見出し画像

東方にソシャゲは向いていないのか

 先日、東方ダンマクカグラがサービスの終了を発表してしまった。
 個人的に運営のアンノウンXは、東方のさらなる盛り上がりのため活動している集団で、どこよりも原作を尊重していた運営だと思っている。それだけに愛を多く持つ作品が終わってしまうのはとても悲しい。

 現状残っている東方project公認ソシャゲは東方ロストワードだけになってしまった(東方ダンジョンダイブはソシャゲか?)。
 二年前のキャノンボールだけならともかく、ダンマクカグラまで終わるとなると、やはり根本的な問題を考える必要がある。
 東方projectは、ソシャゲに向いているのか?

 私は東方の性質から、向いていないと考える

金銭と東方

 まず、この動画などでも触れているように、東方に商業的な話は向いていないのだ。同じ同人作品から商業に移行した作品は「ひぐらしのなく頃に」「月姫」など色々あるが、東方は憑依華まで原作を商業作品に流していなかったのだ。

 なぜなら、それは原作者や二次創作者が利益を得ることよりも、作品を作ることを目的としていたからだ(ひぐらしも最初はそれでやっていたが)。

ZUN:
 売れなくてもいいけど、いいゲーム。売れるゲームとなると話は変わってきてしまう。

––同人では、売れるゲームを目指そうとは考えていませんか?

ZUN:
 全く考えてないですね。同人は売れなくても迷惑かけないし、批判されようが何だろうが関係なく、自分が好きなゲームを出しています。またそういう理念を持ってる以上、説得力ある行動をしなきゃいけないと思ってますから、新作の広告も流さないし、自分のホームページで強く押し出すわけでもない。自分が出したゲームの評判も、一切見ないようにしてます。

––それはわざと遮断されてるのですか?

ZUN:
 忙しくて見ていられないという事情はありますけど、わざと遮断してるところもあります。他の作品の影響を受けるのはありだと思うんですけど、自分の作品を遊んだ人の影響を受けちゃうと、まずいスパイラルに陥りかねません。もちろんこれが商業の場合だったら、評価を気にしないというのは問題だと思います。ファンサイトの評価や、手間を惜しまずアンケートハガキを出してくれた人の意見などは、積極的に取り入れていくべきでしょうね。

––でも同人の場合は、それをやらない方がいいと。

ZUN:
 同人自体がミニ商業化して、商業とやることが同じになってしまうと、先が見えてきてしまうんですよ。僕はユーザーが同人作家に要望を言い過ぎるのは、同人っぽくないと思ってます。商業とは性質の異なる同人というものに対して、要望や批判をし過ぎるとものを作る人のパワーが減ってきて、市場が委縮してしまう。ただ東方は、ここまで規模が広がった以上、商業ゲームと同じように遊ぶ人も多いので、仕方が無い面もあるかなと。だから作る側が意図的に無視するくらいでないと、と考えてやってますが、最近は東方を遊んでくれているユーザーに冷たすぎる気がしなくもないんですけど(笑)。

東方文花帖インタビューより

 東方と金の問題は別記事で取り扱うことにするが、東方がこの考え方に則っている以上、金銭目的によって何かをするということは東方に合っていないのだ。

弾幕アマノジャクおまけテキストから見るソシャゲ

良いゲーム体験の一つに、目標に対して工夫して、努力して、そして根気よ
くプレイする事で乗り越えられる。そんな体験があげられるかと思います。
このゲームはそこに重点を置きました。
 しかし最近は努力の部分がランダムに偏るゲームが多くなってませんか? やれスーパーレアだのレジェンドだの……。ランダムで可愛い絵と、それに
付随するパラメタを無限のアップデートで集め続けるゲームには……、僕はもう、ちょっと限界を感じるようになりました。もう真剣にゲームをしなくなった大人の暇つぶし、と考えてますが、この世の中がそんなゲームばかりになってはお酒も不味くなってしまいそうです。

 特に若いうちはゲームにおけるいい成功体験をしておかないと、将来のゲームクリエイターは生まれないかもしれません。いや、ゲームじゃ無くてもクリエイティブな人間にならないかも……なんてすら思ってしまいます。

弾幕アマノジャク おまけテキストより

 これは2014年に発表された「弾幕アマノジャク」のおまけテキストにあった神主の言葉だ。

 2014年はちょうどソシャゲの黎明期で、この言葉もそれを反映しているものだろう。神主の考えが今と昔で大きく変わっていることはあるだろうが、しかしながら東方というコンテンツにこの考え方があるのは間違いないだろう。

 そもそもSTGというのは、繰り返し繰り返し練習して上手くなっていくというシステムを持っている。いわば努力が報われるような形になっている(初見でノーミスなどで行ける人は元々練習を積んでSTGがうまいというパターンが多い)。それに対してソシャゲは練習をせずとも、資金力にモノを言わせて強くなっていくパターンが多い。
 東方は基本的にSTGであり、やはり前者のシステムである(後者のシステムをSTGに落とし込んだのが虹龍洞)。

