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[ 夢十夜 ] 第一夜。鼻の先で骨に徹えるほど匂った,その白い百合の名前は何?

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第一夜

夏目漱石の「夢十夜」。とても美しい作品。

黒い瞳をした女が漱石に100年待っていて欲しいという。漱石は女のいうとおり地面に座って100年待つことにした。

自分は苔の上に坐った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組をして、丸い墓石を眺めていた。

夏目漱石「夢十夜」

100年過ぎても,黒い目の女は現れない。代わりに白い百合が現れる。

すると石の下から斜に自分の方へ向いて青い茎が伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと揺ぐ茎の頂に、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁を開いた。真白な百合が鼻の先で骨に徹えるほど匂った。そこへ遥の上から、ぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露の滴したたる、白い花弁に接吻した。

夏目漱石「夢十夜」

白い百合の名前は何か

「真白な百合」ということなので,テッポウユリかタカサゴユリのどちらかだろう。漱石はコケの上に座っている。そこにユリが育って,花弁がちょうど漱石の唇のちょっと上にあったという。漱石が背中を丸めて胡座をかいていたとしよう。そうしたら,おおよそ漱石の唇は地面から 60-65cm くらいのところにあっただろう。

タカサゴユリは 100 cm 程度の背になるから,消去法で漱石がみたユリはテッポウユリだったろう。テッポウユリは 50cm から 100 cm くらいの背になるから,あぐらをかいて座っていた漱石の唇の高さくらいに花をつけることも十分ありえるだろう。

ちなみにテッポウユリの花言葉は「純潔」。

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