!そうだ!じゃあ、勝負しようよ。先生がそんなに偉いなら、自制心の大切さとやら!証明してみせてよ。」
「勝負ですか。」静香の声には疑念が滲む。
「そう!勝負しようよ先生。自制心の強さ、見せてみてよ」
「どういうこと?」
勝負の内容はこうだ。
美咲が静香を笑わせようとする
逃げたり笑ったりしたら負け
男子生徒がざわついている。
「私に眠たいのを我慢して話し聞けって言うなら。先生だって我慢することはできるでしょう?」
彼女は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに元の表情に戻り、
「くすぐりだけで自制心の証明になるのかわかりませんが。それであなたが改心するのね?」と応じた。
「もちろん、私かなり上手いから、耐えれたら認めるよ」
「そうですか。ならこの対決はただのゲームではありません。自制心。それがどれほど重要かを理解する良い機会です。」
と静かに美咲に語りかけた。
この決断は、静香の厳格な姿勢と、彼女が生徒たちに対して持つ深い責任感の表れだった。
美咲の挑戦を受け入れたことで、クラスには一層の緊張感が漂った。
その日の放課後。
「静香先生、、、それは本当に賢明な判断ですか?」
授業が終わり、職員会議が始まると、静香は美咲の行動とその後の勝負について同僚たちに報告した。
彼女の決断は賛否両論を呼び、一部の教師からは懸念の声も上がった。
「はい。私は美咲さんがこの勝負を通じて自制心を学べると信じています。」
「とはいえ、過度なスキンシップは教育者として…」
「教育者だからです。これは教育です。」
彼女の言葉は、堂々としており、彼女の決意が伝わってきた。今回の件は美咲に強い心の大切さを理解させられる機会と捉えていた。
この勝負は、ただの教師と生徒の対立ではなく、教育の本質についての深い探求となる
麗華高校の教室では、静香先生と美咲の間の特別な勝負についての噂が生徒たちの間で広がっていく
多くの生徒がこの珍しい出来事に興味を持ち、学校内はざわつき始めた。
ビデオカメラを買った男子生徒もたくさんいる。
ある放課後、静香は職員室で仕事をしていると、何人かの生徒が近づいてきた。彼らは普段から静香先生の授業を真剣に受けている生徒たちで、先生への敬意と信頼を持っていた。
「先生、本当に勝負して大丈夫なんですか?たしかに先生が笑っているところは見たことないけど。。。」
「美咲っていつもくすぐりでじゃれてるから。どんな人も笑っちゃってるのよね。」
生徒達が尋ねた。彼女らの目は不安に満ちていた。
静香は無表情ながら頷いた。
「ええ、皆さんが心配する必要はありません。私は覚悟ができています。それよりも、皆さんは日々の授業に集中することが重要です。」
「そうですよね!」
生徒たちは安心した様子で、静香先生に応援の言葉をかけ続けた。
「先生、絶対に勝ってください!」「私たちは先生のことを信じています!」
このやりとりを通じて、静香は自分が生徒たちからどれだけ支持されているかを実感した。彼女は勝負の日に向けて、自分自身と美咲に何を教えられるか、さらに深く考えを巡らせた。
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