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スタートアップの CTO に求められる役割

この記事は CTO Advent Calendar 2021 12/22 の記事です!

貸付投資のオンラインマーケット「Funds」を運営する、ファンズ株式会社 CTO の若松と申します。

Twitter を見ていたところ、ログラス CTO の坂本さんがこんな企画をされていたのを拝見し、僭越ながら参加させていただくことにしました。


前提: 自分の現在の立ち位置について

前提として、先に自分の立場を簡単に述べておきます。

ファンズ株式会社は2016年11月に設立されたスタートアップ(設立当時の名前はクラウドポート)で、 Funds という FinTech 領域のサービスを展開しています。

ファンズには創業当初から5年ほど所属していますが、僕自身はちょうど先月から CTO という役職に就いたばかりで、CTO としては本当に浅い経験しか持っていません。

ただし開発組織における実質的な責任者としては、以前の職場も含めて数年ほどの経験があり、開発組織のマネジメントについては一定の考えを持っています。

あらためて CTO という役割を担うことになった中で、単なる開発組織の責任者ではない CTO というタイトルに求められる役割として、自分なりの考えを述べてみたいと思います。

スタートアップの CTO の役割だと考えていること

主語が大きいタイトルになってしまっているので、あくまで個人的な経験で感じていることであるというのを強調しておきたいのですが、技術的な側面から事業成長を導くことがスタートアップの CTO の役割だと考えています。

具体的なに求められる役割や、やらなければならないことは事業や組織のフェーズに応じて本当にさまざまです。

創業期のスタートアップであれば、自分自身で開発をリードしたり、基盤や開発プロセスを整備したりすることがまずは必要になると思っています。

組織のフェーズが変わるにつれ、いかに組織としてスケールさせられるか、自身の立ち位置を生かしてレバレッジを掛けられるか、ということに重点が置かれていくものと考えています。

以下はそうしたフェーズの中で、現在の自分が考える CTO の役割です。

事業戦略を実現するための技術的な方法を考える

CTO にとってまず必要なことは、事業として課題となっていることを理解し、課題に対して技術的にどのような形で解決するべき方向性の意思決定をしていくことだと考えています。

あくまで最終的な意思決定をするだけで、その過程を1人だけで考える必要はないと思っています。判断するための材料を集めたり、周囲の意見を聞いたりする中で、最終的な判断をすることになるはずです。

一方で、その意思決定については責任を負うものと考えています。

そのため、時にはトップダウン的な意思決定も辞さずポジションを取り切ることや、そうした覚悟も必要だと感じます。

振り返ると、 Funds というサービスを立ち上げるにあたり採用した技術的な方針、特に Scala を採用するという方針については、メンバー全員の合意の元で進められたものではありませんでした。(具体的な方針については以下の記事でも触れているので、もしよければご覧ください。)

その判断が結果的に正しかったのか、それとも、実は別の方針を取ったほうがよかったのかは、選択をしなかった未来を再現することはできないので、その実わからない…というのが正直なところです。

ただ一旦意思決定をしたあとは、それをできるだけ正解にすることにコミットし、責任を果たすべきなのだろうと考えています。

組織の中での核となる価値観や課題認識を醸成する

組織としての核となる価値観をメンバーに伝えて共有し、課題に対する共通認識を生み出すことも、 CTO の役割だと考えています。

フェーズや組織にもよると思いますが、 CTO が細部まで考えないといけないような組織のままでは、組織としてのスケーラビリティを損ねてしまうのではないでしょうか。

課題に対しての共通認識さえあれば、優秀なメンバーであれば、そこから具体的な手段を伝えなくとも、なにかしらの解決策が持ち上がってきます。

価値観を共有するという意味で、ファンズの開発組織においては、開発組織独自のバリューを定めています。

具体的な内容というよりは、どのような考えを持つべきか、どのように行動するべきかという点にフォーカスしたものですが、この価値観を軸にコミュニケーションを取ることも経て、組織としての共通の価値観や、より自律的な組織を作ることに繋がるのではないか?と考えています。

このように書いていると、細かいことはメンバーにすべてお任せで、なにもしないように見えるかもしれません。サポートをしないわけではなく、 CTO として技術な側面からメンバーを導くことも必要だと思います。

ただ CTO というのは1つの役割にすぎず、決して何でもできるわけではありません。あくまで自律的な課題解決を望ましいという前提で、手助けが必要な場面ではできる限りの手助けする、くらいの考えを持っています。

技術に対する投資の方向性を決める

CTO にしかできない重要な役割として、技術に対する投資の方向性を決めることがあると思っています。

事業の成長を促すということは前提でありつつ、それでも事業の中で顕在化している課題を前提としない、より長い目線で見たときの意思決定をすることが必要だと思っています。

顕在化している事業課題よりも先の将来を見据えた技術への投資をできているかどうかが、企業の成長を決める重要なファクターなるタイミングもあるはずです。本当にここで踏み込む必要があるのか?という、ある意味では早すぎるタイミングにおいても、投資するという意思決定が必要なこともあるのだろうと考えています。

僕自身、この役割はまだまだ全然果たせていないと感じるところでもあり、今後こうした役割を果たせなければならないという意識から記載してみたことです。

技術レベルのキャップとならないようにする

これは役割ではなくやってはいけないことだと考えていることなのですが、 CTO がその組織の技術力の上限にならないようにするということにはとても重要だと考えており、常日頃から意識しています。

自分自身としては、平均的な Web 系のエンジニアよりは多少技術についての知見があったり、開発に携わることもできるとは思っているのですが、決してプレイヤーとしては一流ではないと思っています。そのような中で、 CTO が技術レベルのキャップになってしまうと、組織としても凡庸に成り下がってしまうと考えています。(これは必ずしもすべての CTO がそうというわけではなく、プレイヤーとしても一流の CTO の人もいる思います。)

そのため、 CTO である自分の想像を超えるアイディアや技術力を積極的に採用していきたいと思っていますし、そういうスキルを持っている人を積極的に採用し続けなければならないと思っています。

そうした形で(時には「え、 CTO なのにそんなこともできないの(わからないの)…?」などの煽りも受けつつ…)技術組織のレバレッジを掛けていくことが求められているのかなと考えています。

まとめ

正直個人的にはまだまだ書いたような役割を果たせているか?というとそうでもないのではないか、というのが実情ではあります。

またこの先、実はこのような役割を果たすことが必要だったのか…!と振り返ることもあるでしょう。あくまでこれは2021年時点の考えだということにも記載しておきたいと思います。

CTO Advent Calendar 2021 にはほかの CTO の方が書かれている記事があり、とても参考になるものばかりですので、是非ご覧ください!


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