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ミュンヘン工科大(TUM)留学:最初の半年を終えて感じたこと

ミュンヘン工科大(TUM)の修士(Computational Mechanics)学生として正規留学に来てから最初の半年が終わりました.初の留学・海外長期滞在で色々感じることがあったので,忘れる前にここに残しておこうと思います.

そしてまずはじめに,最近留学(語学留学・ワーホリ含む)関係の情報が溢れかえっているなと感じています.またそのせいで,留学へのステレオタイプのようなものができつつある気がしていますが,自分の経験に当てはまらないものも非常に多いです.今留学に関する記事を書くにあたって思うことは,一口に「留学」といっても留学の形態,どの国・どの地域・どの大学・どの専攻かによって経験することは千差万別で,また個人の性格,能力,行く前の英語力によっても経験することは相当変わってくるということです.つまりすべて主観でしか語れません.留学中の過ごし方に正解はないです.目的を持って,行って何か自分の中に変化を感じれたならとりあえずOKだと思います.そして思っている以上に留学の形は色々あり,奨学金もあります.なので留学に関する情報は参考にしつつも惑わされないようにしてほしいと思います.この記事もドイツ留学・TUMのプログラムすべてに当てはまることでは無いことに留意してください.

▶ 英語へのコンプレックスがなくなったのが一番の収穫

もとから英語ができる人には関係のない話ですが,僕には大問題でした.英語が専門の勉強や将来の選択肢など,すべての足を引っ張っていると感じる程でした.これをなんとかしたい.僕の留学はそんな壮大な英語コンプレックスから始まっているので,この半年の一番の収穫は英語に対するコンプレックスがなくなったことです.最初がひどかったのでまだまだ英語は流暢とは程遠いですが,少しずつ良くなってきている実感はあります.何より,英語で調べ物をすること,英語の分厚い専門書を読むこと,英語の講義を聞くことなど,将来グローバルにやっていくなら必要な英語力の基礎ができたことには価値があると思います.

ちなみに正直にいうと留学前に受けたIELTSのスピーキングは5.0です.普通6.0くらいは留学に行くなら日本人でもある人が多いですが,僕の英語力はその程度でした.僕のプログラムは英語は足切り程度の感覚で,Overallで6.5(厳密には6.25取れれば四捨五入で6.5になります.)あれば書類は通ります.ちなみにこっちの学科の同期は英語でコミュニケーションを取ることに問題がある人は殆どいません.ヨーロッパだけでなく,中東・アジア・南米など各国から集まっていますが,英語力は皆高いです.大体みんなTOEFLなら満点近いと思います.そんな環境でも,なんとか頑張ればやっていける英語力がIELTS6.5くらいなのかなというのが個人的な感想です.

もし留学を考えていて,英語で悩んでいる人がいるなら,英語力を理由に選択肢を消してしまわないことです.基準は向こうが提示するものなので,それさえクリアしたのなら問題ないです.苦労するかもしれませんが,「頑張ればなんとかなる」基準が向こうの提示してくる基準のはずです.

あとは単純に海外の友達ができて嬉しいです.大学院留学は専門を磨きに行くイメージが強いと思いますが,(もちろんそうなんですが,)人生という長い目で見たときはむしろ海外の友達がいる,違う国の文化を知れるという経験のほうが貴重だったりすると思います.

英語の勉強と英語力の変化等については,また今度別の記事にできればと思います.

▶ 教育スタイルの違いと長所短所

TUMのComputational Mechanicsプログラムは,日本の理系修士のように研究ベースではなく,授業ベースで進みます.修士論文は最後の半年で書く上,プロジェクトもそれほど多くありません.特に最初のセメスターはバックグラウンドの異なる学生のレベルを一定以上の水準に合わせるため,基礎ばかりで面白くなかったというのが正直な感想です.研究プロセスを学ぶ,自分で研究を進めていく力を身につけるという意味では,日本の大学に残ったほうが力はついたと思います.また,僕のプログラムの授業は理論重視の構成なので,プログラミングの技術など,自分でどんどん手を動かす必要のあるスキルを伸ばすのには向いていないなと感じます.そういったスキルを伸ばしたければ,工夫してアルバイトやインターン,セメスターブレイクでの自習などで補う必要があります.

一方,日本の大学院の授業と比べて授業とそのサポートがしっかりとしているため,理論をしっかりと効率的に身につけられることはこちらのプログラムのメリットだと思います.教授による講義と並行して,PhD学生がチュートリアルという形で問題演習などを担当するスタイルの授業が多いです.オフィスアワーもあるので,質問があれば気軽に質問しに行くこともできます.授業中・授業後に質問するのが普通という雰囲気があるので,日本の学部時代のように「なんとなく質問しにくい」みたいなのが無いのは個人的に好きです.

