机上の空論シリーズ「星は遠く」
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星を見ていた
小さな星を
大事にされるには
えらくちっちゃいじゃないか
そう思っていたら
となりに星を取るおじさんがきて
「今日はまた一段と遠いなあ。」
なんて言いながら
星取り網を長くのばして
小さな星をすくってとった
おじさん、あの星は遠いのかい?
「ああ、ずいぶん遠いよ。」
「あんなにちいちゃくなっちまって。」
遠いと、ちっちゃくなるのかい?
「光って見えるもんは、みんなそうさ。」
「お前さんも、ずいぶんと、遠いものを持ってるなあ」
おじさんはそう言って
空に星を引きずりながら
えっさほいさと帰っていった
星を見ていた
小さな星を
胸の中で輝くそれは
おじさんにも取られず
ちっちゃく 遠く
光ったままだった
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