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玉置浩二さんのしあわせの道。「好きなこと」にしがみつくことから生まれる幸せ。 

大切なことなんか
わかってくるんだから
好きなことをやっていきなさい

しあわせのランプ

好きなことをやっていきなさい

この曲を最初に聞いたとき,ああ,そうなんだ,一歩一歩前に歩けばいいんだと思った。なんで生きているんだろうと思うけど,そういうことは別に答えがわからなくても,いいのかもしれない。若いときは,なんで生きているだろう,自分って一体なんだろう,そう思うことが多い。それは,うまく生きていけなかったり,ひととうまく付き合えなかったり,一生懸命しているけど,空回りで,なんだか,ずっと,苦しくて,悲しい。

「好きなことをやっていきなさい」という言葉が印象的な,この歌詞は玉置さんが北海道の実家で休んでいたときに,お母さんにかけられた言葉から生まれた歌詞なんだそう。玉置浩二さん。すごい能力をもっていることはわかる。歌で生きていくんだ。大丈夫だろうかと思ったりしない。歌を聞いたら,もうこれは大丈夫だと思うにちがいない。けれども,それで苦労するんだったら,しなければいいのに。そう親だったら思うんじゃないかな。有名になって,すごく売れて,もう行けるところまで行ってしまったとしても,それで苦労するんだったら,歌なんてやめてしまえばいいって,親だったら思うんじゃないかな。

玉置さんのお母さんもきっとそう思われていたと思います。でも,その一方で,玉置さんのお母さんは「好きなことをやっていきなさい」とおっしゃる。なぜなんだろう。

好きなことをやっていくことからはじまる

好きなことにしがみついて一生懸命してきたはずなのに,いつの間にやら,好きなこと以外をおっかけて疲れてしまうということは,たしかにあります。

祈ろうとおもふ場合には,誰にもみられないところに行って,霊なる自分たちの父に祈りなさい

トルストイ聖書

トルストイの「要約福音書」にでてくる言葉です。トルストイの「要約福音書」は,第一次世界大戦中,ウィトゲンシュタインが戦いのなかで愛読した本であり,彼を自殺から救った本です。

正しいことをしているときに,自分は正しいことをしていると思ってみたり,他人にみられている自分を意識することは,よくない。他人の目をおいて自分のすべきこと,したいことをするのが大切だという意味なんじゃないかと思います。

それと同じで,「好きなことをしなさい」というのは,人の目とかお金とか名誉とか余計なことを考えないで,本当にしたいことをしないさいという意味だと思います。それをしていることで幸せになれることをする。そうすると,周りも幸せになっていく。それは棚からぼたもちのようなもので,それを望んでしているわけじゃない。本来は自分が幸せじゃないとどうしようもない。自分の本当に好きなことをしなさい。そういう生き方が習い性になったら,つまり本当にこころからそう思って物事に挑むという姿勢が習い性になったら,本当に相手のことをおもって友達や家族にかかわれることもふえてくるでしょうし,だったらかかわるひとも幸せ。もしかしたら,どんどんと幸せの輪もひろがっていくかもしれない。そのなかで,もしかしたら,家族とのかかわり,自分とはなにか,生きるってどういうことか,それらの答えらしきものが見えてくるのかもしれない。最初にあるのは,本当にしたいこと,それをせずにはいられないことをしなさいということ。

玉置さんにはそれがあったんだね。小さい頃から。だったら,もういいかも。親は安心。でも,見失ってしまうこともある。好きでしていたはずなのに,それが手段になってしまったり,苦しみの原因になってしまったり。

そんなときは帰ってきなさいと歌詞は続く。

帰る場所がある,過去に帰る

この空を見上げて
やさしかった頃のことを思って
なつかしくなったら
しあわせだって言って 笑っていなさい

しあわせのランプ

実家に帰ってきなさいなんて言わない。過去を思い出しなさいという。好きなことを一生懸命していた,あのころのあなたは,いい子だったよ。それを思い出してと続く。そうして,その過去の自分を思って,ああ,あの頃の自分はがんばってたなと思う。僕はもともと幸せだったんだ。本当の自分を思い出したら,笑って,幸せだといいなさい。

実家に帰ってきなさいというんじゃなくて,あなたの本来の姿を思い出しなさいというのがすごい。ずっと努力努力努力,好きなだけでは説明できない努力,それにしがみついていないと生きていけなかったのかもしれない。そんな過去を思い出しなさい。

過去とは本来我を忘れてしまって途方に暮れているときに帰ることのできる場所なのだろう。過去がそんな存在になるのだったら,生きてきたことがそんなに肯定的にとらえられるのだったら,なんて人生はすばらしいんだろう。もちろん,苦しいこと,辛いこと,悲しいこともあるけど,そこでどう生きていきたかを思い出すことで,ああ,よくやったね,幸せだったねと思える人生ってすばらしい。

そういう人生も,最初は好きなことをするという,ここから始まるのがなんともおもしろい。

玉置浩二さんの書く詩はすごい。

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