見出し画像

机上の空論シリーズ「星は遠く」

―――――――――――――――

星を見ていた

小さな星を

大事にされるには

えらくちっちゃいじゃないか

そう思っていたら

となりに星を取るおじさんがきて

「今日はまた一段と遠いなあ。」

なんて言いながら

星取り網を長くのばして

小さな星をすくってとった

おじさん、あの星は遠いのかい?

「ああ、ずいぶん遠いよ。」

「あんなにちいちゃくなっちまって。」

遠いと、ちっちゃくなるのかい?

「光って見えるもんは、みんなそうさ。」

「お前さんも、ずいぶんと、遠いものを持ってるなあ」

おじさんはそう言って

空に星を引きずりながら

えっさほいさと帰っていった


星を見ていた

小さな星を

胸の中で輝くそれは

おじさんにも取られず

ちっちゃく 遠く

光ったままだった

―――――――――――――――

【音声化の留意点】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?