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「川がきれいかどうか」ってどう判断してるの?−随時更新

●色んな指標がある

「川」

それはどんなイメージですか?(誰かの修論みたいだ・・・)

キャンプとか田舎の方に行くと、「川がキレイだな」って言いませんか?
もしくかすると「この川より、君のほうが綺麗だよ。」とかいって女性を口説いたことがありますか?
ゴツゴツした岩があって、そこには藻がついていて魚の背びれや川の表面がキラキラ光る。そんな光景が思い浮かびますか?

それともコンクリート三面張りの都会を流れる、色が白?黒?のようなちょっと下水の臭い混じりの、まっすぐ直線的な川をイメージしますか?

どちらも「川」であることは間違いないんです。前者のほうが後者よりキレイであるというイメージはできますが、いったい何がその「キレイ」or「汚い」を決めているかってご存知ですか?

臭いがあるかどうか?魚がいるかどうか?プランクトンがいるかどうか?・・・etc

どれも当たっているといえばあたっているし、外れていると言えば外れています。

河川はいくつかの項目によってそのキレイさを判断しています。

1.生活環境の保全に関する環境基準
2.人の健康の保護に関する環境基準
3.全国水生生物調査
4.新しい水質指標による調査

参考文献:
平成26年全国一級河川の水質状況-国土
交通省
全国水生生物調査の概要-国土交通省

わけわかりません・・・一体何が言いたいのか。難しい日本語を並べたいだけなのか。お偉い先生、官僚たちの考えることは理解不能で意地悪です。

わかりやすく言い換えます。

1.化学的に川をみよう
2.飲んだらかなりやべぇやつを調べてみよう。
3.生物的に川をみよう
4.人の感覚で川をみよう。

この4つの指標のようなものを使って川を計測しています。この4つの指標は同時期に生まれたものではなくて、日本社会の時代背景と大きく関係があります。

川には「環境問題」が複雑化している要因がたくさん詰まっています。

元々環境問題って「公害問題」からスタートしました。学校の教科書とかで習いましたよね?あのイタイイタイ病とか四日市ぜんそくとか・・・

そもそも公害問題以前には、「環境」に問題なんてなかったんですよ。例えば日本の下水処理をみても、江戸時代にはすでに、糞尿を川に垂れ流すようなことをしてなかった。肥料として使ったりしてたからね。だから川の水を飲んでもそう影響なかったんです。(ちなみにロンドンとかパリは垂れ流しだったみたいなので、やばかったみたいです。)

ところが日本にも産業革命の波が来て、さらに高度経済成長、バブルと重工業・重化学工業が発達してきて、川に色々と流し始めたあたりから雲行きが怪しくなってきました。

「あれ?もしかして人間に影響がでてない?」って。

だから最初の環境問題は「人体に影響があるかないか。」という、4つのうちの2番目。「飲んだらやべぇやつを調べてみよう。」が環境問題だったのです。

ここから、「どうせお金出して計測するなら、人体に直接影響なくても河川の指標になりそうなもの測ろうよ。」と1の「化学的に川を見てみよう」が、
「人体に影響あるなら、川に住んでる動植物もやばいんじゃない?」と3の「生物的に川を見てみよう。」が追加されてきたことで、環境問題が複雑化していきました。

さらに最近では、「死ぬか死なないかで言えば死なないけど、生活してると不快なんだよね。」と平成になって4の「人間の感覚で川を見てみよう。」が出てきました。(H17に「今後の河川水質管理の指標について(案)」というのがとりまとめられました。)
この時点で環境問題は人の生死もしくは重病度だけじゃなくて、人およびそこにいる動植物の生活環境を脅かすものすべてが環境問題となりました。

そして川を測定したところで産業的にお金が生み出されるわけではない。だから、いわゆる行政のお仕事ということになりました。(業務委託とかありますけども。)
もちろん、社会基盤なんでビジネス的に判断されても困る部分もありますし・・・。

公務員も一応仕事してくださってるようです。アウトプットの結果、1円もお金を生み出していないけども。

ちなみに河川というのは様々な管理者がいます。都道府県、市町村レベルの河川管理になると、国よりも細かく計測しているところもあります。市民や県民という
「余分に計測するお金もマンパワーもない。もしくはする必要がない。」などの理由で、最低限の規制項目のみ計測しているところもあります。

この辺は河川の分類があって面倒なので、別に書きます。

傍からみると川なんて大きいか小さいか。広いか狭いかくらいしか興味ないと思います。しかし、「管理者」というレベルで見ると、そこには純然たる格差が存在し、管理者の判断に大きく依存するものとなります。

管轄という面で不思議なのは、少し大きな行政区だと環境と土木が別部署になっていて、水質を測るのは環境。だけど、河川管理をするのは土木。というように、なぜ同じ川を別々にやってんの?みたいなこともあります。

「同じ市内流れているんだからさ。」と思いますけど、この辺が行政組織の問題点の一つです。情報共有はしてるんですけどね。おそらく。

●実はキレイに基準はない?!

