心理検査を受けてみた〜WAISーⅢ〜

 成人期の発達障害の記事ではあまり触れていないのですが、発達障害の診断に際しては心理検査を参考にすることが多いです。その一つに「ウェクスラー成人知能検査」があり、言語検査と動作検査に分けて、知能の状態を評価します。概要は下記からもわかりますが、これから受ける方もいるでしょうから、あまり詳細に触れないほうがいいかもしれません。

 私自身、働く方が心理検査を受けた経験や、主治医として心理検査を依頼したことはあったのですが、どういったことが行われているかは、漠然としか聴いたことがありませんでした。そして、受けてみての感想ですが、検査は検査者(私は身障心理士、公認心理心資格を持っている方に検査して頂きました)と1対1で行い、時間は2時間程度かかり、とても疲れました。それは、これで知能指数(IQ)がわかってしまう、自分に発達の偏りがあるんだろうか、といった検査の主旨を理解していたことによるドキドキ感もありますし、様々な観点からの検査(ワーク)があったので、頭がフル回転し続けた2時間だったから、とう両方があります。なので、この検査は、その時の体調や精神状態に大きく左右されるな、と感じました。成人期の発達障害では、二次的に抑うつ状態になって相談に来られることが多いですから、その時点で心理検査に誘導しても(当然ながら、医療機関で実施時期は適切に判断されると考えますが)、正しい評価には至らない、つまり、心理検査で発達障害の診断ができるわけではなさそうです。私自身は心理検査を複数回受けた方の話は聴いたことはなかったのですが、時期を変えて実施するのも、その人の状態を見極めるのに有用だといったお話も伺いました。

 また、心理検査で評価する項目は、例えば「作業記憶」であれば、メモを取ることで補えますし、言語理解もネットや辞書で調べることも可能ですから、それぞれの結果がダイレクトに社会生活に影響するのではなく、補うことで支障なく過ごせる場合も多いような気がします。つまり、検査結果の偏りがあることが問題ではないと感じました。

 自分の検査結果(レポート含めて詳細を頂きました)で「なるほど」と感じたところは、言語理解において、日常生活や社会のルールについて表現する能力や語彙力の高さ、といったコメントが、知覚統合において、法則性の高い抽象的な刺激の処理により長けている、とあったので、これって産業医業務に直結するな、とか、複数の刺激を同時に操作することが求められる語音整列は平均並みで、マルチタスキングはそこまで得意ではないな、とか、なんとなく感じているとことが客観的に理解できてとても参考になりました。なお、私自身は「状況や気持ちを言葉にして表現すること」は苦手意識があったのですが、普段の生活や産業医業務の中でトレーニングされたような気もしています。

 そして、実際に検査を受けてみて、心理検査を成人期の発達障害が疑われる方に一律に勧める必要はないのかな、とも感じました。それは、産業医などが居ない職場では、受けてその結果をどう活用するのか、つまり、医療機関側が職場での問題にどこまで関われるかによって、受けることがレッテル貼りになり、差別や排除に繋がる可能性は考えておかないとならなそうです。また、産業医が成人期の発達障害に関する知識や経験を持ちあわせており、心理検査のこともわかっていれば、職場や本人から話を聴くことで十分に支援が出来るような気がします。もちろん、本人が希望して、医師が必要だと判断すれば検査を妨げるものではありませんし、検査結果を踏まえて、より適切な支援ができるようになればいいですよね。

 まとめになりますが、当然ながら「心理検査をやれば発達障害かどうか診断できるわけではない」ですし、成人期の発達障害関連の記事でも記載したように、無理に診断をつける必要はないですし、診断がつかなかったとしても、本人、職場に必要な支援を見極めていくことが大切なのかな、と考えています。

 

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