 その点からしてソシャゲと相反しているのだ。上のSTGがうまい人も、努力がやがて身につき、それが自分の実力となっている。しかし金で買ったものが、リスクに打ち勝ったことを自分の実力のように勘違いし、それが強さになってしまっている。

 ゲームを金で買うことが問題なのではない。ただ買い切りのゲームだけを買うだけなら、「ゲームができる・できない」だけでそこに強さの差は発生せず、みんな条件が同じだ。 普通のゲームの武器などへの課金要素も、課金したものがバカに強くなければ似たようなものだろう。
 ゲーム自体を買い切りにより、そのシステムに則って強くなるゲームではないソシャゲは根本から異なるのだ。

 他のゲームならそれでもいいのかもしれない。しかしそれは東方の精神に反しているのだ。
 その面から言えば、同じ音ゲーの「東方スペルバブル」は基本的に買い切りのゲームで、課金要素は一部のキャラクター(自分が使いたいキャラを買う)とやれるステージが増えるだけで、キャラクターの差はあまり生まれない(小傘はバカに強くスペルバブルが理論であることを崩壊させかねかったが)。その点ではスペルバブルは東方の精神に則りうまいと思う。

ところで新作が

 この記事を書いている時に、新作「バレットフィリア達の闇市場」の情報がきた。

 この記事で着目したいのは

新しいカードを集めて、繰り返しステージに挑むゲームになっています。一回のプレイが短めで、繰り返し遊んで、異変の解決……というかカード集めに向かう

 という部分だ。繰り返し新しいカードやスキルを求めて攻略をする。つまりソシャゲにおける周回だ。

2枚とも上の記事から引用

 これを見る限り、雑魚と戦う wave というものがあり、最後にボスとバトルという流れのようだ。
 私の記憶が正しければ、ロストワードもこのような形だったはずだ。
 それに、右上に Speed や Atk.(アタック?)という表示があることから、やはりソシャゲに近いと思われる。

 あくまでスクショなどからの推測であり、この作品が実際にソシャゲのような形態をとっているのかはわからないが、かなり近いと思う。

 少なくとも2月以前からこの作品の構想はあった(ダーク=闇)ようだが、たまたまソシャゲのようなシステムがダンマクカグラにも被った。

 私はこれを神主なりのソシャゲに対するアンチテーゼだと思っている。
 ソシャゲの当たる確率(≒実力)のための過程、いわば作業を実際に経験によって実力が得られるという形に落とし込んでいる。
 すなわち、ソシャゲのシステムに則って偽物の実力ではなく本当に実力が得られる(=成功体験)としているのではないか。 

 コミケで頒布されることを考えると、流石に課金要素はなく、買い切り製だろう。ソシャゲとしてのシステムはゲーム内で完結するはずだ。

 今回の新作も、厳密にいえばソシャゲではない。実力が本当に得られる作りになっているからだ。

二軒目ラジオより(2022/8/1 追記)

ZUN:
 このゲーム(バレットフィリア)には難易度選択がないの。でも難しいかどうかっていうと、難しいです。
 だけど、難しい人間がこうやって遊んだら(注・このあたりはうまく聞き取れなかったので別の言葉の可能性あり)こうだって評価するように作ってなくて、難しいのが苦手な人間が、頑張った時に面白くなるようにできてるので。

JYUNYA:
 でもあのシステムはそうだよ。

ZUN:
 でもこれをね、配信者が上手だからこういうふうに出しました(注・ここもノイズで聞き取りミスの可能性がある)っていうのを鵜呑みにしないでほしい。
 戻ってこの前のところに……泥臭く何度も集めて行ったらいずれクリアできるようになるから。

JYUNYA:
 だからあのシステムはRPGっぽい。最初は実力が劣っていても、やってて装備を集めて、カード集めてって自分の最適解が見れるっていう。

ZUN:
 虹龍洞ではそれはほとんどなかったけど、今回はそれが強い。なくてもクリアできるんだけど、その人たちが難しい……「こうだ!」って言ってるのを見ないでほしい。遊んでよ。
 一応用意してるから。そんなかでランダムで手に入るカード……ランダムでこれが手に入ったら先に進めるっていうのが実際あるから。

 やはり神主は泥臭さ、努力によって生まれる結果の面白さを大切にしているらしい。

 製品版が出ないとなんともいえないが、逆にいえば、このような形でないと東方とソシャゲは向かないのではないか。
 実際これも同人作品として頒布される。神主自身自分の作品を「自分の日記のようなもの」としており、売れることは目指していない。
 直近の作品で言えば、「ナイトメアダイアリー」はインスタグラムなどのSNSを、「虹龍洞」はコミックマーケットとソシャゲを反映していた。「バレットフィリア」は虹龍洞の精神的続編なので、同じことを反映しているだろう。

 このような点があるから、東方はソシャゲに向いていないのだと私は思う。現状を保てているロストワードが異常なのだ。
 これ以降、東方ソシャゲがサービス終了するのを見たくない。企業にはソシャゲではない課金要素のある無料のゲームか、普通の買い切り型のゲームを作っていただきたい。

「バレットフィリア」に関しては別途考察記事を書く。
 とりあえずいい考察をしているビートまりおの配信を置いておく。

 以上。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?