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第93回早慶レガッタ(2024.4.21)は、早稲田大学が勝利し、通算勝利数を49勝(慶應42勝/1分)としました。

タイム
早稲田 11分28秒46
慶應    11分29秒43

3,750m漕いできて、ゴール地点での差は、およそ1/4艇身差、僅か0.97秒の差。

さて、この早慶レガッタ、実は2020年シーズンに向けて、2019年の10月頃よりトレーニング指導の依頼を受け、慶應大学のサポートに入っています。

それまで、自身の専門競技(選手)として幼少期より野球一筋、その後、トレーニングコーチになってから、チームスポーツは、ラグビー、野球を中心に、個人競技では、格闘技や柔道、相撲の選手に携わってきたものの、ボート(ローイング)競技は初めてでした。
ストレングス工房としては、過去に一橋大学とご縁があり、上司が担当していた実績があったものの、任期満了後は長らくブランクが空いていた形となり、会社としても久しぶりのボート競技への挑戦となりました。

きっかけは、私がラグビーで長く携わった選手からの紹介(その選手の弟さん)でした。
慶應大学端艇部は、伝統的に学生が主体となり、各代の幹部(主将や副将など)を中心にチーム運営や強化プランについて意見を出し合っているそうです。
そして、件の選手の代になった際、早慶レガッタに3連敗している時期で、このままでは1勝もすることなく引退となってしまう可能性があり、是が非でも早慶レガッタに勝つべく、フィジカル強化に着手する必要があると意見がまとまり、監督・コーチなどに提案した後、我々のもとへ依頼を頂く運びとなったようです。

ただ、何にせよボートの競技経験も指導経験もなかった為、指導当初は、過去に指導実績のあった上司にアドバイスをもらいながら、またどんな動きをするのかなどを選手やコーチに直接確認しながらプログラムを作成し、今になって言えることですが、試行錯誤しながら指導に当たっていました。

そして、半年ほどの準備期間を経て、早慶レガッタ(第89回:2020年4月19日)を迎えようかという矢先、コロナ蔓延による緊急事態宣言発令により、同大会の中止が決定されました。
これにより、学生最後の早慶レガッタに勝利することを目標にやってきた彼らの思いは達せられることなく、終わってしまいました。つまり、4回目の最後の挑戦はできず、在学中早慶戦未勝利で終えることになってしまったわけです。

しかしながら、彼らはそれでモチベーションを落とすことなく、この先どうなるか分からない中、挑戦を続けました。
当初は、ひとまず早慶レガッタ迄で契約期間を区切っての指導依頼だったものの、引き続き秋のインカレまでトレーニングを続けたいとの意向を受け指導を継続。
当時は、ステイホームが続き寮に戻れない期間もあり、オンラインでのトレーニングが中心に。
そして、最後のインカレも制限のある形での開催。おそらく、不完全燃焼で終わった代だったと思います。また、私のボート競技指導歴1年目も終わりました。

その後、代が変わり、前の期の取り組みを継続する形で、再びサポートする機会を頂きました。
そして、迎えた第90回早慶レガッタ(2021年4月18日)。
桜橋手前まで僅かにリードを許す慶應が、桜橋を越えた最後の200mで逆転し、勝利!
実に5年ぶりの早慶レガッタ勝利となりました。
タイムは、慶應 12分24秒14 早稲田 12分25秒01。僅か0.77秒の差。
初めて生で観る早慶レガッタ。桜橋の上から、最後に差し切る瞬間を見た時は、鳥肌が立ちました。
そして、レース後、選手たちのもとに駆け寄ると、そこには前年の主将•副将、そしてきっかけをくれた件の選手(寮長)が居て、皆が涙していました。彼らはコーチという立場で半年残り、後輩のサポートに当たっていたのです。
「ありがとうございます。」と声をかけてくれた彼らですが、こんな素晴らしい競技、世界に携わらせてくれて、逆に「ありがとう!」
そんな気持ちが芽生えたことを覚えています。

私自身の在学中(早稲田大学)、当然早慶レガッタの存在は知っていましたが、観に行くことも、またそれがどんな競技かも知りませんでした。
またそれが、三大早慶戦(野球,ラグビー,レガッタ)に位置付けられること、そして、世界三大レガッタ(オックスフォードvsケンブリッジ,ハーバードvsイェール,早稲田vs慶應)に数えられるということも。

エイトと言われる8人乗りの競技は、究極のチームスポーツとも言われているそうです。
一定の距離を、漕ぎ手全員が息を合わせて同じリズムで漕ぎ続け、少しでもリズムが狂えばボートのスピードは落ち、方向も乱れ、また時には止まってしまったり、浸水して沈むことだってあるそうです。
通常2,000mのレースでは、「ロー・アウト」と言われる用語の通り、ゴール直後は漕ぎ手がヘトヘトなっている姿が見られ、その光景だけを切り取って見ると、誰が勝者かも分からないほど、皆が死力を出し尽くして6分前後のレースを完了させていることが伝わります。

野球をはじめ、球技に馴染みのある者にとっては、誤解を恐れず表現すれば「単純な競技」のように映るものの、実はかなり過酷な競技であり、そしてその為の準備、日頃のトレーニングはやはり過酷を極めます。
私自身でトレーニングプログラムを組んで選手に実践してもらいながら、毎回「よくここまで追い込んでやれるな」と感心させられる程です。
しかし、彼らは毎回きっちりやり切り、時には笑顔すら見せながら、終わった後は爽快な顔をしてトレーニングルームを後にしていきます。

慶應大学の選手は、高校時代よりボート部に所属していた選手もいる一方で、半数近くは大学からボート競技を始める選手もおり、昨年,一昨年の主将は野球部出身の選手でした。
皆がボートという競技に魅せられ、最後の学生生活4年間を目標に向かって結束し、チャレンジして、全てを出し切っていることを毎年感じます。
そして、そんな姿を見て、私もボート競技に魅せられている一人になりました。

2019年-2020年シーズンから始まった縁は、今年で5年目となります。
冒頭に記した通り、今年の早慶レガッタには敗れはしたものの、ギリギリの勝負に彼らの頑張りを見ました。
早稲田と慶應による一騎討ちの戦い、そこには明確に勝者と敗者しか存在しません。
ゴールラインを越えた瞬間、歓喜に沸く勝者と項垂れる敗者。
しかし、負けた側も「ロー・アウト」し、堂々の戦いぶりであり、間違いなく「good loser」と言えるものでした。

慶應大学は、この悔しさを糧にして、次なる目標の大学日本一に向けて、再び鍛錬を続けることと思います。
そんなチャレンジに引き続き参画できることに感謝し、尽力していきたいと思います。

勝った早稲田大学、おめでとうございます。

早慶レガッタ、以下より視聴できます。
是非ご覧下さい。
https://www.youtube.com/live/nwo5UmaQiqg?si=pez4_zB6jfIrDYXn

JPFストレングス工房
鬼頭 祐介

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