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[ 心理学 ] 人間は、物事それ自体によってではなく、彼らがこれに関していだいているところの考えによって苦しめられている。

この絵のタイトルは「雪中の狩人」。ブリューゲルの作品でクリスマスカードとして一番人気だといいます。

狩から帰った3人の狩人。トボトボと疲れてあるいている。けれども,もう少し,もう少しの辛抱。この丘を下れば,あたたかな村が彼らをまっている。

ブリューゲルの作品はどれも好きなのですが,この「雪中の狩人」はわたしにとても影響を与えた作品です。

わたしはこの作品を最初にみたのは,たぶん学校の教科書でだったと思います。

見た瞬間,なんて気持ちの悪い絵なんだと思いました。わたしは実際はクリスマスカードとして一番人気のこの絵を,次のような風景を描いたものだと,ずっと思っていました。

この狩人,まったくの悪人。この村を襲撃し,略奪するためにやってきた3人。これからどんな運命が待ち受けているかもしらず,村では人々がスケートをしたり,カーリングをしたりして楽しみにふけっている。その無防備なひとびとの様子を,丘の上から,3人の狩人が見下ろしている。にやにや笑いながら襲撃のタイミングを図っている。

そんな情景を描いたものだと思い込んでいたのです。

そんな状況を描いたものではないんですが。

じぶんの絵の解釈が全然ちがうと知ったとき,わたしはとても驚きました。わたし自身のものの見方,考え方にです。

わたしはもしや周りのひとやものごと,それらを潜在的に自分に脅威を与えるものとしてとらえているんじゃないか?

なんでもないものに悪意を見出してしまうような傾向をもっているのでは?

もしそうなら,自分は自分で生きにくくしているよなー。

もちろん,それで悩んだということはないのですが,モンテーニュのエセーのなかの言葉の意味がよくわかった気がしました。

人間は(古代ギリシアの格言が言っているとおり)、物事それ自体によってではなく、彼らがこれに関していだいているところの考えによって苦しめられている。

第十四章 幸不幸の味わいは大部分我々がそれについて持つ考え方の如何によること

人間は考える葦であるという言葉があります。人間はたいへん弱い存在だけども,考えることができる,それが人間の尊いところだという意味です。

一方で,このわたしたちの「考え」が,わたしたちを惑わし,わたしたちを苦しめているところがあるんじゃないかと思うようになったわけです。

わたしたちの抱く不安は実は,わたしたち自身が作り上げたもので,実体はない。苦しみの原因はわたしたち自身にある。

もちろん,すべてではありませんが,そういう部分は,たしかにあります。

これからの一連の記事では,わたしたちの思い込みがわたしたちを苦しめていることを示す研究を紹介しながら,その思い込みに気づき,もっと楽に生きる方法はないものか,考えていきたいと思っています。

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