大学院留学の為のMotivation Letterの書き方

Motivation Letter(英文志望動機書)は,大学院留学を目指す人にとって最も時間をかけなければならない重要な書類です.今回はミュンヘン工科大(TUM)の修士プログラムComputational Mechanicsに合格した際に自分なりに研究したMotivation Letterの書き方を共有したいと思います.

Motivation Letterの書き方にも色々あると思っていて,ここで紹介する方法がベストでは無いと思います.実績がたくさんある人は実績ゴリ押しで構成したほうがいいかも知れませんし,逆に目立った実績がない人は,キャリアビジョンやなぜこのプログラムに応募しているのかのロジックを際立たせる方法が向いているかも知れません.ここでは一般的に知っておくと質をあげられるのではないかなと思う内容を,自分が取った戦略的なものを交えながら書いていきたいと思います.

出願書類の中でのMotivation Letterの位置づけ

まず念頭に置かなければならないのは,Motivation Letterは単体で考えず他の書類とセットで考えるということです.大学院留学出願において共通する必要は,

・CV(履歴書)
・Motivation Letter
・推薦状
・大学の成績証明書
・TOEFL,IELTSなど英語のスコア

あたりだと思います.読み手はこれらすべてに目を通し,総合的に判断して合否を判定します.なのでこれらの書類に一貫性があることがまず必要です.

そしておそらく読み手はCVなどの基本情報から先に目を通し,Motivation Letterでその学生の考えを知るという流れで選考を進めると思われます.その後,学生の言っている内容と推薦状を比較し,大きな差異が無いかをチェックするのではないかと僕は思っています.(ここで矛盾があると,Motivation Letterそのものの信憑性が薄れるので注意が必要です.)

以上の仮定をもとに,僕の場合は書類を以下のような位置づけで考えるのが良いのではないかと思っています.

▶ CV:アピールしたい実績やスキルを列挙し,基本情報を読み手に伝える.最低限,Motivation Letterを一読する価値のある学生であることが伝わるよう意識する.
▶ Motivation Letter:情報の羅列であるCVを掘り下げ,自分が合格にふさわしい学生であることをストーリーとして伝える.
▶ 推薦状:Motivation Letterでアピールした内容が,自分だけの勘違いポエムではないことの裏付けをもらう.構成や分量の関係でMotivation Letterでは触れられなかったアピールポイントを補足でアピールしてもらう.(実際は自分で書いて承認のサインをもらう場合が多いです.教授によって対応が異なります.)

各々の役割を意識して,全体として自分が合格にふさわしい学生であることを最大限アピールできるように構成を練ります.

Motivation Letterの大前提

まず大前提として,読み手は自分の書いたMotivation Letterをたっぷり時間をかけて読んではくれません.何万という応募書類を裁かなければならないので,一人にかけられる時間は非常に限られています.大体1分で読まれると思ったほうが良いです.選考の初期段階では,ひょっとするとそれ以下かも知れません.

そこで,意識すべきことはおそらく以下の2点だと思います.

1. 最初の数行で読み手の注意を引く
2. 読み手の慣れ親しんだフォーマットに倣う

1つ目は特に重要で,読み手がその後の文章に注意を払って読んでくれるかを左右します.ここでありきたりすぎる文章が続くと,最後にいいことを書いていても目を通してもらえないかも知れません.

2つ目は,個人的には論文を書くことと似ていると思っているのですが,英文エッセイにはある種のテンプレみたいなものが存在します.おそらく応募してくる各国の学生からも常識として広く知られているはずで,読み手もそのようなテンプレに倣った文章に慣れているはずです.したがって読み手は意識して,あるいは無意識にテンプレに沿った予想をしながら文章を読み進めていくはずで,そこから大幅に外れた文章構成にすると読みにくい文章になってしまいます.(論文も決まった共通の構成があることで読み手が理解しやすくなっているわけで,このあたりが共通しているなと思います.)

Motivation Letterに盛り込むべき5つの内容

Motivation Letterに限らず,就職やあらゆる面接でも共通して相手に伝えなければならないことは,「なぜここに応募しているのか」,「なぜあなたなのか」ということだと思います.相手はこれらを知りたくて面接をしますし,Motivation Letterを書かせています.これを大学院のMotivation Letterバージョンに落とし込むと,以下のようになると思います.

1. Why this country?
2. Why this university?
3. Why this program?
4. Why now?
5. Why you?

僕はMotivation Letterが上記5つの内容への回答になっていることが,良いMotivation Letterの最低条件だと思っています.特に最後の質問が重要です.なぜあなたなのか.あなたは合格にする価値はなんなのか.あなたはこの大学,プログラムに何を持ってこれるのか.これを説明すること,あるいは文中で述べた実績や,文中から垣間見える意志・考え方などから感じ取ってもらうことがMotivation Letterの目的だと思います.

