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「つながり」を読み解く英文読解(10)~連結表現③:順接(2)「条件と帰結」「目的と手段」~

▼〈「つながり」を読み解く英文読解〉の第11回目は,前回の〈連結表現②:順接(1)「因果関係」〉に引き続き,「順接」に含まれる「条件と帰結」「目的と手段」について例文とともに学びます。

▼前回学んだように,順接とは,〈Aという前提から当然予想されるものとしてBという内容が導ける〉関係のことですね。以下のそれぞれにおいて,(A)という前提から(B)という内容は自然なものとして導けるはずです。
原因と結果:(A)「インフルエンザに罹った」⇒(B)「学校を休んだ」
条件と帰結:(A)「雨が降ったら」⇒(B)「野球の試合は中止だ」
目的と手段:(A)「大学に受かるために」⇒(B)「もっと勉強が必要だ」

▼しかし,一つ,気をつけねばならないこともあります。それは,AとBの2つの関係が,センテンス最後まで(あるいは途中のかなりのところまで)読んでみないとわからないことがある,ということです。たとえば,誰かと何かの正しさを巡って言い争いをしている場面で,次のような書き出しの英文があるとします。

 If I am wrong, ...(もし私が間違っているならば)

▼この後に,こう続いているとしたらどうなるでしょうか。

 you are not necessarily right(君が必ずしも正しいとは限らない)

「あれ?『私が間違っているならば,君が正しい』となるはずではないの?」と違和感を覚えるのではないでしょうか。その違和感こそが重要で,この場合は「もし…ならば」という「順接」の解釈ではなく,「たとえ私が間違っていたとしても,君が必ずしも正しいとは限らない」と「逆接」として解釈する必要があるのです。

▼次の英文はどうでしょうか。

Why is it difficult for grown-ups to master a language when children can easily do so?

「子どもが簡単にそうする(言語をマスターする)ことができる時に,なぜ大人が言語をマスターするのは難しいのか?」

…と訳してしまうと何かしっくりこない気がします。この場合,〈言語の習得:大人=難しい⇔子ども=容易〉という対立的な内容なので,このwhenは「順接」ではなく「逆接」の関係を作っているととらえ,「子どもが簡単にそうする(言語をマスターする)ことができるのに,なぜ大人が言語をマスターするのは難しいのか?」と解釈すべきでしょう。

▼「ifやwhenを見たら順接」という硬直した覚え方をしてしまうと,こうした英文に出会ったときに頓珍漢な訳をつけてしまうおそれがあります。そうならないようにするためにも,ここで学ぶことを基盤としたうえで,柔軟に解釈して読み解くことを心がけましょう。

【1】[02.12] 条件と帰結

〈A(条件)ならばB(帰結)〉という「条件と帰結」の関係も,順接の一つです。「条件と帰結」を表す主なCD(Cohesive Devices:連結表現)は次の通りです。

(1) 接続詞①
・if + S + V~, [then] S + V…
・in case + S + V~
・provided + S + V~
・providing + S + V~
・suppose + S + V~
・supposing + S + V~
・given [that] + S + V~
・when + S + V~
・as long as + S + V~
・to the extent that + S + V~
・on [the] condition [that] S + V~など
・命令文*…, and S + V~(…しなさい,そうすればSはV~)
・命令文*…, or S + V~(…しなさい,さもないとSはV~)
*命令文の代わりに動作を表す名詞などが用いられることもある。
(2) 接続詞②
・unless + S + V~(SがV~しない限り/ただしSがV~するときを除く)
(3) 前置詞(句)・副詞(句)
・in case of + 条件
・subject to + 条件
・given + 条件
・then
・if soなど
(4) SVOC文型(Sすれば/SならばOはCになる)
(5) 準動詞:分詞構文・条件を表す副詞的用法のto不定詞など

▼条件・帰結を表すCDに注意しながら次の英文を読みましょう。

ex-1) So, it seems that schools that choose to screen out disturbing noises and create positive soundscapes could enhance the learning of their students, so long as they make careful choices.
(2015年度明治大学国際日本学部)
http://www.bbc.com/future/story/20131022-hacking-senses-to-boost-learning
〈語彙〉□ it seems that S + V~ SはV~ように思える  □ screen out O / screen O out Oを排除する  □ disturbing 人の気を乱すような,騒々しい  □ positive 肯定的な,良い,積極的な  □ soundscape 音風景  □ enhance O Oを高める
〈和訳〉だから、学校が慎重な選択をする限り,心を乱す騒音を取り除き、良い音風景を生み出すことを選ぶ学校は、学習の質を高められるように思える。

