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自宅からロボットでリモート美術館鑑賞体験「あるがままのアート展」

東京藝術大学美術館で開催されている「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」で、ロボットを使った遠隔鑑賞の試みが行われています。

「実際の会場での鑑賞」と「ロボットを使ったリモート鑑賞」の両方を体験しました。

概要

いわゆる「アウトサイダー・アート」と呼ばれるジャンルの25名の作品展です。作家を追ったNHK の番組『no art, no life』『人知れず表現し続ける者たち』の映像が作品と一緒に展示されているため、制作風景や背景などがよく分かります。

時間指定での事前予約が必要となりますが、入場無料で鑑賞することができます。

現地での鑑賞

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まずは現地で実際に鑑賞をしてきました。
通常の藝大美術館での展示と変わっている所は見受けられず、ロボット向けのマーカー類と思われるものもありませんでした。

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壁に展示されている絵画の他に、ガラスケースでの展示などロボットの通行には厄介そうなものについても、ごく普通の展示レイアウトでした。

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リモート鑑賞の時間になると、会場の片隅からロボットが出てきます。運用しているのはエンジニアではなく、通常の会場係員の方のようでした。

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係員の方、一人がピッタリとロボットに張り付いて、展示に近づきすぎるとぶつからないようなフォローをしていましたが、基本的にはロボット側の回避機能で障害物を避けているように見えました。

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リモート鑑賞者の顔が映し出されたタブレットに「ロボ鑑賞中」と書いてあるのが不思議です。係員にロボットについて尋ねる人は結構いまいしたが、音も静かで会場の雰囲気を壊す感じはありませんでした。

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ロボットでの鑑賞

次はリモート鑑賞の体験についてです。ロボットでの鑑賞では、専用の予約画面から日時指定をする必要があります。

システムとしてはWhateverの「Robot Viewing」、実際のロボットはDouble Roboticsの「Double3」が使われています。ウェブサイトを見る限り、パッケージに対してカスタマイズはそれほどしていないようです。

時間前に画面にログインすると操作方法のマニュアルが映し出されていました。ロボット操作と、カメラのパン、チルト、拡大・縮小など、操作は難しくはなさそうです。

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時間になると、画面がオンになりますが、最初に映し出されたのは鏡に映された自分の姿。最初に操作説明を自分のロボットの姿を見ながら行います。操作時の動作確認をしつつ、会場での自分の姿を認識することができて、これはとても良いチュートリアルでした。

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一通りの説明が終わると、あとは基本的に自由に歩き回ることができます。ロボットの導線などの観点から、係員の後をついていくツアー的なものと思っていたのでこれは意外でした。ロボットの動きもスムーズで自由に歩き回れるので、予想以上に実際の会場に見ている体験に近かったです。

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ちょっと残念だった点としては、緻密な作品のディティールをズームで確認しようと思っても、カメラの解像度が低くて十分な鑑賞体験ができなかった点です。これは技術的にクリアできると思うので、ぜひとも今後のアップデートに期待したいです。

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他のリモート鑑賞手段との比較

他のリモート鑑賞手段として、VRプラットフォームのclusterを使ったバーチャルムサビ展や、

VR革新機構が様々な美術館で行っている展示会場のVRモデル化など、最近では多くの試みが行われています。

これらの体験も面白かったのですが、ロボットでのリモート鑑賞は実際に「美術館で鑑賞している」という感覚がして、とても満足度が高かったです。
現地の運用を見ても、専用の展示空間、専任の技術者などは最小限に留められていて、導入コストも低いのではないかと思われます。

時間や距離の問題で現地に行けない事情がある場合に、ロボットでのリモート鑑賞は代替手段の一つとして成り立つと可能性を感じる体験でした。今後も導入が増えていくといいなと思います!

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