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流れんな

iakuの初期演目「流れんな」の東京公演千秋楽を観劇した

「モモンバのくくり罠」は、舞台初観劇の私に深く刺さった
「流れんな」はiaku横山監督の初期作品だそうだが、確かに彼の代表作なのだろうという出来栄えでとても良かった
なんといってもシリアスな課題提起と笑のこれでもかというほどの応酬合戦である
今作の登場人物は5人で、母を思春期に亡くした四十間近の姉、亡くなった母をほとんど知らずに育ち第一子を授かったばかりの妹、姉の不倫相手、幼馴染、妹の夫という布陣である
姉と妹が物語の中心にあり、彼女らの母との関わりから人間性が構築され、それらが激しくぶつかる
母を助けられなかった見捨ててしまったと思い込み抱え込む姉は人生に希望を見出せない
人生のスパイスとして不倫という形で愛を求める、決して実らないと分かりつつ、むしろ実らないからか
妹は第一子を授かるが、自分の母親を物心つく前に亡くしているため母親になることに不安を抱く
唯一母親を知る姉に尋ねるが姉は母との思い出の具体を話したがらない
その辺りを主軸にその他の登場人物もそれぞれに問題を抱えており、観劇者はそのどれかに必ず共感するだろう
そして驚かされたのは人間関係の問題だけでなく、代表的な環境問題も身近に感じされる問題提起がされている
顕露わと問題が浮き彫りになっていくときにはこの物語の着地点、幕引きはもう無理だろうと絶望した
映画ならこれだけ話題があちこちに行ってついていけないし、観るのを辞めてしまうかもしれない
しかし、ここまで飽きずに、むしろ前のめりな観劇に向かわせるのは、舞台では生で感情が爆発しているからである、演技の迫力が凄まじいし、特に妹役は演技ではなく感情の爆発であった
クライマックスにかけて、一寸の中弛みなく観劇者の全神経を惹きつけたまま感情の爆発で幕を閉じる、非常に多くの問題提起により登場人物たちの心境は変わっていくのだが、それがなんら無理のない、よく理解できる言動であり、そこが観劇後の不思議なスッキリ感を生んでいると思う
また本公演の素晴らしいところは、絶え間ない笑の挿入にもある、これは横山監督とiakuが得意とするところなのだろう、シリアスな問題提起に心揺さぶられたかと思うとコメディな掛け合いが挿入され、いい意味で観劇者は心情がついていかない
まあこれも調和しすぎない美学として好きだ

観劇は2度目で横山監督とiaku以外の作品を観た事がないのでわからないのだが、問題提起と感情爆発の連打は演劇に非常に適したフォーマットだと思った、しかしこの形態を昇華させるのは役者の技量があってこそだと思う
今回も非常に良い体験だった

千秋楽なので、終演後の挨拶の役者さんたちのやりきった顔も非常に良かった
次の題目も必ず観に行こう

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