〈so long as S + V~=SがV~する限り〉によって「条件(範囲の限定)」が示されています。

ex-2) Given that the United States is among the most extroverted of nations, the number must be at least as high in other parts of the world.
(2014年度慶應義塾大学理工学部)
Susan Cain, The Power of Introverts in a World That Can't Stop Talking
〈語彙〉□ extroverted 外交的な  □ at least 少なくとも
〈和訳〉合衆国が国々の中で最も外向的な性質のある国の一つであることを考慮すると、その数は世界の他の地域では少なくとも同じ位高いはずである。

〈given [that] S + V~=SがV~ということを考慮すると〉によって「条件」が示されています。

ex-3) If our expressions don’t actually reflect our feelings, there are enormous consequences. One is in the field of artificial intelligence (AI), specifically robotics. “A good number of people are training their artificial intelligence and their social robots using these classic ‘poster’ faces,” says Fridlund*. But if someone who frowns at a robot is signalling something other than simple unhappiness, the AI may respond to them incorrectly.
*Fridlund: Alan Fridlund(カリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学者,アラン・フライドルンド氏)
https://www.psych.ucsb.edu/people/faculty/alan-fridlund
(2019年度一橋大学前期日程)
http://www.bbc.com/future/story/20180510-why-our-facial-expressions-dont-reflect-our-feelings
〈語彙〉□ expressions 表情  □ actually 実際に(は)  □ reflect O Oを反映する  □ feeling 感情  □ enormous  膨大な  □ consequence 影響,結果  □ field 分野  □ artificial intelligence 人工知能  □ specifically 特に  □ robotics ロボット工学  □ a good number of A とても多くのA  □ train O Oを訓練する  □ social robot 人とやり取りするロボット  □ classic 古典的な  □ ‘poster’ face 「『ポスターで使われている』顔」  □ frown at A Aに対してしかめっ面をする  □ signal O Oを伝える  □ other than A A以外の  □ unhappiness 不幸  □ respond to A  Aに反応する  □ incorrectly 不正確に
〈和訳〉もし私たちの表情が実際には私たちの感情を反映していないとすれば,いくつかの大きな影響がある。(その影響の)一つは人工知能(AI),特にロボット工学の分野にある。「とても多くの人々が,こうした古典的な『ポスターで使われている』顔を使って人工知能や人とやり取りするロボットの訓練を行っている」とフライドルンドは言う。しかし,もし,ロボットに対してしかめっ面をする人が単なる不幸せな気持ち以外のことを伝えているとしたら,AIは彼らに対して不正確に反応するかもしれない。

⇒2か所のifがそれぞれ「条件」を表しています。

【2】[02.13] 目的と手段

〈A(目的)のためにB(手段)〉という「目的と手段」の関係も,順接の一つです。「目的と手段」を表す主なCDは次の通りです。

(1) 接続詞①
・so that S can (may / will) + 原形~
・in order that + S + V~ など
(2) 接続詞②
・lest S [should] + 原形~
・for fear that + S + V~(SがV~しないように) など
(3) 前置詞(句)
・for the purpose of + 目的
・with a view to + 目的
・by means of + 手段
・by way of+ 手段 など
(4) 準動詞:目的を表す副詞的用法のto不定詞など

▼目的と手段を表すCDに注意しながら次の英文を読みましょう。

ex-1) Success is not guaranteed. Males, in particular, live in constant fear of losing their claim to manhood. Throughout history, males have been willing to risk and even sacrifice their lives, just so that people will say, 'He's a real man!'
(2018年度愛知医科大学医学部)
Yuval Noah Harari, Sapiens: A Brief History of Humankind, 2011
〈語彙〉
□ success 成功  □ guarantee O Oを保障する  □ male 男性  □ in particular 特に  □ constant 常なる  □ fear 恐怖心  □ claim to A Aは自分のものであるという主張  □ manhood 男らしさ  □ throughout A Aを通じて  □ be willing to do 進んで…する  □ risk O Oを危険にさらす  □ sacrifice O Oを犠牲にする
〈和訳〉成功は保証されていない。特に男性は,男らしさは自分たちのものであるという主張を失うという恐怖心を常に持ちながら暮らしている。歴史を通じて男性は進んで自分たちの暮らしを危険にさらし,犠牲にすらしてきた。ただ人々が「彼は本物の男だ!」と言うためだけに。