Motivation Letterで用いるテンプレフォーマット(PREP法)

PREP法は

・Point
・Reason
・Example
・Point

の略で,この流れに沿って文章を構成していくと伝わりやすいよというテンプレの一種です.最近ではビジネスなどいろんな場面で常識になってきていますが,Motivation Letterでもこれに倣うのが良いのではないかと思っています.PREP法自体の解説はそこら中に転がっているので,ここでは割愛します.

僕がTUMに応募したときは次のような構成にしました.

[Part 1] Intro + Point
  : 読み手を惹き付けるキャリアゴールの提示.
[Part 2] Reason, Example(なぜここに応募しているのか)
  : why this country?
  : why this school?
  : why this program?
  : why now?
[Part 3] Reason, Example(なぜ自分なのか)
  : why you?
[Part4] Point (Strong Closing)
  : Part 1のPointの繰り返し.プログラムでの成功への自信と,印象に残る最終文で締めくくる.

他にもいろんな構成があると思います.あくまでこれは一例です.

上記はMotivation Letter全体の構成にPERP法の考え方を適用していますが,さらに段落単位でもPREP法にのっとって文章を構成するとまとまりが良くなると思います.一文目でPointを述べて注意を引き,2文目以降で具体例を出しながらその主張に説得力を与え,最終文でもう一度印象に残るように表現を変えてPointを繰り返します.(段落の一文目と最終文の重要性は僕が英文添削をしてもらったプロの方からのコメントにもあったので,特に注意して文を選択すると良いと思います.)一文目と最終分は,段落間の遷移が自然になるかどうかにも左右するので,これについても注意すると良いと思います.

実際にMotivation Letterを書く前に

最後に,Motivation Letterを実際に書く前にやらなければならないことがあります.それは可能な限り多くのMotivation Letterを読むということです.いいMotivation Letterを書くには,良いMotivation Letterをたくさん読む必要があります.同時に悪いMotivation Letterも読んで,駄目な例を知る必要があります.

時間の許す限り,ネットでサンプルを集めて読んでみると良いと思います.中には非常にいいサンプルもあるはずなので,そのような文章からコレはつかえるかもという構文,言い回し,単語などをピックアップして活用してみてもいいと思います.(もちろんコピーは駄目です.)同時に質の悪いサンプルも転がっているので,それらからありきたりな表現や言い回しの感覚を掴むこともできます.

後は,可能であれば実際に留学に行った友人に見せてもらうのもいいと思います.僕も友人や先輩にサンプルをもらって研究しましたが,本当に役に立ったので感謝しています.

添削について

Grammarlyを使って最低限自分で直すことのできる文法ミスをなくしてから,少しお金はかかりますがプロの方が添削してくれるサイトで添削をしてもらうと良いでしょう.僕の場合はEssayEdgeというサイトで添削をしてもらいました.添削付きのwordファイルとは別に,総評やどういう意図で添削したかなどの細かいコメントが書かれたファイルも送られて来て非常に勉強になりました.

あとは友人など第三者に見てもらうことも良い勉強になるので,頼める人がいれば頼んでみると良いと思います.

最後にいくつか補足とTipsを

補足程度に,細かいところで一応気をつけた部分を書いておきます.

▶ 歯切れのよい短い文章をところどころに散りばめる.whichやbecauseなどを含む長い文章ばかりだと,全体の構成が良くても読みにくい.段落単位で読みやすいリズムになっているかを意識する.

▶ ところどころに「強い動詞」を持ってくる.(英語の専門家では無いのでこの辺の感覚は曖昧ですが,make や haveなどは「弱い動詞」,逆にimpellみたいなのは「強い動詞」という意味合いで使っています.)特に段落の最初の文(読み手の注意を引く)と最後の文(読み手の印象に残す)は重要なので,ここに持ってくるとおそらく効果的.あまり多すぎると逆効果だと思うので程々に.

▶ Dear Sir or Madamの書き出しはLGBTQの観点から今の社会に適さない表現なので,To whom it may concernか何も書かないようにする.

▶ 名前とどのプログラムへの応募かはパッと見てわかるようにする.向こうの手違いでそもそも読まれないという元も子もないことが起こる可能性を最小限にするため.

▶ 念の為書式は推薦状と若干異なるものにする.読み手も学生が教授が承認のサインだけしているパターンがあることは承知の上だと思いますが,念の為です.

つらつらと書きましたが,これから留学を目指す方などにとって,少しでも参考になる部分があれば幸いです.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?