この4項目を計測することで、

「うちの川(もしくは近くの川)はキレイだ!」

といえれば何の問題もないのです。

しかし、実はこれ言えません。

一応環境基準と呼ばれるものは、環境省というところが出しています。(河川管理は国交省。環境基準は環境省。)

参考文献:生活環境の保全に関する環境基準

「この数値範囲にあれば一応普通の川でっせ。」という基準です。
これより数値が低い、もしくは高いとやばいでっせ。という基準です。

よく見てほしいのは、「すっげぇ〜数字の範囲が広い」ってこと。しかも大事なのは、この基準を満たせばキレイだよ。とは言ってない。ということです。

何か影響があるほど汚くはないよ。と言っているに過ぎないのです。

まるでコトバ遊びのようだけど・・・

「この数値だから川がキレイだよ。」っていう指標は存在しない。

国も地方も比較によって「キレイになった」「汚くなった」という表現はするけど、それ以上はどう頑張っても言えないのです。

だから、田舎の山間の川は「キレイ」っていうのは、何をもってしてキレイと言っているのか断定的な要因はない。

「イワナやカワゲラ(生物指標)がいるし、一応環境基準(科学的指標)は満たしてる。うんキレイな方の川だね。」がギリギリ言える。

普通、川のキレイさは川単体で表現しない。

「高知の川のBODはこれくらい。名古屋の川のBODはこれくらいだから、やっぱり名古屋の川より高知の川の方がキレイだね。」という比較表現だけです。

ちなみに環境基準という視点から一級河川の環境基準を満たした地点の割合は、H26年度でなんと97%です。
(参考文献:平成26年全国一級河川の水質状況-国土交通省)

また一級ではない日本の川のほとんどが、国が定めた環境基準を満たしているといえるので(満たしてないと怒られちゃうからねwww)、そういうレベルで言えば、

「日本の川はキレイ。」です。

あの臭くてどうしようもない川も、なんか油のようなものがプカプカ浮いている川も、魚が大量死する川も、川に定められた環境基準はほぼほぼ満たしているのです。(一部指導が入っているところもあると思いますが・・・それは各都道府県、もしくは市町村のHPをご覧ください。小さな市町村の場合、生活排水の下水などの部門とくっついている場合もあります。)

なので最近、4テーマの4つめがアンケートなどを利用して指標として使われるようになったわけです。

「わーい!環境基準満たしてるから、魚がたくさん死んだらしいけど、川で遊んじゃえ!yeah yeah バシャバシャ あっ、ごっくん!おいしぃ〜!!」

ってならないじゃないですか?あんな川に入るなんて冗談じゃない!!ってなりますよね?実際クルージングとか啓発活動してますけど、参加されたことあります?

「えっ?あの(ちょっとヘドロの臭いのする)川の横にテラス型のカフェ?臭いも若干あるらしいけど、環境基準は満たしてるみたいだから行ってみたい!」ってなりませんよね?

そんなやつらは公務員の土木技師だけですよ。まじで。

「ちょちょちょ。えっ?あの川でテラスカフェ?ヘドロの臭いとコーヒーの臭いが混じりそうだよね。大丈夫なの?」っていうのが普通の反応です。

そこで、4.は人が感覚的にその川に入りたい?どう?っていうのも指標にしたわけです。人が入りたいと思える川ならキレイだ。ということです。

ただ道頓堀は阪神が優勝すると、入りたくなってしまう人がいるので、この指標も絶対のものではないです。

あそこは水深が浅くて(3m程度)危ないからという理由で禁止されてます。ごみなどの不法投棄もあるみたいですし。水底の堆積物(ヘドロと大型ゴミ)の高さが50〜60cmもあるそうです。すると、実際の水深は2mちょっとですか。