〈so that S will do~=Sが~するために〉を用いて「目的」を表しています。

ex-2) The first person to publish extensively in his native language, according to Gordin*, was Galileo. Galileo wrote in Italian and was then translated to Latin so that more scientists might read his work. (*1)
(2019年度青山学院大学理工学部)
https://www.bbc.com/news/magazine-29543708
*Gordin:Michael Gordin(科学史家)
〈語彙〉□ publish 出版する  □ extensively 広く,広範囲に  □ native language 母語  □ according to A Aによると  □ Gordin ゴーディン(科学史家Michael Gordin)  □ Galileo ガリレオ  □ translate A to B AをBに翻訳する  □ Latin ラテン語  □ work 著作,作品,研究
〈和訳〉ゴーディンによると,自分の母語で広く出版した最初の人物はガリレオだった。ガリレオはイタリア語で執筆し,それから(その著作が)ラテン語に翻訳されたが,それはより多くの科学者が彼の著作を読めるようにするためだった。

〈so that S may do~=Sが~するために〉を用いて「目的」を表しています。

ex-3) One has only to look at their methods of town-planning and water-supply, their obstinate clinging to everything that is out of date and a nuisance, a spelling system that defies analysis and a system of weights and measures that is intelligible only to the compilers of arithmetic books, to see how little they care about mere efficiency.
(1999年度青山学院大学経済学部 )
George Orwell, England Your England
〈語彙〉□ method 方法  □ town-planning 都市計画  □ water-supply 水道供給  □ obstinate 頑固な  □ clinging to A Aにしがみつくこと  □ out of date 時代遅れの  □ nuisance 厄介なもの  □ spelling system 綴りの体系  □ defy O Oを受け入れない  □ analysis 分析  □ weights and measures 度量衡  □ intelligible 理解可能な  □ compiler 編集者  □ arithmetic book 算数の本(教科書)  □ efficiency 効率性
〈和訳〉彼らの都市計画や水道供給の方法,彼らが時代遅れで厄介なあらゆるものに頑固にしがみついているさま,分析を拒む綴りの体系,そして算数の教科書の編集者にしか理解できない度量衡の体系を見さえすれば,彼らが効率のことすら全く考えていないということがわかるだろう。(彼らが効率のことすら全く考えていないということを理解するためには,彼らの都市計画や水道供給の方法,彼らが時代遅れで厄介なあらゆるものに頑固にしがみついているさま,分析を拒む綴りの体系,そして算数の教科書の編集者にしか理解できない度量衡の体系を見さえすればいい。)

〈S have only to do… to do~=~するためには…しさえすればよい/…しさえすれば~するであろう〉というかたちが用いられています。目的を表すto不定詞の副詞的用法が使われています。

ex-4) Many parents and teachers are afraid to criticize kids, lest it cause serious psychological damage and turn some promising youngster into a dangerous thug or pathetic loser. In some sports leagues, everyone gets a trophy.
(2004年度愛知医科大学医学部)
Roy F. Baumeister, Violent Pride, Scientific American, Vol. 284, No. 4 (APRIL 2001), pp. 96-101
〈語彙〉□ be afraid to do~ ~することを恐れる  □ criticize O Oを批判する  □ serious 深刻な  □ psychological 心理的な  □ turn A into B  AをBに変える  □ promising 有望な  □ youngster 若者  □ thug 凶悪犯  □ pathetic 哀れな,痛ましい  □ loser 敗北者  □ trophy トロフィー
〈和訳〉多くの親や教師たちは子どもを批判することを恐れている。それが深刻な心理的ダメージを引き起こして,有望な若者を危険な凶悪犯や哀れな敗北者にさせることがないようにするためである。スポーツリーグの中には全員がトロフィーをもらうところもある。

〈lest S [should] do~=Sが~しないように〉を用いて目的を表しています。

▼次回は「逆接」についてお話しします。

【注】

*1:2文目の "Galileo wrote in Italian and was then translated to Latin so that more scientists might read his work." は wrote in Italian と was then translated to Latin ... が and で結ばれていて,wrote と was translated の共通の主語が Galileo となっています。これは原文通りです。本来,was translated(翻訳された)の主語は Galileoという人物ではなく Galileo の著作でなくてはなりませんが,原文が正しいとするならば,おそらくここでは Galileo という単語を「著者」と「著作」の両方の意味で用いているのではないかと考えられます。

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