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YOUは何しにそのサービスへ?Webサービスを使うモチベーションの調査

Webサービスを改善していく上で、自分たちが運営しているサービスがなぜユーザに受け入れられているのか、どこにメリットを感じてもらっているのかを調べることは必要不可欠である。ユーザがなぜ自分たちのサービスを使ってくれているかを知ることができれば、①よりユーザにとってサービスが使いやすくなる機能を追加することができる。②ユーザがサービスを使う上で不必要な機能を削ぎ落とすことができる。今回はWebサービスにおいてユーザがどのようなモチベーションでそのサービスを使っているかについて調査した事例を紹介する。

調査方法

事例を紹介する前に簡単にユーザ調査の方法に関してまとめておく。ユーザのモチベーションを調査すると聞くと真っ先に思い浮かぶのは実際にユーザにインタビューを行うアプローチである。現在サービスを利用してもらっているユーザを招いて、普段の使い方や実際に使っている場面を見せてもらい、何を考えてその操作をしているのか、その機能を使っているときに何を感じているのかを実際にユーザの口から語ってもらう方法である。

また、Webサービスであればユーザの操作ログは比較的容易に取得することができる。これらのログを集計し、どのような行動パターンをユーザが取っているかを調査するアプローチも存在する。その機能を使うためにどのページから遷移したのか、その機能を使っているときにどのような入力をしたのかがユーザのモチベーションを測る手がかりとなる。

またインタビューとアプローチとしては似ているがユーザにアンケートを行うアプローチも考えられる。最初にサービスの利用状況や機能に対する評価などを設問として設定して広く答えてもらうといった方法である。

利点/欠点をまとめると以下のようになると思う。

・ユーザにインタビューを行う
 ・利点
  ・直接的に話を聞くことができるので誤った解釈をする可能性が少ない
  ・サービス提供者側が気づきづらいユースケースにも気づきやすい
 ・欠点
  ・インタビューの準備から結果をまとめるまでの時間/コストが大きい
  ・十分な数のデータを集めることは難しい
  ・ユーザの認識が間違っている場合がある(Facebookの事例)
・ログを集計する
 ・利点
  ・ログさえ取得していればほぼすべてのユーザを調査対象にできる
  ・実際のサービス上での行動が見えるのでユーザ層ごとの比較が容易
 ・欠点
  ・ログを取得/保存するためにサービス運用以上のコストが発生する
  ・少数のユーザでしか見られない行動が発見しづらい
  ・実際の行動しか見えないのでユーザの心理に関して推測の域を出ない
・アンケートを行う
 ・利点
  ・インタビューより多くのデータを集めることができる
  ・ログ集計より直接的にユーザの心理に関して聞くことができる
 ・欠点
  ・設定した項目以上のことは聞けない
  ・インタビューと同じくユーザの認識誤りにより間違った結果を導く可能性がある 

ベストな方法が決まっているわけではなく、お互いに利点/欠点を認識して補完的に調査を行う必要がある。

過去の事例

ここからは今回調査したユーザ調査の事例に関して2つほど紹介する。

YouTube Needs: Understanding User's Motivations to Watch Videos on Mobile Devices

こちらの調査ではYouTubeでユーザが動画を見る/探すモチベーションに関して、インタビュー及びYouTubeのログからグルーピングを試みている。その結果大きく分けて3つ、小さく分けて14つの分類を示している。大きく分けた3つの分類に関しては以下の通りである。

1. Motivation of Entertainment
 娯楽目的
2. Motivation of Information
 何らかの情報を得るため
3. Motivation of Connection
 人とのつながりを持つため

詳しい調査に関してはリンク先を参照いただきたい。娯楽目的や情報を得るためというモチベーションに関しては直感的に理解できると思うので、最後の人とのつながりを持つためというモチベーションに関して少し補足をしたい。調査内容に記述されているユーザのインタビューには"友人からシェアされた動画を見るため"であったり、"彼女と一緒に好きな番組を見るため"といったようなYouTubeの使われ方がこのモチベーションに分類されている。この分類から察するに動画自体だけでなく、他者との関係を築くためとして活用できる動画に対しても価値を見出すことができると考えられる。もちろん全体的なモチベーションに対しての比率としては大きくはないが、興味深い結果であった。

また、娯楽目的の中で細分化されたモチベーションの分類に興味を持っている動画を楽しむ目的暇を潰す目的というものがあり、前者に関しては見たい動画のタイプが決まっているのでクオリティの高いものを見つけたい、後者に関しては見たい動画が決まっているわけではないので幅広くおすすめしてほしい(同じような動画ばかり推薦してほしくない)といったニーズがあるらしい。こちらに関しても確かになと思える結果であった。

Just give me what I want: How people use and evaluate music search

こちらではSpotifyにおける検索機能に関するインタビューを通したユーザ調査がまとめられている。リンク先のPublicationはお金を払わないと見れないので結果をまとめたslideshareへのリンクも同時に添付する。こちらの調査結果では、ユーザがSpotifyにおいて検索を行うモチベーションに対して以下の4つの分類を与えている。

- listen: 音楽を聞くため
- organize: プレイリストをまとめるため
- share: 音楽を友人にシェアするため
- fact check: (アーティスト等の)情報を調べるため

こちらのfact checkというモチベーションとは例えばテレビで流れている音楽の情報やアーティストのコンサート情報を調べるといった行動がこのモチベーションに分類されている。またshareというモチベーションは先のYouTubeでの調査におけるMotivation of Connectionと似た側面を持っているように読み取れて非常に興味深かった。また、検索結果として表示されるものは音楽トラックだけでなく、アーティストやプレイリストも表示される。この検索結果におけるアーティスト情報は音楽トラックへのアクセスのプロキシとして作用するといった報告も面白かった。

こちらの調査では検索結果の質の評価にはSuccess(求めているものが見つかったか)とEffort(求めているものを簡単に見つけられたか)の2軸が影響しておりそれぞれに対する寛容度や明確さには検索時のマインドセットが影響していると述べられている。つまり、探したいものが明確である場合は素早く正確に検索結果を表示して欲しく、見つかったか見つからなかったかがわかりやすい。反対に、新しい音楽に出会いたいといった目的の場合はある程度粘り強く探索することもいとわないが、検索結果が良かったかどうかを評価すること自体は難しいとのことだった。

おわりに

今回は論文という形で自社のWebサービスでのユーザ調査の結果が記載されている文献を調査した。このような形でアウトプットされているとそれぞれの調査での共通項も見つけやすく自社のサービスで調査を行う場合にも参考にしやすいので非常にありがたい。

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