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[ 伏字クイズ ] ××××××は戦いに××××からは出でまさね(与謝野晶子)

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伏字

日露戦争の際に「君死にたまふことなかれ」と詠んだ与謝野晶子。明治37年当時はそのまま活字にできましたが,昭和7年に渡邉順三「史的唯物論より見たる近代短歌史」に引用された際には以下のように伏字を加えられます。

君死にたまふことなかれ
××××××は戦いに
××××からは出でまさね
かたみに人の血を流し
××××××よとは
死ぬるを人の×××とは

与謝野晶子「君死にたまふことなかれ」

国語のテストを受けているような気分ですね。伏字にしたところで,この本を手に取るひとであれば,与謝野晶子のもとの歌を知っているでしょうし。この場合,伏字はより与謝野のメッセージを強くさせるように働いているようにも思います。

伏字クイズ

伏字は体制批判と受け止められない工夫ですが,その後,男女の恋愛を想起させる言葉についても伏字にして出版したそうです。男女の恋愛を想起する言葉といったら,一体どんな言葉でしょう。男女の恋愛を想起する言葉の代表例として,×××があります。以下,漱石の「夢十夜」でその言葉を伏字にしてみました。伏字になっている言葉は何かわかりますか?

女は静かな声で、もう死にますと判然云った。自分も確にこれは死ぬなと思った。そこで、そうかね、もう死ぬのかね、と上から覗き込むようにして聞いて見た。死にますとも、と云いながら、女はぱっちりと眼を開けた。大きな潤いのある眼で、長い睫に包まれた中は、ただ一面に真黒であった。その真黒な眸の奥に、自分の姿が鮮かに浮かんでいる。

自分は透き徹るほど深く見えるこの黒眼の色沢を眺めて、これでも死ぬのかと思った。それで、ねんごろに×××の傍へ口を付けて、死ぬんじゃなかろうね、大丈夫だろうね、とまた聞き返した。すると女は黒い眼を眠そうにみはったまま、やっぱり静かな声で、でも、死ぬんですもの、仕方がないわと云った。

じゃ、私の顔が見えるかいと一心に聞くと、見えるかいって、そら、そこに、写ってるじゃありませんかと、にこりと笑って見せた。自分は黙って、顔を×××から離した。腕組をしながら、どうしても死ぬのかなと思った。

夏目漱石「夢十夜」

記事を書くに参考にした論文

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