大学院以降の専門書の内容は一人で解読していくことが難しいことが多々ありますが,理論を授業で幅広くサポートしてくれる分,自分で専門書を読んでいく際にも,以前よりなんとなく理解しやすいというのが肌感覚としてあります.英語で情報をすぐ質の良い文献にアクセスできるようになってきたことも複合的に絡んでいると思います.これらは日本を離れたからこそ得られた変化だなと思います.

成績の捉え方についても違いを感じます.日本では就職などで成績を重視されるという話は僕の周りでは聞いたことは無いですが,ドイツや(知人から聞いた話ではアメリカなどでも),学校での成績で判断されることが比較的多いと聞きます.PhDのポジションが取れるかどうかにも成績は最も重要な要素の一つです.僕のプログラムではテストの形式が「思考力を問う」ものではなく「どれだけしっかり準備してきたか」を測るような物が多く,時間制限も非常に厳しいため,いい成績を取るためにはこの形式に慣れることも必要です.(個人的にこのテスト形式は本質をみれていない気がしますが,しっかり準備すれば良い成績が取れるという点ではある意味fairかも知れません.)

今後のキャリアを考えるといい成績を取らなければならないが,授業のボリュームが大きく,また形式への慣れなどあまり本質ではないところに時間を割く必要もあり,自分の興味のままに勉強を進めていく自由度はあまりなかったというのが今学期の印象です.やはりどんなシステムにも一長一短があります.たまに日本の大学は〇〇だからだめみたいなことをいう人がいますが,日本の大学は学びたいだけ学べる体制が整っていますし,研究に集中できる環境も整っています.もし今留学を検討されている方がいれば,今後のキャリアや人生を考えた上で自分に必要なものをしっかりと見極めた上で,決断されることをおすすめします.

▶ 留学に来てこの半年しんどかったこと

この半年は割とメンタルとの戦いでした.

まずは英語力不足と文化の違いから,最初の頃はグループの会話にうまく入っていけませんでした.単純な英語力に加え,いろんな国のアクセントに慣れていないこともあり,「まず何言ってるかわからない」ことが辛かったです.また会話の展開も日本とは違うなと感じることが多く,理解できても発言するのが難しかったりしました.「話さないと英語は伸びないのに発言の機会が得られない」という悪いループに入っている期間は,焦りと馴染めていない感とのメンタル勝負だったと思います.

慣れ親しんだものが食べられないことも最初は辛かったです.日本食スーパーはありますが,魚など日本的なものは手に入りづらく,あっても高いです.日本ほど安くクオリティの高い飯が外で食べれる国はおそらくないなとこちらに来て改めて感じました.(とはいえ他の地域に比べると大きいアジアスーパーもあるミュンヘンは比較的恵まれているほうだと思います.)

家族や親しい友人たちと離れて暮らすことの寂しさもありました.距離的な話だけではなく,時間的に離れていることのほうが個人的には辛いと思います.こっちが夕方になった頃に日本は夜中になるのですが,それ以降の「日本と時間的にシャットアウトされている感」で寂しさを感じることも多かったです.

また,留学にはいろんな手続きや新しい環境へ慣れるための時間が必要で,それに時間を取られることは避けられません.ミュンヘンは交通の便などはいいですが,レストランは比較的高くて自炊は必須です.ドイツ語もまだまだ良くわからないので,日本にいるときよりも日常生活で余計に時間が取られるなと感じることも多いです.専門の授業に加え,英語・ドイツ語の勉強時間も確保しなければならない中,日常生活に取られる時間が日本よりも増えることで時間のマネジメントも難しくなります.

このような様々なストレスをうまくコントロールしながら,自分のリズムを掴んでいくまでは今思い返しても難しい期間だったと思います.

最初の半年を切り抜けるために大事だったと感じること

この半年の経験として,個人的に重要だったなと思うのは,自分をうまくコントロールする方法を知ることです.明確な目標を立てていても,慣れないストレスやホームシックでモチベーションが保てなかったりすることがよくありました.日本だとうまく行っていたやり方も,こっちに来るとうまく行かないことがあります.当たり前のことが当たり前じゃなくなったりすることもたくさんあります.小さいことで言うと,僕の場合は睡眠時間も何故か1,2時間多くないとしんどいです.あまり追い詰めすぎず,たまには大胆に息抜きをしたり,人に頼ったりすることでストレスをうまく回避することも大事だなと思います.今までのやり方に固執せず,柔軟に変化させていけたことでなんとかこの半年を終えられたと思っています.

あとは新しい環境を楽しむこと,キツい勉強にも自分なりの楽しみ要素を見つけることです.結局楽しければ努力してる感覚はなくなるので,楽です.僕の場合一番のストレスだった英語に関しても,何も成長していない気がして嫌になるときもありましたが,どこかで勉強した表現を友人が使っていて理解できたら嬉しいですし,新しいフレーズやかっこいいフレーズでコミュニケーションが取れたときは楽しいです.楽しみを見いだせていたら,多少落ち込む事があってもまたすぐ戻ってこれるなというのが感想です.

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