ちなみに道頓堀には、大量の大腸菌が検出されています。(18,000個/100ml)
これ多いか少ないかといえば、人が顔をつけて良い水場の大腸菌の基準は1,000個/100mlと言われています。(水道はもっと厳しいです。)だから比較的多い方です。
それでも河川としての環境基準は満たしているはずです。なぜなら大腸菌は(人が入る予定のない)河川の環境基準ではないからです。名古屋市の新堀川というところも大腸菌のデータが公表されています。(参考文献:市内河川・ため池・名古屋港の水質の変遷(H23年3月))1.0×10^7ですから、ここ20年で最大値が10,000,000個/100mlという数字が出てますね。

道頓堀はダイブすることを前提にした川じゃないのです。あの飛んでる人たちは、大腸菌がうじゃうじゃいる川の中に、満面の笑みでダイブしているわけです。ちなみに大腸菌は人体に影響あります。有名どころはO-157っていうやつです。

あっ、名古屋市の新堀川付近の方。安心してください。環境基準満たしてます!

キレイなんですよ・・・きっと・・・たぶん・・・・長良川とかに比べるとちょっと見劣りしますけど・・・・

●生物指標も絶対じゃない!

環境基準を満たさない川は論外ですが、環境基準を満たした時点で、川がキレイか汚いかの判断は、ほぼ主観になります。

生物指標によって、「おぉ!カワゲラさんがいるからそこそこキレイ」とか「ここは赤虫だから、あんまりか・・・」といいます。

生物指標にはおもに「底生生物」と「魚類」の項目にわかれます。

底生生物とは水中の虫みたいなやつらです。わかりやすいところでいうと、ヒルとかカゲロウなどです。

魚類だとメダカとかコイとかになります。

小学生などの素人でも判断しやすいように、生き物によって川を水質階級という分類でわけて、川の水質を判断する指標のひとつとしています。
(参考文献:川の生物を調べよう。

ところが生物指標は、「別にこんな汚い川にいたくないけど、キレイな川に住んでるやつ多いからこっち(汚い方)にしよ。」っていうやつらもいるのがやっかいです。

汚いところに住んでるやつの多くは、別にキレイなところでも生活できます。ただキレイなところには餌が多いぶん、ライバルも多い。だったらライバルのいないブルーオーシャンに行こう。と、ブルーオーシャン戦略の結果、汚い川に適応できてしまったにすぎないやつらもいるのです。

そういうやつらは水質階級に関わらず、どこにでもいます。生物指標の細かいところは、ここでは割愛します。「カワゲラ特集」とか「コイ特集」とかしてみようかな。ヤゴとか面白いでしょうね。

また魚も同じです。キレイな川の代表格、「鮎」。実は比較的キレイじゃなくてもいます。名古屋のような大都市の川にもいますから。

魚の場合、水質だけじゃなくて流速や勾配といった物理環境も効いてくるので、この魚がいるから絶対キレイだ!はやっぱり言えないんです。

せっかく魚の話になったので、放流について少し。

「メダカ」が絶滅危惧種であるということはずいぶん前から言われています。そして、メダカのような魚を入れればいいじゃん。と「カダヤシ」という外来種を放流していた時期があるそうです。

ちなみにそのカダヤシをとって育てると法律違反です。メダカと勘違いしてた!なんて言い訳できませんのでご注意を。

最近はもっと進んでいて、実は「メダカ」増えてきました。ここ数十年1回も見つからなかったメダカが増えてきているのです。

「川がキレイになってる証拠じゃん!」

若いっていいなぁ。おそらく誰かが放流したことが考えられます。

●まとめ

川のキレイさというのは非常に難しい感覚な部分があります。

ただデータも色々取られていて、総合的に判断しています。一方だけをみてキレイだの汚いだの判断しません。

またキレイや汚いを絶対的に評価することもできません。

相対的に、こっちの川とあっちの川。もしくは今と昔。という風に比較によって評価されるものです。

キレイや汚いといった形容詞は比較によってのみしか評価できないものですから、これでいいんだと思っています。

例えば、「石原さとみが可愛い」だって、この可愛いには比較がありますよね。それが日本人の平均の顔なのか身近な人なのかわかりませんけども。

川も同じように、昔よりはキレイになった。もしくは最悪、あっちの川よりはキレイになった。でいいのです。

ぼくの住むまちにも、●●運河とか●川とか汚さの代表格のような川が存在します。どちらが汚いかと争いがおきるほどです。が、どんぐりの背くらべです。

もし良かったら、みなさんが住むまちの川のデータを見てみてください。そしてその川のデータともうひとつ、どこかイメージがつく川のデータを見比べてください。

データとみなさんの川のイメージは合っていますか?

人生ファビュラス!

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